第六十話「作戦」
お待たせしました! 最新話です。
そして、前回後書きで言ったところまで内容が進んでません。ごめんなさいm(_ _;)m
「ボクが……ヌゥェゴモル教団にいる訳。簡単だよ妹が人質に取られてるんだ」
語り始めたσ。
自分が妹を守らなければならないのに、そうはできない…そんな悔しさが滲み出てくるような声色だった。
「妹…麻衣は、本当の姉妹じゃないんだ。
異世界から来て、右も左もわからずに右往左往していた私を拾ってくれた麻衣の家族。
麻衣や義父さん、義母さんには凄く感謝してた。
…でも、ある日、ボクを受け入れてくれたみんなはヌゥェゴモル教団に奪われた」
突然に押し殺すような切迫した声質になったσの声は、苦渋と満ちている。
「ボクの…せいだった。邪神に…ヌゥェゴモルに飛ばされて地球に来たボクは、教団に探されていたんだ」
情報を整理しよう。
つまり、何らかの原因でヌゥェゴモルに異世界――地球へ飛ばされたσは運良く拾われ、その家の養子になったと。
だが、ヌゥェゴモルはσを見つけ出し、教団を使って、おそらく彼女の義父と義母を殺した。
義妹の麻衣は、σを従わせるために人質に取られてる…。
これが話の真相だろう。
σは、どうやら好きで教団にいる訳ではないらしい。
「…ヌゥェゴモル様、ヌゥェゴモル様って、表面上は従って風にしてる。けど、教団のやつらもそれはわかってて、あえてボクに汚れ仕事をさせてくる。ボクは、ああやって嗤われても、従うしかないんだ…」
そこからはお互いに無言だった。
σが俺からの返答を望んでいないからだ。
σは、まだ俺を敵として割りきることのできる場所にいる。
それではいけない。
傲慢で身勝手だと思う。だけど、俺はσを救いたい。
俺は、静かに口を開いた。
「σ、この先にヌゥェゴモル教団の施設が、あるんだな?」
「う、うん。真っ直ぐ先の結界の中だけど…。…ていうか、こんな事聞いてどうするんだよ?」
俺はおもむろに立ち上がり、にやりと不敵な笑みを浮かべる。
「決まってんだろ? 殴り込みだ」
「は? ………って、えええぇぇぇぇぇええええええ!?!!!?」
言ってから暫くぽかんとしたσの顔が、突如驚愕に染まった。
† † †
「では! 作戦を発表する!」
俺だ! 霧式だ!
……ということで、ヌゥェゴモルの教団施設に“殴り込み”するにあたっての作戦を言おうと思う。
しかし、周囲は…
「はあ…。目が覚めるなりこれか…」
「…奇遇だね。ボクも同感だよ、上山 聖岳」
「ふっ、お前とは立場さえ違えば仲良くなれそうだ。なあσ?」
「そうだね。そう思うよ」
「あのー、二人とも俺の話聞く気あります?」
「「あ、まあ、うん」」
オイ! 二人とも目ぇ逸らすな!!
いや、ね?
俺が戦闘してる間に重傷ながら放置されてた聖岳ちゃんとか、気絶してるのに俺に叩き起こされた聖岳ちゃんとかならわかるけどさ?
問題はσ、テメェだよ! 変に便乗するんじゃねえ!!
おっと、心が荒ぶっていた。
まあ、これも人間らしさだな。
《体は化け物でも心は人間!》みたいな?
うむ。今の格好いい…、いつか使おう。
ってそうじゃないだろ。説明だよ。作戦の説明だよ。
よし、気を取り直してっと。
「…ええ、ごほん。作戦を説明しようと思う。作戦は―――」
「え? さっきは作戦を“発表”するとか言ってなかった? いきなり説明?」
「ええいσ!! 人の揚げ足ばっか取るんじゃない! 説明を聞け!」
「ちっ」
「オイ今舌打ちしただろ!? なんだよ!? お前の妹助けるために俺は作戦考えたんだぞ?!」
「ハイハイ、分かったから、分かったから」
「早く説明しろ、霧式。どうせ私も協力させられるんだろ?」
「ああ、うん。そうだな。…じゃあ改めて作戦を説明する。作戦は――――」
作戦はこうだ。
まず俺が仮面の集団の記憶を書き換える。
『上山聖岳を確保し、搬送中に【魔剣の勇者】が介入。【魔剣の勇者】にはσが応戦、我々は上山聖岳を確保したまま教団まで逃走した。壮絶な戦いに下請けのロイリが死亡、離脱後のσの生死は不明……』
といった具合にだ。
記憶を書き換えられて野に放たれた仮面の衆は、聖岳ちゃんを確保するという任務を果たし、教団施設に戻るわけだ。
その捕らえた聖岳ちゃんがある種のウイルスのような役割をするとも知らずに。
聖岳ちゃんには、俺の魔力を少しだけ譲渡した。
後は、聖岳ちゃんがここぞと言うときに俺の謹製の呪具――【変わり身の札】を使い如何なる危機、如何なる拘束からも脱し、麻衣ちゃんを助ければいい。
その間に俺は、σと共に、施設を破壊し尽くす。
聖岳ちゃんにはその為の餌になってもらうが、果たしてヌゥェゴモル教団よ。
お前が食い狙っている上山 聖岳という人間は怒ったら……かなり、いや――――
「―――相当怖いぞ?」
…そう言って不敵に笑う。ふっ、どうしても敵には同情してしまうな。
あの最強のハリセンに毎秒何千発と叩かれるとなると………。
「…おおう…。鳥肌が…」
「何をボケッと突っ立っている、霧式。仮面たちの記憶の改竄は終わったのか?」
「ん?」
「『ん?』ではないわ! 馬鹿者!」
「すんません! すんません!!」
「おい、霧式…縄の欠片は拾ってきたけど……って、なにやってんのさ。二人して仲睦まじく…」
「ちょ、σたんそれ誤解!? 俺今、ナチュラルにボコられかけてる所だからね?!」
「はいはい分かりましたから。…で縄の再生、早くやってくれる?」
「…その半眼に納得出来ない…。まあ分かった」
縄の性質を【熾慧眼】解析した上で、地面にらを僕は、静かにその魔言を放つ。
「…【干渉】」
如何なる物質にも強制的に干渉し、原子レベルで書き換えることを可能とする、錬金術系統の知られざる極致――【万物操作】の呪文だ。
その超短文詠唱が唱えられた瞬間、世界の理はねじ曲げられる。
その変成の強制力に抗うことはできず、あらゆる物質が望むままに形を変える。
望むままに、地面よ縄へ。
地面に短く茂る草を構成する物質が、土に含まれるあらゆる原子が。僕の思うがままに形を変えて行く。
そして、地面より作られた縄は、縄の欠片へと繋がり、完全なものとなる。
「…毎度、お前のイデアには度肝を抜かれるな」
「待て、上山聖岳。霧式のそれは魔h……」
「だあああ!! 凄いよね!? 凄いっすよね俺のイデア!!」
「だからそれは魔h…」
「うるせえええええええ!! 聖岳ちゃんには、後でちゃんと話す予定なんだよ!」
「? まあ、イデアの話はおいといて。…作戦開始時刻はもう過ぎてるぞ、霧式?」
「え、マジで?」
「ちょ、じゃあ、上山聖岳! 早くお縄について!?」
「言い方!! 笑える!」
「五月蝿い! 愚か者!」
「へんどぶるりゅっけんっっ?!」
……こうして始まった、名付けて“教団施設壊滅作戦(仮)”。
こんな調子で、本当に大丈夫だろうか。
いや、大丈夫だ。問題ない。…そうであってくれないと困るな、あはははは!
このときぶっ建てたフラグが、後の作戦に大きな影響を及ぼしてしまう事など、俺達はまだ知らなかった。
次回は前回の後書きの場面まで行くか…?




