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第86話:ライルの日常生活

第三章[乱世の混沌]。ここに開幕

袁紹の討伐から1年、俺達が呉に仕官してから実に1年半が経過したある日、袁紹討伐に最も功績を挙げて孫呉軍で宿将である祭殿と同格の地位を築き、討逆将軍になった俺は、建業の城下町を歩いていた。

別に警邏をしている訳ではない。今日は業務から解放されて久々の休暇を満喫しているのだ。

ひとまずは屋台で売られていた猪肉の串焼きを頬張る。だが1つだけ気になることがあるのだが・・・・・・。


(コソコソ・・・・・・ジィー)

(一体なにをしてるんだ・・・雪蓮殿は?)


隠れながら後を付けてくる雪蓮殿が気になって仕方がない。ひとまずは気が付いていないフリをしているが、実際はどうすればいいのか分からない状態だし、今朝方のこともあり今は彼女に顔を合わせられない。


何しろ自分の部屋で目を覚ますと、雪蓮殿が俺を抱き枕にして心地良さそうに眠っていたのだ。

それだけなら彼女はもちろん、小蓮殿や美羽もたまに忍び込んで来るから流石に慣れたが、下着姿というのは驚かされた。朝っぱらから壮絶な目覚めに加えて物凄い恥ずかしさで顔を合わせられないのだ。


(今朝方のこともあるし・・・・・・このまま気が付かないフリをしておこう・・・)


とりあえず食べ終わった猪肉の串焼きの串をすぐそばにあったくずかごに捨てて、繁華街に向かうことにした。

理由は俺の神斬狼の刃を街の武器屋に研いで貰っているので引き取りに行くことと腹ごしらえ、それとマイブームとなっているお香の補充が目的だ。


繁華街に到着するとやはり雪蓮殿の尾行を受けながはも俺は武器屋へと足を運び、暖簾をくぐる。


「おやっさん、邪魔するぞ」

「いらっしゃい‼・・・ああ、ライルの旦那ですかい⁉」


現れたのは50歳位の初老の男性で、名前は呂藩。何でも幼少の頃から益州で修行を積み、呉に戻ってきて直ぐに実力が評価されて孫家お抱えの刀鍛冶になったらしい。

因みに明命の魂切や甘寧の鈴音などは彼が作り出した傑作らしい。普段はこの店で商売を行ない、建業郊外にある鍛冶場は弟子達に任せており、孫家や将軍級の地位を持つ軍人の得物を作る場合にのみ鍛冶場で作る。


「ちょうどよかった。鍛冶場から届いたところでさぁ」

「相変わらず早いな」

「迅速第一が心情ですからね・・・。こちらですぜ。確認してくだせぇ」


そう言われて呂藩から神斬狼を受け取り、研ぎ具合を確認する。一寸の曇りや刃こぼれが見られない素晴らしい仕事だ。俺はウェストポーチから代金を取り出して呂藩を渡す。


「代金だ。いつもすまないな」

「いいってことですぜ・・・あぁ‼そうだ旦那」

「なんだ?」

「そろそろ新しい得物を考えておいたほうがいいですぜ」

「・・・・・・やはりか?」


俺が尋ね返すと呂藩は頷いた。実を言えばここ数日、神斬狼の調子がおかしかった。

こいつの構造は手甲の部分そのものがスライド式となっており、スライドさせて3本の刃を展開させるというものだが、そのスライド基部が一ヶ月前の跋扈した黄巾残党討伐からスムーズに作動しにくくなってる。


本来ならジーンに頼んで新しいパーツを送って貰えばいいが、武器弾薬や兵器といった面でかなり世話になっている。これ以上の負担を掛けさせたくはない。


アレックスの髑髏やレオンの龍舌、武久の正宗と違ってカラクリのようなものな上に、俺自身が最前線で斬り込むから使用期限が近いのだろう。


「まあ、見たところ当面は大丈夫でしょうが、いつまで保つか分かりませんぜ」

「それは分かってる。流石に俺も何か考えてる最中だがな・・・・・・」

「旦那は他に武術が?」

「剣術が得意だが・・・・・・」

「旦那?」

「・・・いや、何でもない。とにかく留意しておく。邪魔したな」

「へい。“次は”雪蓮ちゃんと一緒にでも来てくだせぇ」

「・・・・・・あいよ」


俺は呂藩の言葉に顔を少し赤くさせながら返答する。布に包んだ神斬狼を用意しておいたバックパックに放り込むと、すぐに店を後にした。


それから腹ごしらえでたまに足を運ぶ飯店に行き、揚州炒飯(揚州の川エビ入り五目炒飯)に獅子頭(巨大肉団子のスープ蒸し)、清蒸鰣魚(ジギョの蒸し物)を腹に放り込んですぐに店を出る。

なお、俺が食べた料理は淮揚料理と呼ばれ、長江北部の揚州、淮安、鎮江を発祥の地とする。ヤンツァイとも呼ばれる。材料選びと包丁使いの技が進んでおり、味は淡白であっさりとし、スープなどに優れている。


そして雑貨洋品店では消耗品、本屋では新しい兵法書を購入していくが・・・・・・。


(コソコソ・・・ジィー)

「はぁ・・・・・・声・・・かけようかな」


いつまでも気が付いていないと思い込んでいる雪蓮殿に根負けしそうだ。というかなんでさっきから尾行しているのだろう?


ひとまずは気が付いていないフリをしながら最後の目的地である香専門店へと到着。

しかしこの時代になんで専門店があるのか理解出来なかった。


「いらっしゃいませ‼ライル様‼」


眩しい位に明るい笑顔で出迎えてくれた赤髪の街娘。彼女はこの店の一人娘であり、いつでも明るくて進んで店の手伝いをしている非常にいい子だ。


「やあ、相変わらず元気そうだね」

「はい‼父上や母上も元気ですよ‼それで何時もの緑茶香ですか?」

「頼む。それと森林もだ」

「はい‼」


注文すると慣れた手つきで指定した香を箱に詰めて行き、合計20本もの香を箱詰めした。


「お待たせしましたライル様」

「ありがとう・・・・・・これは?」

「おまけの新作の香です。甘い香りがしますよ」

「そうか、悪いな。だったら帰ったら早速使って「ああっと‼但しこの香は“本当に大事な人と二人っきりになった時”にだけ使ってくださいね♪」・・・はい?」


使うと言おうと彼女はそれを制止する。


「いいですか、ライル様?このお香は“必ず”本当に大事な人と二人っきりになった時に使ってくださいね?」

「・・・・・・仮にその大事な人と使ったらどうなるんだ?」

「それはぁ〜〜秘密です♪」

「秘密ってね・・・・・・まあいい、受け取っとくよ」


流石に善意を無駄にする訳にはいかないので、とりあえずは受け取っとくことにした。というか、聞かないほうがいいだろう。


「ありがとうございました‼次はぜひ“孫策様”と一緒にいらっしゃって下さい‼」


呂藩と同じことを言われて顔を真っ赤にしながら俺は買い物を済ませて建業城へと引き返すのであった。




因みに後をつけていた雪蓮殿は・・・。


「ちょっ⁉め・・・冥琳⁉痛い痛い⁉」

「まったく・・・私が少し離れた隙に抜け出して・・・帰ったらみっちりお仕置きだな」

「だから耳を引っ張らないでー‼⁇」


仕事を抜け出していたから、追いかけて来た冥琳殿に耳を引っ張られながら連行されていった・・・・・・・・・。

建業に衝撃が走る。宣城が反旗を翻した山越と黄巾残党により占拠された。雪蓮は宣城奪還の為、孫権に軍を任せる。ライル達も別働隊として山越の陣地に強襲を仕掛ける。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[エイブラムス]

M1A2の砲火がコダマする。

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