病気の正体
「死ぬかと思った……」
何とか神父ゴーレムを倒せた。
『不死者の剣』と認めたくないがワタナベがいなかったら死んでた……。
ワタナベが神父ゴーレムの注意を引き付け、その隙に神父ゴーレムの足を切りつけ腐食させた。
ホントにギリギリだった。てか鼻取れた。
「おい扉が開いたぞ!」
僕が『腐食剤』で鼻を治していると、年季の入った木製の扉が鐘の下に現れた。
あの扉が神父ゴーレムの言ってたワープ扉みたいだ。
僕が恐る恐る扉をつつくと勝手に扉が開いていく……
「「ウワアアアアアアア~」」
僕とワタナベは吸い込まれた。
「ドハッ」
「サムッ」
僕たちが放り出されると、扉が消えていった。
っとここは……
「なんで……?」
僕たちが放り出されたのは、緑色のフェンス、冷たいコンクリート、赤い夕焼け……夕暮れの学校の屋上だ。
「ドキドキ……」
え……?
「ドキドキ告白シュミレーションゲーム!!!」
ワアアアアア、ピューピュー、パチパチ……
「オワッ!!」
「何だこいつら!!」
振り返るとそこに黒いスーツに身を包み眼鏡をかけたおっさんゴーレムが3体いた。
「ようこそおいでくださいました。私はメガネ1号。このステージの審査員を務めさせていただきます。」
「審査員だあ?」
ワタナベが訝しげに尋ねる。てかこいつら3人とも神父のおっさんと同じ顔じゃね?キモッ!
「その通りでございます!このステージのテーマ。それは……『愛の告白』でございます!」
「またかよッ!」
絆の試練っていうから協力してクリアしていく何かだとは思ってたけど、これ男女でやるやつじゃね?
「学校の屋上……。それは愛と青春が混ざり合う神聖なplace!この神聖な場所で男性が女性に告白してもらいます。私どもはその告白に点数をつける審査員を務めさせていただきます!」
「ちょっと待て!俺らは2人とも男だぞ!!」
ワタナベが威圧気味に尋ねる。
「でしたらあなたが女性役で、そちらのゾンビの方が男性役でいきましょう」
「なんでだよ!」
ワタナベはかなり威圧して尋ねる。
「趣味です」
「趣味かよ!!」
完全に悪趣味だとは思うが仕方ない……。だがここは任せて欲しい。前世で僕は罰ゲームと称し、数々の女性にアタックしてきた漢。男タナカ漢だ。
120点の告白を見せてやる。
審査員に急かされ、僕は学ランを、ワタナベはセーラー服を渋々着る。
サソリのおっさん×セーラー服って言葉にできないくらいキモイな……。
さて、準備は整った。いくぜ……固有スキル”タナカの愛の唱”
「ずっと君を想っていた……」
「お、おう……」
「君への思いは一言じゃ言い表せられない……だから1句読ませてくれ」
「さっさと読め」
”君想ふ
僕の心は
夕焼けさ” 作タナカ
「2点」
「5点」
「-2000000点」
なんでだよおおおおおおおお!!!
異議ありだ!再採点を申請する!
「冒涜者め……」
このパターンって……
「愛の冒涜者共……」
3体のおっさん眼鏡の顔が般若見たくなっていく……やっぱりだああああ!!
「冒涜者め!鉄槌を下す!!」
ガチガチのガチバトルになった……。
ーー
その後も僕たちはプロポーズ、不良からかっこよく助ける、七夕で出会った彦星と織姫etc……
いくつものステージを潜り抜け最終ステージにたどり着いた。
てか僕の前世の世界の影響受け過ぎじゃね?銀河共通事項なのか?
へとへとになりながら顔を上げると、そこには「終」と書いてあるTシャツを着た、いつものゴーレムがいた。
「よくぞここまでたどり着きました!ここまでたどり着いたあなた方に私は称賛と喝采を贈りましょう」
感動したような顔つきで、おっさんゴーレムがパチパチと拍手をする。
「ここはファイナルステージ。フィナーレに相応しい試練を用意しました。それは……『決別』です!」
ここにきて意外なお題だ。
「『決別』。それは愛するものとでも戦えるか?ということでございます。」
どこか遠くをおっさんゴーレムは見つめながら指パッチンをする。
「オワッ」
僕の両手両足が黒い金属で拘束された。くそう動けねえ!
「『絆』とはお互いを信頼しあうこと……ですがそれが『依存』になってはいけないのです。」
物憂げな顔をおっさんゴーレムはしながら、手をパンパンと2回たたく。
すると、ガラスの様な素材でできた人型ゴーレムが出てきた。
「この者は人を写す鏡。絆あるものに対しても過ちを正すことができるのか見届けさせてもらいます。」
ガラス製ゴーレムが姿を変えていき、僕の姿に変わった。
「さあ、パートナーとの戦いを……」
ザンッ
僕の形をしたゴーレムが真っ二つになる。
「これでいいか?」
「「……」」
僕とおっさんゴーレムは無言になる。いや……いいんだけどさ……。
何とも言えない顔をしているおっさんゴーレムに見つめられながら僕たちは最後の扉に吸い込まれていった。
扉から放り出されるとそこは青空だった。
大きな紫色の植物でできている吹き抜けの広場だ。
雲が同じ高さに浮いていることから相当な高度なのだろう。
「キーシッシ。よく来たな。」
黒い触覚が生えたバイキンが擬人化したらこんな形になるのだろうなという風貌の男が甲高い声で僕らに話しかけてきた。
「えーとですね聞きたいことがありまして……」
「病気のことだろう?」
擬人化バイキンがいやらしい笑いを浮かべる。こいつ……
「てめえが元凶か!?」
ワタナベがはち切れんばかりの形相で怒鳴る!
「ヒイーヒッヒ。そうだぜぇ。おいらが元凶さ。そんでもってお前らはここで死ぬ。」
三日月形にバイキン男の口が裂ける。そして……
「いでよ我が下僕!!」
バイキン男が叫ぶと次の瞬間、紫色の巨体に黒色のまだら模様、蛾の羽が生えた生物が舞い降りる!!
「我が名はバイキーン!そしてこいつがお前らに死を告げる者”感染龍 インフル”!!ヒヒヒせいぜい足掻け。」
”感染龍 インフル”
その名を聞いた時わかった!
悪魔の村を襲った病気。その正体は……
インフルエンザだ!!!




