タナカ必要ないッてよ
王族ゴブリン(ゴブリンロード)。
ゴブリンという種族の中で、稀に人語を理解したり、簡単な道具なら使いこなせる知能の高いゴブリンが生まれてくることがある。
それがホブゴブリン。まあ大したことない。いってもちょっと頭いいゴブリン程度だ。
しかし、稀にホブゴブリンが進化し、群れを指揮するほどの能力を持つことがある。
そのゴブリンの名は王族ゴブリン(ゴブリンロード)。
非常に厄介で、群れ内にホブゴブリンが数匹いるだけで、群れの数は爆発的に多くなり、討伐難度が増す。
下級冒険者では太刀打ちできないだろう。
ーー
「ミーナさんパないっす!」
僕は馬車を操作しながら、ミーナさんの機嫌を取る。
「あー」
めんどくせえなこいつって感じで返された。
「ミーナお姉ちゃん強いんだね!」
リリアが尊敬の眼差しでミーナを見つめる。
「そ、そんなたいしたことねえよ……」
まんざらでもなさそうだ……僕の時と態度違くない?
人族”ミーナ” Lv41
HP 385/385
MP 73/73
力 203
防御 159
素早さ 172
隠密 168
スキル:火の槍、火炎の槍、紅豪炎の槍、カウンタースピア、瞑想、乱れ突き、真空真一文字
ユニークスキル:ウェポンマスタリー、鍛冶師の心得
強くね?
途中、何度か魔物に襲われたけど、ほとんどミーナが一撃で仕留めていた。
たまに漏れてもリリアが処理する。
タナカはいらない子ですか……?
タナカは馬車から一度も下りることなく、目的地に着いた。
「こっからは徒歩で行くぞ。馬車隠してこい」
あいあいさー。僕は洞窟近くの茂みに馬車を隠す。
ゴブリンは基本洞窟に群れで生活する。洞窟の規模でその群れがどの程度の規模なのかわかる。
「中々でかい洞窟っすね。ロードが1匹ならいいんすけどね」
まあ、ミーナがいれば大丈夫だろ。
ミーナは冒険者の世界でいうなら、上の下くらいだ。こんな序盤の街にいるような冒険者じゃない。
僕たちはどんどん奥へと進んでいく。
途中何度かゴブリンと出くわしたがミーナの槍で1発だ。
てかホブゴブリンも1撃かよ……。まさに不動明王。
「なんか言ったか?」
「いえ、何も……」
怖い……ミーナは青髪・青眼の美人系お姉さんだ。だが見た目に騙されてはいけない。
綺麗な華には、棘と槍とパンチと蹴りと暴言がある。良い子の皆覚えておこう。
「ん?行き止まりか?」
そろそろ最奥かなーなんて思ってると行き止まりになっていた。
僕は行き止まりの部屋を散策する。多分こういう時は……
「ミーナさんありましたよ。隠し穴です」
きったねえ布の下に岩を削り出して作ったような蓋がかぶさっている穴があった。蓋を退かすと梯子がかけてある。
「やっと役にたったな腐れゾンビ」
言葉の暴力団だ。
にしても、王族ゴブリン(ゴブリンロード)にこんなものを作れる知能があっただろうか……うーむ
「おい、置いてくぞ」
考える人になっていたら、ミーナとリリアは僕を置いて先に行ってしまった。
まっちくりー。
梯子を下りると、1本道になっており、壁には青白く光る魔石が等間隔で埋め込まれ、その先には3m程の石でできた両扉があった。
……絶対におかしい。こんな手のこんだモノ、いくら王族ゴブリン(ゴブリンロード)でも作れるはずがない!
「待って二人とも!!1回地上に戻って応援を呼んでこよう!何かがおかしい!!」
僕は叫んだと同時にミーナが扉を押してしまった。
「ヨクキタナ……カチクドモ……」
扉の向こうには王冠をかぶったゴブリンと王族ゴブリン(ゴブリンロード)が6匹いた……