9/9
4
―熱心だね―
そう言われ、私は顔を上げ、立ち上がった。
私の背後に、一人のお爺さんがにこにこしながら立っていた。
声をかけられるのは珍しいことじゃない。
私みたいな若い女の子が拝んでいれば、町の老人達はよく声をかけてくる。
私は簡潔に昨夜のことを話した。
ここで肝だめしをした後、首の無い武者達が合宿場を徘徊したこと、けれど何故か私達の部屋には入って来なかったこと―それはあの小柄な影のおかげかもしれない、ということ。
不届き者だと怒られることを覚悟したが、お爺さんはにこにこしていた。
―それはきっとお地蔵さんが守ってくれたんだよ―
そう言われてハッとした。
あの影は今私の後ろにいるお地蔵さんの形だ。
でも何故…?
顔を上げた時、お爺さんの姿は消えていた。
代わりに声が降ってきた。
―だって君は望んだ。『無事』であることを―
私は後ろを振り返った。
お地蔵さんはにっこり微笑んだ。
【終わり】




