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第93話:意思の硬さ

海兵隊と水軍の合同演習に迷惑な客が来る。

宣城の奪還が完了して暫くが経過した。ライルの計らいで次期王としての覚醒を果たした蓮華殿は積極的に俺達に鍛錬を申し出て来ていた。


俺達は連携を重視しているので、まずは連携を学ぶといっていた。俺達ももちろん喜んで引き受け、今日も孫呉海兵隊と孫呉水軍による合同軍事演習を終了させた処だ。


「やはり上陸直後の部隊展開が遅いな・・・」

「ええ、この世界の軍船ではかなり速いらしいですが」


俺はM1114の側で今回の軍事演習の結果を部下のサイファー・シュラウド最上級曹長と共に検証していた。

彼との付き合いはライルに続いて長い。何しろ俺やライル、レオン、武久、更にはウルフパックの約半分は新兵の頃に彼が教官を務めていたからだ。


確か新兵教官をして20年と言っていた。だから俺達は最年長である彼を“ファーター(Valter:ドイツ語で父親)”と呼んでいるが、イギリス人である彼はドイツ語で呼ばれることを理解できていないようだ。


「強襲上陸をするまでの実力は申し分ないが、展開が遅いし・・・何よりも問題は打撃力だ」

「木造軍船だったら弓か弩しか援護武器が無いですし、でかい奴を載せるにはキツイですな。だからといってただ巨大にすればその分だけ人手がいる」


この時代の船はオールで漕ぐ他に帆を張って前進するものが一般的だ。

司令船の役割を担う楼船に主力船の役割がある十数人を乗せた露檮と小型船の艇、偵察と突撃で使用される快速艇の先登、敵艦に体当たりして撃沈する朦衝、馬のように水面を疾走する赤馬などがある。


孫呉水軍でも主力船として活用されており、水軍戦術のスペシャリストである元水賊の思春率いる艦隊の実力も合わさって高い実力を有しているが、俺達に比べても見劣りしている。


「そういえば少佐、確か美花ちゃんに提案したんですか?」

「ああ、強襲揚陸艦だろ?ちゃんと提案したさ。だがこの時代では画期的過ぎるから出来上がるのはまだ先だろう。支援艦や護衛艦もな・・・」

「早く完成してくれないと間に合わなくなる可能性がありますからな」

「赤壁だろ?」

「ええ」


俺達は水軍造船を担当している美花と水軍総司令官を務める冥琳殿に特例として新造艦の設計図を提供している。

2人からは“造船業でもしていたのか?”と言われた。それ程にまでこの世界では革新的な設計をした軍船なのだ。俺達が話しあっていると誰かが歩み寄ってきた。振り向くと淑やかそうな初老の女性が歩み寄ってきた。


「お主達」

「これは孫静殿」


俺とサイファーは直ぐに踵を鳴らして敬礼をする。歩み寄ってきたのは雪蓮殿や蓮華殿、シャオちゃんの叔母に当たる先代、孫堅 文台の妹である孫静 幼台だ。

かなり有能な将とされていたが、この世界の孫静は雪蓮殿の方針に反対する穏健派筆頭の文官で、話し合いで解決しようと掲げている。確かに話し合いは大事だが、この連中はただ保身に走っているだけだ。


偉そうに踏ん反り返って威張るだけの無能連中。俺達から見れば“孫呉の面汚し”だ。


「相変わらず野蛮なことをしよるわぃ。軍事演習など、民が納める年貢の浪費じゃわぃ」

「本当ですな。流石は傭兵上がりと水賊連中じゃわい」

「これ、事実であっても口にするではない」

「これは失礼。口が滑ってしもうて」

「・・・で、何か御用でありましょうか?」


孫静の周りにいる気味悪い笑い方をする老臣連中はあからさまに嫌味を口にしてくる。はっきり言ってウザいが、俺とサイファーは堪えて孫静に用件を尋ねる。


「お主等、今から主を鞍替えして妾等と来ないか?」

「・・・言っている意味がわかりかねます」

「自分も少佐と同じく・・・」

「妾等はお主等の実力は判っておるぞ。孫策やお主等の将以上にのぅ。じゃからこの国を真に思う我等で呉を変えてゆくのじゃ」


俺は怒りが段々と強くなっていくことを感じた。ろくに会ってもない上に戦おうとしない連中が何を言い出すか・・・。


「孫策のやり方はこの国を食い物にしとるだけじゃ。姉上と同じ戦ばかり繰り返しとるし、規律も乱れるに決まっておる」

「・・・・・・・・・・・・」

「じゃからお主等は今から儂等の手足になればよい「「お断り致します」」な・・・なんじゃと⁉」

「自分達は孫策殿とライル将軍に忠誠を誓った孫呉海兵隊員です。主を変えるなど、我等にはあり得ないことです」

「海兵隊は“常に忠誠を”という信念があります。ですので皆様に鞍替えすることはあり得ません」

「な・・・なんならそれ相応の地位もやるし、特別に給金もやるぞ‼それじゃったらよいじゃろ?」


・・・本当にウザい。金で何でも解決するやり方には袁紹を思い出すし、何よりもしつこい。俺はため息を吐きながらこの耄碌連中を睨みつける。


「はぁ・・・・・・分かってないようだな孫静殿。俺達は金や地位には興味が無いし、相棒達を裏切るつもりもない」

「その通りだ」

「なっ‼・・・一将の分際でなんという口の聴き方じゃ⁉」

「先に失礼をはたらいたのはあんたらだろ?いきなり土足で演習場を踏み歩いたと思えば、金や地位を餌に引き抜こうとしてきた。はっきり言ってウザい」

「何をいいよるか‼孫静様、じゃから儂等は反対したのですぞ。このような野蛮な連中を仲間に加えるなど・・・」

「そうですぞ‼それに部下がこのような口の聴き方なのですから、こやつ等の将もたかが知れとること「いま、なんて言った?」ヒィ⁉」


流石に今の発言には我慢ならない。俺は専用ガバメントであるM1911A2、サイファーは前の世界から持参していた45口径リボルバーのM1917のハンマーを起こして構える。


「俺達のことを馬鹿にするのは一向に構わないが、ライルや雪蓮殿のことを侮辱するのは我慢ならないな」

「うむ、私から見ても少佐と中佐達は我が子も同然だ。だから侮辱するのは許せん」


その凄まじい殺気を恐れ、3人は足を震え指す。


「くっ・・・・・・な・・・なら勝手にせよ‼後で来ても知らんからのぅ‼」

「分かったからとっとと消えろ、ウザいんだよ‼」


最後までしつこい孫静に対して俺は上空目掛けて45,ACP弾を発砲。孫静達は小さく悲鳴をだすと一目散に逃げ出した。いい様だよ。


「はぁ・・・・・・」

「大丈夫ですか?」

「まあな、本当にあんな奴等が我が軍の一員だと考えると腹が立ってくるな」

「同感ですよ」

「後でライルと冥琳殿に進言しておこう。“孫静に反旗の可能性あり”ってな」

「それがいいでしょう。最近になってから穏健派の連中が嗅ぎ回ってると聞きますから・・・」

「そっちも大変だな。新兵が連中に飼い慣らされないようにだけはするなよ?」

「了解です。それよりどうですか?この後に黄蓋様と遅めのアフタヌーンティーにするんですが一緒にでも・・・」

「おっ‼いいねぇ♪付き合うとしようか♪コーヒー飲みたかったとこだし♪」

「・・・あんなドブ水のどこがいいんですか?」


そういいながら俺達はM1114に乗り込んで演習結果と孫静の反旗可能性を報告しに向かい、それが終了すると祭殿とのアフタヌーンティーに向かった・・・・・・・・・。

下邳城では騒動がある。城で働く人達に次々と不運な出来事が起こっていた。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[詠の不運日]

詠の不幸属性、ここに極まる。

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