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ソウルライフ~見鬼の少女と用心棒~  作者: 吉田 将
第壱幕   二人の用心棒
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占い師の老婆

「………何者かが……邪魔をしたか…」


「申し訳……ござい………ません……」


 暗闇の中、美優を襲撃した者達が誰かに向かって話していた。

 男達が話している先にあるのは、真っ暗な闇のみ……しかし、そこには確実に何者かが居る。


「そして、お前達は……ノコノコと戻ってきたのか……」


「………見失って………しまい……まして……」


「………言い訳など……聞きたくない!」


 何者かがそう叫んだ瞬間…男達は突然、糸が切れた操り人形のようにその場に倒れた。

 ただし、襲撃したメンバーの中にいた女だけはその場に立っている。


「我が使えるのは……この女のみ………仕方がない……こうなれば、我自ら………あの小娘を捕らえるまで……」


 何者かの言葉がそこで切れると同時に女は暗闇の中へと歩み、その姿を眩ます。

 そして、女の姿が消えた瞬間……暗闇の中から絶叫が聞こえ、辺りに響き渡った。





――――――【1】――――――





「ふぅ……」


「どうしたのよ、美優。ため息なんか吐いて……」


 月曜日の昼休み……美優は教室で千夏と一緒にお弁当を食べていた。

 だが、別に今日は雑談で盛り上がる訳でも無く、千夏が尋ねた通り、ため息ばかり吐いている。


「……アタシの前世って、どんなのかなって……」


「………は?」


 突然の言葉に千夏は目を丸くして、心配するように声を掛けた。


「……何かあった? ……あぁ! 例のストーカーのせいね!」


「ち、違うよ! ただ…なんとなく思っただけ……」


 美優は千夏の誤解を解くと、再び物思いにふける。

 春輝と別れた昨日は家に帰って、母親や姉に自分の家系や言い伝えについて聞いてみた。

 その反応は二人共、予想通り「何も知らない」という事だったが、その際に母親が奇妙な事を言っていた。


「そういえば……ウチじゃないけど、美優には特別な力があるって昔、お父さんが言っていたわね…」


「お父さんが?」


「えぇ、確か……美優は巫女姫の素質があるから、悪い幽霊や妖怪、神様から狙われやすいんだ、って言っていたわよ?」


「あ、それ私も聞いた。だから美優にはそれらが寄り付かないようにしなきゃいけない、って…お父さん、それから髪を短く切ったりしたのよね」


「迷信深いっていうのかしら? 昔からそういうのを信じやすかったからね……」


「………巫女姫って……そんな事、誰が言ったの?」


 美優の半ば驚きと呆れが入った言葉を聞いた母親と姉は声を揃えて同時に言った。


「上倉商店街に居る占い師のお婆さんよ」


 前世かどうかは分からないが、少しでも自分を知る事が出来る手掛かりがあれば、調べてみる価値はある。

 美優は放課後、その占い師のお婆さんなる人物の元に行こうというのだ。

 だが、その占い師は時々場所を変えているとの事を聞いたので、会おうにも現在の場所が分からない。


「ねぇ……千夏は、上倉商店街に居る占い師のお婆さんについて知ってる?」


「占い師のお婆さん……あぁ、あのお婆さんね。よく当たる事で有名な……」


「知ってるの!?」


「えぇ、確か最近は本屋の隣にある路地裏で占いをしてるって聞いたけど……美優、もしかして何か占ってもらうの?」


「うん」


「そう。あのお婆さん、恋愛占いに関しては評判が良いから……占いの結果をストーカーに突き付けるのも良いかもね!」


「だから………ストーカーじゃ無いってばー! そんな人居ないよぉ…」


「あら、居てもおかしくないわよ? 美優は童顔のわりには……良いプロポーションしてるし………背はちょっと低いけど、見る人が見ればレベルは高いと思うわよ?」


「そんな事無いし……というか、身長の事は気にしてるんだから言わないでー!」


 その時の美優は、顔をトマトのように赤くしながら千夏に反論するだけで精一杯だった。





――――――【2】――――――





 放課後、美優は千夏に教えてもらった場所に行くため、上倉商店街に来ていた。


「あら、美優ちゃん。今日は夕飯の買い物?」


「あ、高橋のおばさん。ううん、今日は夕飯の買い物じゃないけど…ちょっと用事があって……」


「おう、美優ちゃん! 今日は新鮮なアジが入ってるよ!」


「魚屋のおじさん。ごめんね、今日は買い物じゃないの………また今度ね!」


 幼い頃から来ていた為か、商店街の人々は美優を見掛ける度に声を掛けて来てくれる。

 美優もそんな人達に応えるように笑顔で返事をする。

 これが、この商店街のいつもの風景だ。


「確か……本屋さんの隣にある路地裏……だよね…」


 知り合う人達に挨拶をしながら、美優は千夏から教えてもらった本屋の前に着いた。

 上倉商店街に唯一ある本屋は古書も扱っている為か、店の歴史は古い。だが、それにも関わらず店には学生が大勢居て、雰囲気は明るい。

 そんな光溢れる場所の影になるようにひっそりと、目的地へ向かう道はあった。

 美優は少し不安になりながらも、その路地裏へと入る。


「うわぁ…………やっぱり沢山居る……」


 自分の頭上や横を通る異形のモノ達……地面に座り込むようにして佇む、老若男女の幽霊達………さながら、都会の裏社会のような光景だ。

 なるべく意識をしないよう、目を合わせないよう、不良とすれ違うように暫く歩いていると、急に視界が拓けた。

 どうやら、路地裏を抜けたようだ。


「………ここは?」


 路地裏を抜けた先にあるのは、小さな空き地だった。

 空き地は四方を建物に囲まれているものの、日の光は当たっているので暗い雰囲気は無い。

 そして、その空き地の真ん中に机と椅子を出して座っている一人の老婆が居た。

 美優は歩きながら、その老婆に向かって尋ねる。


「あの………占いをやっているお婆さんですか?」


「そうだよ…………おや、あなたはあの時の巫女姫かい? 随分と大きくなったねぇ~」


 占い師である老婆は美優を見ると、歯を見せて嬉しそうに笑った。

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