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海桜に雪芒と  作者: 藤泉都理
三巻 おうぎを舞いし染の運命編
49/66

おうぎを舞いし染の運命 十一




 仁の区画、漆黒町、絶滅危惧種『ほの』が地生する森にて。


 秘密基地を作ろう。

 紅凪こうしはどこか吹っ切れたような表情と芯のある声音で以て氷月ひづきに言った。


「立ち入り禁止区域以外にも竹やら竹やら名前も知らない植物が生えているからな。幼い頃は伐って器用に組み立てて秘密基地を作る、なんてできなかった俺たちも今はできるだろう。さあ。作るぞ」


 氷月の肩から手を離しては腰に両手を当てて胸を張っていた紅凪は、じっと氷月を凝視していた。氷月が動くまでは、自分も微塵たりとも動かないと決めていた。

 その覚悟が氷月に伝わったのだろうか。ひしひしと、

 無言で動き始めた氷月に続くように、紅凪は護身用にと常に身に着けている短刀を懐から取り出しては鞘を抜いて鞘を懐に戻し、まずは地から切り離そうと、竹を見事に伐ろうとした。

 が。できなかった。

 竹を伐れないばかりか、短刀が竹に食い込みすらしない。弾き返されてしまう。

 流石は強靭な竹だ。畏敬の念を込めながら不敵に笑って見せたのち、また短刀を勢いよく竹にぶつけた。弾き返された。ぶつけた。弾き返された。ぶつけた。弾き返された。


「………っふ。流石は選ばれし土地の竹だ。立ち入り禁止区域から漏れたとて。その効力が切れるわけではなかったな」


 もう伐るのは止めよう。幼い頃のように、竹を地から切り離す事なく、折り曲げては向かい側の竹と紐で結び合わせて、半円状の秘密基地を作ろう。

 紅凪が懐から鞘を取り出して、短刀を鞘に収め、短刀を懐に戻し、紐を取り出して、まずは一方の竹を掴んで折り曲げながら反対方向の竹に近づき、その反対方向の竹を掴んでは折り曲げては先を重ねて片手で一緒に掴んで、片手で紐を結んでを繰り返す。

 そうして一夜限りの秘密基地を作り上げる。

 物作り、とかく秘密基地は何歳になってもわくわくするものだなあ。

 現状を忘れてはいないけれど、胸を躍らせながら昔の秘密基地を黙々と作って行った紅凪。完成した秘密基地の前に立って氷月に完成したぞと堂々と言った。


「さあ。中に入って、俺と語り合おう」

「………ではこれをどうぞ」

「………何これ?」

「竹チップです。就寝時にこれを枕元に置けば快適な睡眠が迎えられるそうです」

「………秘密基地の中に入り切れないくらいいっぱい伐り刻んだんだな」

「どれぐらい必要か分からなかったので、五十本ほど伐り刻みました。もう、伐採樹齢時期を超えた竹を選びましたので、ここの環境に悪影響はないはずです」

「………ちなみに、何の道具で伐り刻んだんだ?超伐れると有名な刃物か?」

「糸です。仙弥せんや殿から頂きました忍び道具の一つです」

「へえ。そうか。すごいな」

「はい。本当に。仙弥殿はすごいです」

「いや。まあ。忍び道具を作った仙弥もすごいけどよ。その忍び道具を使えるおまえもすごいだろうが。つーか。伐採樹齢時期を超えた竹を選べるとかもすごいし。竹チップを枕元に置けば快適な睡眠を迎えられるとか知ってるのもすごいし。氷月はすごいんだぞ」

「………私はすごくありません。求められている能力を得られませんでした。だから。両親にも、雪晶ゆきあき様にも。不要だと捨てられました。当然です」

「………秘密基地に入るぞ。ほら。竹チップを敷き詰めよう。おまえが丸めて伐り刻んでくれたから痛くないしな」

「………」


 もうほとんど思考停止状態に陥っているのだろう。氷月は何も言わずに、自分が作った竹チップを黙々と秘密基地の中へと運んで行った。紅凪もまた、竹チップを運んで行っては秘密基地の中に敷き詰めて行ったのであった。











(2024.11.6)





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