少年
小学生をイメージして書きました。
とっても短い話ですが、ちょっといいなと感じてもらえれば嬉しいです。
少年
ケンカなんかするんじゃなかった。
少年は怒りながら思った。そのくせ、どこか泣きたいような気持ちもあった。
親友とは言わないまでも、仲のいい友達と思っていた。
ほんのささいな事がキッカケだったと思うが、もう覚えていない。ただ向こうが先に肩を突き飛ばしてきたのだ。そして何がなんだか分からないうちに取っ組み合っていた。
友達が心配そうについてきてくれた。こぼれそうな涙をこらえながら、家に帰った。
あいつになぐられてできた、大きなたんこぶが痛かった。
母親が少年のキズを見て、どうしたのとしつこく聞いてきたが、何も答えなかった。
翌朝、学校に行くとそいつがいた。
「ごめんな。痛かっただろ?」
そいつはいつもと変わらない調子で、話しかけてきた。
「そっちこそ、痛かっただろ」
少年はにっこり笑ってこたえた。たんこぶはまだ痛かった。
「うん、痛かったけど、痛くなかった」
右目のまわりを黒くしたパンダも、にっこり笑って答えた。
まわりの友だちも、クラスにいるみんなも一緒になって笑った。
ケンカのことは、もう忘れていた。




