取説
取扱説明書。通称取説。
君たちはそのありがたさを分かっているだろうか。
いいや。わかっていない。断言できる。
何を隠そう僕も前世では捨てていた。
考えてみて欲しい。
パソコンを買ったとする。
当然セットアップや設置をしなければパソコンを使うことはできない。
じゃあなんでそんなに簡単にできるのか。
そう取扱説明書だ。
パソコンを置くテーブルもそうだ。
組み立てるのには、パーツに釘を打ち込まなければいけない。
じゃあなんでそんなにも簡単にできるのか。
そう取扱説明書だ。
僕たちの世界は取扱説明書を中心に回っていると言える。
最早”聖書”と言っても過言ではない。
僕は異世界に来てその偉大さを知ることになった。
ーー
「申し訳ありませんでした!!」
異世界に来て2回目の土下座だ。今週2回目だ。
このペースで行くと世界一土下座をした男としてギネスに載るだろう
「もう、わかったよ。許してあげるから顔あげて。」
ミーナは朝になると「あばよ!」と言い残し、颯爽と帰っていった。
これは修羅場になる。そう思った。それに僕自身罪悪感が半端なかった。
申し訳ねぇ申し訳ねぇ……。
「ミーナ姉に無理矢理されたんでしょ?タナカじゃミーナ姉抑えるなんて無理だもんね。」
……。
まあ、そうなんだけど……
いや、言い訳はよそう。
正直、ミーナは美人だ。絶世と言ってもいいだろう。
事の最中に見とれてしまった。
こんな美人が俺なんかと……なんて興奮したのも事実だ。
というかちょっと惚れた。単純だと笑うがいい。
25歳元童貞、女性免疫0なんてこんなもんだ……。
「いや、してしまったのは僕の責任です。申し訳ありません。」
捨てられたくはない……Bigなゾンビに小さなリリアは必要だ。
リリア取扱説明書なんてものがあるなら僕は穴があくまで読むだろう。
目次からの捨てられない方法で検索だ。
だがしかしこればかりはどうしようもない……
リリアが不潔だと僕を拒絶したなら大人しく身を引こう。
そして誰の目もないところでひっそりと屍になろう
ひっそりと屍になッタナカだ。
ーー青い顔をさらに青くさせている僕を見て、リリアは口を開く。
「悪魔族の村では一夫多妻は普通だよ。逆も普通だけど」
そうなのか……
「私個人としては正直嫌だし、少し裏切られたって気持ちもあるよ……」
……。
「でも、ミーナ姉のこと私結構好きだし、タナカが私の為に頑張ってくれてるのも知ってるから……」
いや、僕はそんな大したことはしていない……
今回だってちょっと右腕が頑張っただけだ……。
「だから、今回は許すよ……ミーナ姉じゃなかったら許せなかったかもだけど……」
「その代わり……今よりもっと大事にしてね。」
なんてかわいいんだ!!天使だ!!評価は文句なしの★3つだ!!
君に僕の全てを捧げると誓います!
今日から僕は愛の戦士だ。戦士タナカだ。
ありがてえありがてえ……。
……ふざけるのはよそう。
これが当たり前じゃないんだ。
リリアの懐が深いからこそ許されたのだ。
僕より1周りも2周りも小さいこんな子がだ……
リリアに助けられる自分が情けない……
そうだ感謝の気持ちを持とう。そしてリリアに何かあったら全力で助けよう。
こうしてリリアの優しさに僕は救われた。