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海桜に雪芒と  作者: 藤泉都理
三巻 おうぎを舞いし染の運命編
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おうぎを舞いし染の運命 三




 零の区画、『扇晶城』の庭園にて。

 紅凪こうし青嵐せいらんがゆっくりと歩を進める中、しんみりとした空気が『二の丸』の自室に辿り着くまで続くかに思えたのだが。


「ねえええええええええ聞いたよおおおおおおおおおおまえ紗世さよと二人一組になって舞を披露するんだってええええええええ」


 どこからかおどろおどろしい声音が、おどろおどろしい効果音と共に冷ややかに鳴り響いたかと思えば、がっしり両肩を掴まれた紅凪は足を止めて、地獄耳だなと呆れた声音を出した。


「おまえ。紗世に関する情報を得るの早過ぎだろう。もしかして、国中におまえの耳がばら撒かれてるんじゃないだろうな?」

「っふ。太陽よりも熱く、海淵よりも深い俺の紗世へと向ける想いを思い知ったか?」

「いや。怖いわ。滅茶苦茶怖いわー。こんな兄がいるなんて、本当に紗世が可哀想。滅茶苦茶可哀想。今度縁切り神社を紹介するわー」

「っふ。縁切り神社?上等だ。神ですら俺たちの仲が切れない事を証明してみせよう」


 おどろおどろしさを霧散させては紅凪の前に立った朱希あきは、紅凪の顔面間近に大きく広げた片手を突き出した。


「勘違いするなよ。紅凪王子。二人一組。常より近い距離で紗世と共に行う舞の練習。熱が帯びたとしても、それは恋の始まりではない。友情の昂りだ」

「あ~~~。はいはい。勘違いしません~~~。友情ですめっちゃ友情です俺と紗世の間には友情しか存在しません~~~」

「っふ。むかつく物言いだが、まあいいだろう。言質は取ったからな。その言葉を違えるなよ。違えた時は王子とはいえ、容赦はしない」

「はいはい」


 うむ。深く頷いた朱希は紅凪の隣に立つ青嵐へと深く頭を下げた。


「青嵐王子。申し訳ございません。妹に対する熱き俺の想いが暴走して挨拶を疎かにしてしまいました」

「うん。いいよ。私も弟を持つ身だからね。あなたの気持ちはよく分かる。暴走してしまうよね」

「いや。こんな暑苦しくて面倒くさくてうざったい気持ちなんて分からないでくれ」

「まあまあ。紅凪。あなたも弟か妹が生まれたら分かるよ。というよりも。あなたもすでに分かっていると思うけど」

「そうだそうだ。おまえも分かっている。氷月に対して暴走しまくっているだろう。気持ちが空回りしまくっているだろう。あ~~~。氷月ひづきが可哀想~~~」

「そっくりそのままその言葉をおまえに返してやるよ」

「紗世は可哀想じゃありません~~~」

「いいえとっても可哀想です~~~」

「ほらほら。二人共。紗世様も氷月も可哀想じゃないよ。こんなに想ってくれる頼もしいお兄ちゃんがいるんだからね。ね?紅凪」

「………頼もしい兄貴がいてとっても幸せだと言ってもらいたいって、顔に滅茶苦茶書いている」

「いやだなあ。そんな強要しないよ。そういうのは、身の内から湧き出て、言いたいって思ったら、言ってくれていいんだよ。紅凪。それが今だって言うなら、喜んで受け入れるよ」

「怖い。素朴な笑顔なのに、何か怖い」

「あはは。怖くないよ。やだなあ」


 青嵐は止めていた足を動かして、ゆったりと歩き出した。

 紅凪は前に立ったままの朱希と顔を見合わせてのち、青嵐に続くように歩き出した。

 頼りない背中。紅凪は青嵐の背中を見つめた。自分と同じ背丈だが、線が細く一回り小さく見えてしまう。地に足がついていなく、ふわふわと何処かに飛んでいきそうというずっと抱いている印象も変わらず。

 けれど、安心する。異母兄だから。兄だから。兄であろうとしてくれるから。


「後ろを歩かないで一緒に歩こうよ。紅凪」


 足を止めて振り向いた青嵐に、しょうがないなあと後頭部を軽く搔いた紅凪は、朱希と共に青嵐の隣に立って歩き出したのであった。











(2024.10.30)




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