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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

役立たずとしてパーティーから追放したアイツが有能になってるらしいが……二度と帰ってくんなよ?

作者: 遊才 サクマ

 王都でも最強と言われるSランクパーティー『太陽』。

 彼らがドラゴンの討伐から帰ってきて酒場で祝杯を上げていると、隣の席から話しが聞こえた。


「本当かよ?」

「ああ。前まで『太陽』に居たチビ……何でも『月影』で大活躍してるらしいぜ?」

「『月影』と言えば、Sランク間近と噂されてる期待のAランクパーティーじゃねぇか。何でチビがそんなとこで活躍してんだよ?『太陽』が、無能として追放した奴だろ?」

「何でもそのチビ、パーティー経験値10倍のスキルを持ってたんだと」

「はあ!?何だその規格外のスキル!てか、そんなスキルあるなら何で『太陽』が追放したんだよ!?」

「あくまで噂だが……『太陽』のメンバーが誰もそれに気付いてなかったらしい。経験値が多いのは、自分たちがそれだけ強い魔物を倒したからだと思ってたとか」

「マジかよ!?『太陽』って凄いやつらだと思ってたけど、チビの有用性に気づいてなかったとか……もしかして『太陽』って大したこと無いのか?」

「かもしんね。どちらにせよ、チビが居なくなって『太陽』もレベル上げ大変だろうぜ!」

「だな!!自業自得ってやつか?はははははっ!!」


 男達は、そこまで話すと席から立ち『太陽』が居ることにも気付かずに、酒場から去っていった。

 そして、先程の会話を聞いていた『太陽』のメンバーは……呆れていた。中には溜息を吐くものまでいた。


「あの男達はバカ何ですかね?いや、バカだからあんな話しを『太陽』の隣で喋っていたんでしょうね」


 そう言って、眼鏡をクイッと上げたのは『太陽』の魔術士である、クレオ。

 風の魔術を最上級まで会得しており、広範囲の天候さえも操れる世界有数の魔術士である。


「まあ、バカなのは同意。あのチビのスキルにウチらが気付いていない?んな訳ないじゃん!『太陽』ナメてんのか!!」


 男達への怒りを露わにしながら、テーブルに酒のジョッキを叩きつけたのは『太陽』の戦士であるララ。

 虎の獣人としての身体能力を遺憾なく発揮して、女性でありながら武闘杯で何度も優勝を経験している強者である。


「……全くです。あの、チビ。居なくなっても迷惑とか……ブッコロしますか?」


 言葉は少ないが、明らかに機嫌が悪くなっているのは『太陽』の治癒術士メイル。

 死んでさえ無ければ、どんな状態からでも治癒できる最強の治癒術士であり、結界魔法による防御も得意とする完璧サポーターである。


「み、皆んな落ち着いて?どうどう……」


 他の三人を宥めようとしている、一見パッとしない平凡そうなのは『太陽』の剣士アーサー。

 剣武祭、帝国祭の2つの大会で優勝し、剣神とも言われ、彼に斬れないモノは存在しないとまで言われている最強剣士である。


「「「落ち着いていられるか!」」」


 そんな最強剣士アーサーの願いは却下された。三人は落ち着きなど全くせず、各々の思いを話し始めた。


「アーサー!先程の話しでは『太陽』が侮辱されているんですよ!!これは由々しき事態です!」

「そうよ!そもそも、あの役立たずが別のとこで何やってようが、私らには関係ないでしょうが!!」

「同意。パーティー去ったなら、これ以上、迷惑かけんな……糞チビが」

「だから落ち着いてくれよ……」


「「「落ち着いていられるか!!」」」


 アーサーの必死の声を押し潰すかのように三人は怒りに囚われていた。

 『太陽』が侮辱されている。

 これは、自分のみならずパーティーメンバーまで侮辱されていることに他ならない。だから三人はこんなにも怒っているのだ。

 そして……こんな事になっているのも、先程の噂にでていた元『太陽』のパーティーメンバー、チビのせいだと三人はブチキレていた。


「よく考えて下さい。あのチビ……クロくんのスキルは確かに有用でした。だが……全然、彼は働かなかったじゃないですか!!」

「私が武術を教えようとしても『無理』、クレオが魔術を教えようとしても『才能ないから』、メイルが補助魔法教えようとしたら『もっと派手なのが良い』……ふざけてんじゃないわよ!!」

「おまけに、戦闘になるとすぐに逃げて、罠にハマる、敵に捕まる、迷子になる……死刑でよくない?むしろ、死ね」

「分かってる……分かってるよ!彼を追放するときに散々話したもんね!皆んなの怒りも分かるよ!けど、皆んな落ち着いて!顔が大変なことになってるから!あと何より、酒場の人達が君らの殺気にビビってるから!だから、落ち着いて!」

「「「落ち着いていられるか!!!」」」

「落ち着けよ!!」






 僕の願いも虚しく、結局三人は朝になるまでチビ……クロくんに対して怒りを散らしまくった。

 そのおかげで、酒場からは『太陽』以外の冒険者は消えてしまい、酒場の店主からは営業妨害代として、しこたま金を巻き上げられてしまった。

 いまだに三人は機嫌が直っていない。

 クロくんの話しを聞いただけでここまでなるんだ。もし、クロくんが『太陽』に戻って来るなんてなったら……か、考えたくもない!!

 頼む……頼むからクロくん!『月影』で幸せになってくれ!!僕の胃にこれ以上ストレスを与えないでくれ!!どうか!どうか……!


「二度と『太陽』に帰ってこないでくれ……!」









追放モノを見てたら、ふと考えついた小話でした。読んでくれた方ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 帰ってこないで!と追放した側が思ってるのはめずらしいです。 [気になる点] これは初期メンバーだけど、戦闘系何も努力せず、邪魔ばかりしてたけど、経験値10倍があるから我慢してた。パーティの…
[一言] 経験値ブーストって、最初のうちは有用だけど、ある程度のレベルになるとより戦闘的な効果の方が重宝される印象 枠に制限があると尚更 スキルビルドによりけりだが、見敵即殺した方が経験値効率が良か…
[良い点] 十倍の代償……胃薬!
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