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第90話:次期王としての決意

辛くも勝利した孫権軍人だが、ライルは彼女に怒りを見せる。

宣城を再占領した俺達はすぐに戦後処理と負傷者の治療に取り掛かった。しかし負傷者の中には虚しく死んでいった兵もいて、正直言ってやるせない気持ちだ。


特に明命が酷かった。命に別状はないけれども、背中に出来た切り傷は消えることは無いだろう。


確かに正史でも窮地に陥った孫権を護る為に自らを鼓舞して、12箇所もの負傷を置いながらも守り通した偉業が記録されている。


治療にあたった女性衛生兵によると両腕に7箇所と両足に4箇所、そして一番大きい背中に1箇所、合計12箇所もの切り傷が正史通りあったそうだ。


顔に残らなかったのが幸いだ。あんな可愛らしい顔に傷でも付いたら後味が悪すぎる。

俺は足音を立てながら孫権殿の下へと向かった。


「衛兵、孫権殿は何処だ?」

「ライル将軍‼」

「挨拶はいい、孫権殿は何処だ?」

「はっ・・・しかし、甘寧将軍からもあまり会合は「何処だと聞いているんだ‼」ひぃっ⁉も・・・申し訳ありません⁉この先の軍議室です⁉」


中々居場所を言わなかった衛兵に苛立ち、思わず怒鳴りつけた俺は軍議室へと向かう。その道中にすれ違う孫呉兵達は怯えながら慌てて道を譲る。


恐らくは身体中から発せられる怒気に怯えてしまったのだろう。しかし気にせずに俺は軍議室の扉を衛兵の静止も聞かずに乱暴に開け放つ。


「ひゃう⁉」

「何事だ⁉」

「・・・・・・」


中にいたのは穏に甘寧、更に椅子に座って落ち込んでいる孫権殿の姿だ。俺は無言で彼女に歩み寄る。


「・・・なんだライル?私を笑いに・・・」


彼女がそう言おうとした瞬間、室内に乾いた音が響き渡る。室内には驚いた甘寧と穏、左頬が赤くなった孫権殿、そして右手を振り上げた俺だ。

要するに彼女に対してビンタを食らわしたのだ。孫権殿は余りにもいきなりのことだったので呆気に取られていた。


「・・・ら・・・ライル・・・」

「・・・バカ野郎が‼」

「なっ・・・貴様‼蓮華様に何を⁉」

「貴様は黙ってろ‼口出しするな‼」

「なんだと⁉」

「はぁあ⁉お・・・落ち着いて下さい‼」

「穏‼そいつを連れて部屋を出ていろ‼俺がいいという迄は誰もいれるな‼」

「はっ・・・はい‼」

「離せ穏‼・・・ライル‼貴様ぁ‼」


甘寧は暴れながら俺に殴り掛かろうとしていたが、穏と複数の衛兵に連れられて軍議室を追い出された。

そして部屋には重すぎる空気が流れ、俺は孫権殿を睨みつける。


「・・・親衛隊員から聞いた・・・お前は自分達が負けることはないと思い込んでいたのだな?」

「・・・そうだ」

「しかも退却すれば呉の名誉に泥がつくとも・・・・・・何様のつもりだ?」

「なん・・・だと?」

「ケツに毛も生えてないヒヨッコのくせに何様のつもりだと聞いているんだ」

「貴様‼私を侮辱するの「粋がるんじゃねえぞヒヨッコ‼」‼‼⁇⁇」


再び部屋に乾いた音が鳴り響き、今度は孫権殿の右頬が赤く染まる。

そして俺は孫権殿の襟元を握り締めて彼女を吊るしあげる。苦しそうだが緩める気はさらさらない。


「貴様の間違った考えのせいで大事な仲間が大勢死んだ‼今でも苦しみ悶えながら死んでいく奴だっているんだぞ‼」

「ぐっ・・・それはみな覚悟の上だろ‼孫呉を守る為に自らの命を捧げてくれたのだ‼」

「それが貴様の指導者としての考えか⁉」

「ああ‼そうだ‼」

「だったら貴様は指導者としても軍人としでも‼孫呉の次期王としても失格だ‼」


俺はそう言うと彼女をその場で投げ飛ばし、壁に叩きつける。幾ら彼女が女性だからといってそんな考えを見過ごす程、俺は優しくない。


「確かに彼等は自ら危険を承知で軍に志願し、命を捧げてくれた‼」

「だから私も「だが‼」・・・」

「だがそんな彼等を無事に家に返してやるのが指導者の責務だろうが‼」

「・・・・・・・・・」

「彼等が死んで更に悲しみが広がるのが彼等の家族だ。戦死者1,147名、重軽傷者371名、更に行方不明者20名。貴様のせいで倍以上の人達が悲しみにくれるだろうな」


俺は自分の考えを何の修正も無しに孫権殿に言い放つ。死んでいった彼等は勇敢な兵士だったが、同時に彼等はこの呉に暮らす民でもあった。


「はっきり言って貴様が雪蓮殿の妹とはとても思えないな。武術の未熟さはまだ目を瞑れるが、指導者としても未熟。軍人としても未熟。更には孫家の人間としても未熟だ」

「⁉」

「偉大な孫呉に属する軍人ならば、民の為にどうやったら喜ばせてやれるか、どうやって悲しみを減らすか、どうやって命を救えるか・・・・・・戦場で全ての命を守り通すなどは現実的に不可能だ。だがだからこそ、軍を任された人間はその犠牲者を減らさなければならない。己の誇りや信念を時には投げ捨ててな」

「わ・・・私は・・・・・・」

「俺も天の国に居た頃から仲間を預けられ、彼等を無事に家に帰す為に戦っている。426人。426人だ。これだけの部下達が俺を信頼して、俺に付いて来てくれている。だから俺もその期待に答え、彼等を無事に帰らせる為に死なせたりはしない」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・孫権 仲謀。討逆将軍の地位の下、偏将軍である貴殿に3日間の営倉入りを命じる。そこでもう一度、次期王としてどうすればいいのか、しっかり考えろ」

「・・・・・・・・・解った」


彼女に営倉入りを命じると俺は軍議室を後にする。いくら孫家の人間だからといって階級では俺が上だ。


親衛隊員達からは恨まれるだろうが、それで彼女が覚醒して成長してくれるのなら安いものだ。


その後、孫権殿は言われた通り自ら営倉に入った。甘寧はやはり最初は猛反対していたが、彼女が“次期王としての決意”を考えたいと言ったら甘寧も隣の営倉で待つといって自ら営倉入りを始める。


俺は彼女の成長を節に願いながら、負傷者テントへと足を運んでいった・・・・・・・・・。


負傷者の治療で慌てるライル達。味方が次々と苦しみながら息を引き取る中、ある人物が駆け付けて来た。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[華佗]

負傷者テントに元気が舞い戻る。

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