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ゾンビはじめました  作者: あきねこ
第1章 ゾンビはじめました
16/31

総額5000万の女達 前編

オークション。


生前の世界にもあったネットオークション。


あれは異世界にもある。


ただし、この世界にはインターネットなんてものはない。


もちろんPCもだ。



つまりは超アナログだ。



その場で出品依頼し、すぐにオークションにかけられる。


そのため時間帯や客層というものを見極めることが最も重要になる。



ーー



「今日1番の大目玉だ!!それじゃあいくぜぇ!!100万エーンからスタートだ!!」



僕とリリアは今、古びた洋館風の建物の一室にいる。小さな体育館ぐらいの広さがある一室。


ステージには黒いシルクハット、黒いスーツ姿の中年のおっさんが進行役となって大声を張り上げている。


辺りを見渡すとドレスコードを纏ったハイソっぽい人達ばかりだ。胸には皆ナンバープレートをつけている。


そう。僕たちは今オークション会場にいる。


ーー


スズキ討伐の財宝は換金所には持っていかなった。


ここは芸術と鍛冶の街『サブカルチャー』だ


金持ちが集まる街だ


『ゾンビーズ』のフレーバーテキストにそう書いてあったのを思い出し、オークションにかけた方が高く売れるとそう踏んだ。


因みに僕の取り分のオークションはもう終わった。


その額な、なんと5000万エーンだった!!大金だ!!


前世の給料20万の僕がだ!ヒャッホウ!



そしてリリアの取り分が今オークションにかけられている。


さあどこまで行くだろう。


「48番の方2億4000万ですね?現在の価格は2億4000万です!ほかの方いますかー?」



オークション進行役のおっさんが声を張り上げる


会場は大騒ぎだ!!


「4億!」



会場がどよめく。


「な、なんと~4億エーン!4億エーンがでました~!!他の方いますか?」



終了のブザーが鳴り響く


「終了ですー!!落札額は4億エーン。おめでとうございます!」




マジかよ。開いた口が塞がらない。


リリアも口がポケ~となっている。


でも明らかに高すぎる買取額だ。僕の取り分で5000万。


これでも換金所価格よりかなり上がった方だ。


リリアの取り分は僕の4.5倍だから2億2500万、いっても2億5000万ぐらいかなーなんて思ってたけど……



「いい買い物をさせてもらったのじゃ」



振り返るとそこにはミーナの店の店長がいた。


ーー


店長に街一番の高級料理屋に連れてこられた。店名は『ボッタクリーナ』。


不安になる名前だ……。


店に入ると店員に個室に案内された。なんか店長手馴れてない?常連?そんなぼったくられてんの?


個室に入ると、注文してないのに料理が運ばれてくる。


早速ぼったくる気か?と思ったが……


ここら辺じゃ手に入りづらい”グリズリーベア”の肉を使ったスペアリブ。


純潔の乙女が水浴びをした泉の水を好んで飲むシカ”スケベジカ”の刺身。馬じゃないから鹿刺とでもいうのかな……。


その他にもこの辺りじゃ手に入りにくい食材をふんだんに使った料理がたくさん並ぶ。


店名の割にちゃんとした高級料理を出すみたいだ。


お金はたくさん入ったけど、根が庶民だから会計にビビっちゃう……


「ワシ、これでも結構有名な鍛冶師なんじゃよ」



開口一番そんなことを言われた。


「即金で4億ですもんね、びっくりですよ」



リリアもウンウンとうなづいている。


「先行投資じゃよ。というか単純に頼みたいことがあっての……」



んなこったろうと思ったよ。何もなしに即金4億だすなんておかしいと思ったんだ!


「ミーナのことじゃ」



僕は続きを促す


「あの子がの今朝帰ってきたら随分機嫌がよくての……」


それはそうだろう僕のようなプリティなゾンビを思う存分蹂躙したのだから……


昨日のことを思い出すと嬉しいやら切ないやら……


「珍しく他人のことを楽しそうに話すんじゃ。面白い奴らがいるっての。」


それはお楽しみいただけたようで良かった


「あの子の固有スキルについて聞いたかの……?」



「ウェポンマスタリーのことですか?」



店長は首を振る


「もう一つのスキルの方じゃ。鍛冶師の心得」



僕は聞いていないと告げる……


「鍛冶師の心得はのお、要は鍛冶師の天分があるということでの、常人じゃ到達できん高みまで到達できる証なのじゃ」



と言うと……?


「他の鍛冶師の技術をすぐに盗めるのじゃ、そして自分の技術として昇華できる」



「つまりの、盗んだ相手よりもより高度な鍛冶技術を使えるようになるスキルなんじゃ」



ウェポンマスタリーといいとんだチート女だ


「ワシはあの子に持てる技術の全てを叩きこんだ……」



「お主が盗もうとした『死者の剣』だってあの子の作品じゃよ」



どうりで……こんな序盤の街であるわけだ


「もうの…わしがあの子に教えられることはもうないのじゃ……」



「でもの、あの子はワシに義理立てして店の切り盛りを手伝うてくれとる」



ミーナが!?そっちの方がスキルより驚きだ……


「じゃがワシは嬉しく思うと同時に悲しいのじゃ……あんな才能を持つ子がこんな老いぼれの元で朽ちてくと思うとの……」



そう言って店長は僕を見つめる


「そこでじゃ……あの子を連れだしてくれんかの?」



突然何を言い出すんだこの爺さん……


「旅に出て、もっとあの子の才能を活かして欲しいのじゃ」



んー……正直戦力としても女性としても付いてきてくれたらこの上なく心強いけど、リリアに対してこれ以上不義理なことはしたくないし……


「ミーナ姉連れて行こうよ!」



僕はびっくりしてしまった。え?どゆこと?


「私ね、ホントはタナカとミーナ姉の話聞いてたんだ……途中から胸がぎゅーッてなって我慢できなくて突撃しちゃったけど……」



聞かれてたのか……僕のエクソシストごっこは見てないよね……?


「ミーナ姉寂しかったと思うんだ。ずっと一人で戦ってきて店長さんに拾われて、それでも心のスキマが埋まらなくて……」



「でもタナカと話してるとき、心にたまった膿みたいのがでてスッキリしたような顔してた!」



「それに……私もミーナ姉といるとお姉ちゃんができたみたいで嬉しい……私一人っ子だから。」



「だからリリアは大歓迎だよ!」



あーなんか涙出そうだわ。


皆知ってたかい?異世界では天使のような悪魔がいるんだぜ?



聖母様だ。マリリアだ。



「わかりました。では一度ミーナと話をさせてください」



店長は嬉しそうに笑った。




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