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ゾンビはじめました  作者: あきねこ
第1章 ゾンビはじめました
7/31

死体ですがなにか?

動かない……ただの屍のようだ……


口からは尖った犬歯が生え、涎を垂れ流す獣。


余程、空腹なのだろう涎が留まることが無い……。


空腹を満たす為、狼のような魔物”下位狼(レッサーウルフ)”はその屍に近づいていくそして……


「黒き一閃で敵を穿て!!”闇の(ダークランス)”」


鈴の音の様な涼やかで耳障りのいい声が響き、黒い槍が形成される。


「ギャウッ!!」


黒い槍は魔物の頭部を容赦なく貫き、そのままその先にある屍に突き刺さった。


「痛ぇッ!!」


屍は叫ぶ。


「ごめんタナカッ!!」


涼やかな声の持ち主は申し訳なさそうに死体に謝る。そうリリアだ。


「リリア、力加減考えてよー」


「ごめんー、実践はやっぱり緊張しちゃって……」


てへッと、舌をぺロっとだしてリリアがはにかむ…


ちくしょうカワイイ……




やあ僕はゾンビのタナカだ。今は『ただのタナカの屍のようだ』だ。


僕らは今『ハジマリテ』からかなり離れたところにある草原で絶賛魔物狩り中だ。


なぜこんなことをしているか……話は1週間程前に遡る……


ーー



「自力で家に帰れなくなった!?」


リリアはバツが悪そうに頷く……


「魔物避けの鈴を失くした……」


リリアは更にバツが悪そうに呟く……


つまりこうだ!固有(ユニーク)スキル”簡潔なタナカのお(タナカダイジェスト)


リリアのお母さんは病気らしい。病気の原因もわからず、治し方もわからない。所謂”不治の病”らしい。


悪魔族は種族柄、毒耐性やら魔法耐性やらが高いから病気にかかる人自体が少なく、治せる知識を持つ人がいない。


種族柄ゆえの弱点というわけだ……。


悪魔族は色々な種族がいるそうだが、平均的に人間の寿命よりは遥かに長い。


村には数百年生きている者もいるようで、かなりの博学みたいだ。年の功ってやつだ。


博学なのに病気の直し方知らないのかよって疑問もあるが、そこは触れてはいけない。


誰しも完璧ではないのだから……。


リリアはその博学な爺さんに、人族であれば、病気にも詳しく、治せる薬があるかもしれないという情報を聞き出した。


しかし、悪魔族の村から人族の街まではかなりの距離がある。道中に魔物だってでる。


普通に目指してもたどり着けるわけが無い。


しかし彼女はあきらめなかった。


”魔除けの鈴”と呼ばれるアイテムがある。


読んで字のごとく、魔物が嫌う音を発し、所持者に魔物を近づけさせないアイテムだ。


悪魔族は割とこのアイテムを作れるものがいるらしく、この爺さんは作れるかどうかはわからないが”魔除けの鈴”を所持していた。


リリアは盗んだ。


さすが悪魔と言えるだろう。素晴らしい精神の持ち主だと思う。


そして彼女は村から飛び出した。母親を治せる薬を求めて。


泣ける話だ。


リリアはとりあえず一番近い人族が住む街まで頑張ってたどり着いた。


だがしかし、門番に捕まった。


運悪く、『ハジマリテ』は悪魔族排斥の動きが強く所持品を奪われると磔にされてしまった。


そこで真打の登場だ。そう僕だ。主役だ。主役タナカだ。モブじゃない……。


そしてリリアはかっこいいゾンビのタナカに助けられ今に至るというわけだ。


「と、言うことでいいのかな?」


「かっこいいゾンビには助けられてない……」


真顔で言われた……


「鎧きた人族に持ち物全部取られた……だから帰れない……グスッ」


いくら悪魔族とはいえこんな幼気な少女の持ち物全てを奪うなんて……。


どちらが悪魔かわからんな。


あーう、泣き落としは卑怯だぞ!


「わかったから、わかったから泣くなよ……僕でよければ村まで送るよ」


決して下心はない。善意の心だ。菩薩ゾンビだ。


「村の名前ははわかるかい?」


「ワルイヤツイッパイ村」


シュールな名前だ……。設定の適当さに悲しくなるな。


『ゾンビーズ』時代に1度訪れたことがあるな。


あそこか……ここからだとかなり遠いぞ。


うーむ薬も手に入れなきゃだし……。


……!


思い出した。


ここがゲームの地理と同じなら、例の場所を通ればショートカットにもなるし、万病に効く香草も手に入るはず!


でも、問題が…あそこを通るには今の僕のクラスとLvだと無理ゲーだ…


「リリア、君のコンソール見せて」


キョンソーリュ?っとリリアが首をかしげる…くそう!かわいいぜちくしょう……


「リリアのLvとステータスを見たいんだ」


リリアにもある程度の強さがないと話にならない。


まずは現状の把握だ。


「ステータス……!」


「これ……」


そういうとリリアはカードを取り出した。


「これは……」


そこにはリリアのステータスが記載されていた




ミニサキュバス”リリア”



Lv5


HP 15/15


力: 2


早さ:5


隠密:3


防御:4


MP 20/20



スキル:なし


魔法:闇の(ダークランス)、黒い(ブラックニードル)







「称号はないのかい?」


因みに僕はいっぱい持ってる。不名誉なヤツをな……


「称号?わからない……でも裏面に進化できるLVになると、進化先?と条件?が浮かび上がるってお母さんが……」


なるほど……この世界に僕が使っているコンソールはないみたいだ。ついでに称号もなしか。多分だけど……。


……。


いや、まだ断定は早いな…。たまたまリリアが持ってないだけかもしれないし、悪魔族はないってだけかもしれない……。この件はもう少し調べた方がよさそうだ……暇なときにな!


よし、とりあえずはこのプレートをステータスプレートと呼ぶことにして、例の場所攻略のためにしばらくLvあげだ。


ゾンビだからこそできるレベリング。ただの屍のようだからの奇襲でがっぽり経験値をかせいでやんぜ!







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