第88話:へリボーン
空中からの強襲。敵は慌てふためく。
<ストームからウルヴァリン。機甲部隊が敵拠点を制圧。敵の退路を遮断しました>
「了解ストーム。こちらは宣城へ接近中。孫権殿の部隊が接敵が少し早いことを除けば予定通りだ」
<了解です。ハンター3と通信を繋げます>
<ウルヴァリン、こちらハンター3-1。監視位置で待機中。敵は攻撃に備えて警戒態勢に入っています>
「ハンター3は監視を続行しろ。必要に応じてバレットライフルで援護してくれ。ウルヴァリン out」
イリーナとグルックとの通信を終了させて俺はMH-60Sナイトホークで移動しながら目標の宣城へと向かう。
「ウルヴァリンからグラディウス隊各機。城壁に展開している敵の掃除が完了次第、各自降下予定地点に向かいダストロープを実施。俺達の降下完了後は孫権軍の支援に向かえ」
<こちらグラディウス1、了解しました>
「グレイブ隊は俺達を援護しろ。但し、城にはあまり派手な損害を出すな」
<こちらグレイブ1、了解>
元々は我が軍の拠点であったので、再占領後は再び自軍の拠点になる。だから可能な限りは損害を抑えなければならない。
正直に言うと無茶な注文を孫権殿はしてくれたものだ。戦いで施設の損害は民間人や人質がいない限り二の次に置かれる。
はっきり言って孫権殿には呆れる。軍議中には自らが最前線に赴くといっていたが、彼女の実力でそれが通用するのは旧袁紹軍や賊程度で、山越は長年もの間孫呉軍と交戦している歴戦の猛者が多数存在している。
もちろん俺と穏は反対したが、彼女は軟弱だと言い張って一蹴した。あれには流石に腹が立つ。
仕方が無いので俺達の進路確保が完了するまで待機することで承認したが、それも無駄だった。進路確保が済んでいないのに交戦したら意味がなくなる上に向こうの兵力は一万。対して孫権殿の軍勢は二千弱な上に敵は投石機や衝車を多数装備している。
このままでは数に負けて包囲殲滅が目に見えている。ならば作戦を変更して俺達だけで宣城を陥落させ、一刻も早く孫権軍救援に向かうしかない。
しかし作戦が完了したら直ぐに孫権殿と2人で話す必要がある。
<ウルヴァリン、こちらグレイブ1です。前方に防御用投石機を確認>
「了解した南郷、やってくれ」
<Target lock。FOX3、FOX3>
隣を飛行している南郷のヴァイパーが正面に見掛けた投石機にレーザーロックを行ない、AGM-114Mを発射。ミサイルは目標の頭上まで飛行すると角度を急に変えて目標に弾着する。
「Oh right!! Good Kill!! Good Kill!!」
<グラディウス1からグラディウス各機。全目標への攻撃を許可。 out>
<グラディウス2、了解>
<3了解>
<4了解>
<5了解>
やがて高度を落として敵への攻撃に備える。敵はやはり俺たちの攻撃に備えて、防御態勢を調えていたが空からの強襲は予想すらしていないだろう。
「交戦開始だ」
<了解、攻撃開始‼>
南郷のヴァイパー編隊が少し先に先行して散開。M197を使用して内部の監視塔を破壊する。ナイトホークに搭乗している部下達はそれぞれの武器に弾薬を装填して、俺も携行しているHK417に初弾を装填して無線で指示を下す。
「ガナー‼塔にいる連中を片付けろ‼」
「了解です‼」
機体右側に搭載されているM134Dで塔の上にいた敵弓兵隊を一網打尽にして、その際に一部の残骸が地上に落ちてそこにいた敵兵に降り注ぐ。
「右にシフトだ」
<了解。位置を変えます>
「グレイブ1、右側の塔にヘルファイアをお見舞いしろ」
<了解‼FOX3‼>
南郷に目標を指示すると直ぐに発射されたヘルファイアⅡが塔の上に命中。
これで城壁と塔はクリアだ。後はそれぞれの小隊が目標地点を制圧するだけで、俺の第1小隊は宣城北東部にある武器庫の制圧だ。M134Dで攻撃を加えながら北東部へと向かう。
<こちらグレイブ3、降下を援護します>
「感謝するグレイブ3、見えた敵は残らず始末してくれ。こちらの安全確保のためだ」
<了解です中佐>
グレイブ3のヴァイパーが先行して武器庫周辺の敵に対してガトリング掃射を実施。M56A4 焼夷榴弾と時たま放たれるM242 曳光焼夷榴弾が周辺にいた敵守備隊に襲いかかり、上空からのガトリング掃射により敵が逃げ始める。
「ロープ‼」
俺の搭乗するナイトホークも武器庫上空でホバリング状態で静止して、両側からラペリングロープが降ろされる。そしてHK417を背中に預け、ロープをしっかり掴む。
「ロックンロール‼Go Go Go!!」
一気に蹴り、そのまま地上に降下。地上に降下するとすかさず搭載されているELCAN SPECTOR DRで照準を合わせ、近くにいた敵に7.62mm弾を放つ。
次々と部隊が降下していき、全員の降下が完了するとロープが切り離されてナイトホークがM134Dを発砲しながら上昇していく。
「中佐‼全員降下完了‼」
「よし‼第2分隊は警戒にあたれ‼第1分隊は俺と一緒に敵を駆逐する‼」
『了解‼』
「時間が無い‼素早く確実に行くぞ‼Move Move!!」
確かに今は時間が惜しい。孫権殿がやられる前になんとしても宣城を陥落させ、俺達も救援に向かわなければならない。
HK417を構えながら宣城制圧へと向かっていった・・・・・・・・・。
ライル達が宣城を攻撃している頃、孫権軍は劣勢状態になっていた。
数で劣る孫権軍も必死に攻撃する中、2人の影が主を死守する。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[Activity of a shadow]
孫家の影が舞い踊る。