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ゾンビはじめました  作者: あきねこ
第1章 ゾンビはじめました
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プロローグ

大人気MMORPG『ゾンビーズ』。ゾンビとなって復活し、世界を冒険するMMORPGだ。


初期のステータスや職業は完全ランダムで、前世での死因に基づいて職業やステータスが決まるというぶっ飛んだ設定が逆におもしろいと人気になっている。


僕は田中サトシ。昼は平凡な25歳男性、夜と週末はゾンビーズのヘビーユーザーでベテランゾンビだ。


僕は成金ゾンビというレア職業を引き当て、重度の廃課金もあり、ゾンビーズの中ではそれなりに有名になっているが。


現実世界ではただの工場作業員だ…。毎月の給料は20万円稼ぐのがやっとだ。


成金のナの字もない…。






その日は何の変哲もない夜だった。


「おつかれーす」


「お疲れ様ー」


僕はいつも通りの挨拶を同僚と交わし、工場を後にする。


今日も残業だった。ここのところ繁忙期で忙しくなっている。


暗い夜道。


切れかけの街灯が点滅している。


いつもと何も変わらない風景。


薄い月明かりが僕を照らす。


帰り道、残業で蓄積された疲れが僕の眠気を促す。


切れかけの電気、薄汚れた塗装、古臭い型の自販機がある。


この自販機でコーヒーを買って眠気を覚ます。これが僕のルーティンだ。


「はあ、早く帰ってゾンビーズやりたいなあ、今日こそ新レイドボス暴虐のテミスを倒してレアドロップを手に入れるぞ~」



僕はポケットの中の財布を取り出す。


「おっと」


昼間に寄ったコンビニで受け取ったお釣りを財布に入れ忘れ、ポケットに直入れしてたみたいだ。


500円玉がポケットから転がっていく……


「あー待ってくれー」



仕事終わりということで僕はその時注意力が散漫していた。



キキイイィーーードンッ!!



ものすごい衝撃が加わる。


え?何が起きたんだ?


体が動かない。いや、それだけじゃない。


体中が痛い。火でも着けられたかのような激痛が僕を襲う。


25年生きてきた中でこんな苦痛は味わったことがなかった。



だんだんと眠くなる。何が起きたのか全く分からない……


視界が霞んでいく……


何だろう……何かが終わっていく感じだ……


でも、何か……何か言い残さないといけない。そんな気がした。


何故そう思ったかはわからない。でも何かを残していかないといけない。強くそう思った。


消えていく意識の中で彼は人生最後の言葉を囁いた。



「ぼ、僕の500……え…ン……。」










目が覚めると四方が木の壁に囲まれていた。少し異臭がする。


恐らく木が腐ってこんな匂いを発しているのだろう……。


「なんだこれ??」




バキッ!腐っていたおかげで簡単に穴が開いた。


その穴に両手を突っ込み、広げるようにして力を込める。


やっと人一人通れる程に穴が広がった。


ぼくは木の壁を壊し、そこから這い出た。


すると目の前に広がっていたのは墓場だった。


キリスト教の墓みたいな墓石が辺り一面に立ち並んでいる。




墓から這い出ると急に体に何かが付きまとう


「なんだこれ…?」




僕の体の後ろに木製のボロい荷車が現れる。小さな長方形の木箱だ。


ぬか漬けに使う壺なんかを4つか5つ積み込んだら、もういっぱいだろう……。


よく見ると所々虫食いのように穴が開いている。ゴミ捨て場に置いてあっても誰も拾わないだろう……。



すると、目の前に白い奇妙な文字が表示された。僕はその文字が何故か読める……。



『荷車ゾンビ”タナカ”復活しました』








僕はその日ゾンビになった。


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