第85話:New generation
終戦と次世代に向け、狼が駆け抜ける。
藜陽での決戦に勝利したのも束の間、敵総大将の袁紹は戦わずして妹3人を見捨てて鄴城へと逃げ出していた。
しかし連合軍の疲労も歪めず、素早い追撃は不可能の状態だった。
そこで俺はハンターキラーを率いて袁紹が逃げ込んだ鄴城へとハンヴィーを走らせていた。
「素早く行動し、袁紹に逃げられる前に対処するぞ‼」
『Hoooah!!』
「奴に逃げられたらもう追撃は不可能になる‼チャンスは一度きりだ‼」
奴が鄴城に逃げ込んだことは最大のチャンスでもあるが、同時に最後のチャンスでもある。兵力は皆無に等しい袁紹が鄴城へ逃げ込んだら逃亡するのに時間が掛かるが、万が一にでも逃亡を許したら周辺は混乱している。
そんな状態だと追撃は不可能になって、俺達の祈願は達成出来ない。
だから俺達はハンヴィーを使用した強襲で一気に鄴城へ殴り込み、脱出路を維持しつつ袁紹を拘束もしくは排除するのだ。
「ハンター2‼突入を開始しろ‼」
<了解‼突入します‼>
<こちらハンター3‼攻撃開始‼>
ハンター3が搭乗するハンヴィーのM134Dから7.62mm弾の雨が敵に降り注ぎ、城門前にいた衛兵を排除。
開けっ放しになった城門から内部にハンヴィーごと突入して少ししてから停車。
俺も助手席からM45をホルスターから抜いて近くにいた敵に発砲。降車するとM45からHK416+M26 MASSに切り替えて城内にいる敵部隊に発砲する。
「予定通りだ‼ハンター3は留まってハンヴィーを死守‼残りは突入して奴を探すぞ‼」
『了解‼』
そういうと敵襲を知らせる銅鑼が鳴り響く中、俺を先頭にハンター1とハンター2が後に続き、ハンター3はハンヴィーに留まってM134Dによる援護射撃を開始する。
敵はやはり数がかなり少なくなっているようであり、しかも交戦せずに逃げ出す始末だ。
俺達は交互支援で出現する敵を次々としとめる中、途中でハンター2と分かれて奴がいる可能性が一番高い玉座の間へと向かう。
「左の部屋から敵‼」
「排除しろ‼」
後方で俺をカバーしていたハンター1-2が素早くHK417 DMRⅡの照準を合わせて発砲。敵の額に命中して敵は壁にもたれかかりながら倒れる。すると出現した敵の後ろから悲鳴が聞こえたので照準を合わせながら伺う。
「動くな‼両手を頭の上に‼」
「ま・・・待ってくれ⁉殺さないでくれ‼」
銃口を向けながら敵に降伏を勧告する。すると文官の太った男は素直に両手を頭の上に置いて従う。
「袁紹は何処だ⁉言えば見逃してやる‼」
「ひぃ⁉・・・や・・・奴なら自分の部屋にいる‼」
「何処だ⁉」
俺はHK416のストックで軽く殴ると、倒れながら必死に命乞いをする敵文官。正直に言うと情けない。
「ぐわっ⁉な・・・殴らないでくれ・・・・・・この先の突き当たりの部屋だ‼」
「本当だろうな⁉」
「ほ・・・本当だ‼この逢紀の名前に誓う‼」
俺は名前を確認すると、烏巣で救出した張郃からの情報を思い出す。袁紹と同じく保身しか考えていなく、兵や民を蟻呼ばわりした汚ないクソッタレだ。
俺はHK416の銃口を外すと素早くM45を抜いた。
「そうか‼これは張郃からの礼だ‼」
「ま・・・待て⁉」
有無を言わせずこの野郎の額に45.ACP弾を撃ち込み、逢紀は絶命して音を立てながら廊下に倒れた。
「この野郎の言ったことは本当でしょうか?」
「ああ、あれは本当だろう。袁紹の命を掛けてもいい・・・ハンター1-1から全ハンター‼袁紹の位置を特定‼これより急行する‼」
<こちらハンター2-1、了解‼>
<ハンター3-1了解‼>
位置特定を報告すると再び一列になって廊下の突き当たりにあるとされる袁紹の自室へと向かう。
暫くして、逢紀が話した通りに突き当たりに部屋があり、他の扉とはあからさまに違う。俺達はそれぞれ左右に位置づき、HK416+M26 MASS、HK417 DMRⅡ、M27 IAR、HK416+M320A1を構える。
「突入する・・・・・・いいな?」
俺は全員の目を見る。フェイスマスクごしだが全員が同じことを考えているだろう。
「・・・孫呉と・・・・・・民と・・・・・・俺達の為に・・・」
『Semper fidelis‼‼』
俺達のモットーである言葉“Semper fidelis”を叫ぶと俺はM26 MASSを使用してドアノブを破壊。
扉を蹴破ると一気に突入する。
「コンタクト‼‼」
やはりいた。月殿に濡れ衣を着せて洛陽を脅かし、幽州に侵略して民と捕虜を虐殺して、更に私利私欲で民を苦しめていた愚者・・・・・・袁紹だ。
「な・・・なんですの⁉」
「動くな‼両手を頭の上に置いてその場に伏せろ‼」
「な・・・ゴミの分際で私に指図するのですの⁉私は帝ですのよ⁉」
「両手を頭の上に‼やるんだクソ野郎‼」
袁紹に降伏を勧告するが、奴は従うどころか未だに自分が帝だと言い放つ。
「もう一度いう‼両手を頭の上に置いてその場に伏せろ‼今すぐだ‼」
「お・・・お黙りなさいな‼こ・・・ここの私が貴方のようなクズに従う・・・ひ・・・必要なんてありませんことですのよ‼」
そうすると袁紹は鞘から派手で仕方がない剣を抜刀して構えるが、恐怖で震えている上に完全に逃げ腰だ。はっきり言って脅威にもならない。
だがこれ以上は時間を掛けたくない。
「最後の警告だ‼その場に伏せろ‼」
俺達は捕縛対象者に対しては三回まで警告する。その間に降伏するならよし。しないなら仕留めるだけだ。
だが袁紹はたとえ降伏したとしても連行した先にいる曹操に首を刎ねられるだろう。
少しだけの沈黙を破るかの如く、絶望の表情をした袁紹は半ばヤケになって声を挙げながら斬りかかって来た。
「わ・・・私は帝ですわ・・・・・・名族ですのよ・・・それなのに・・・あなたのようなゴミに負けはしないのですわぁあああ‼」
「中佐‼」
「構わん‼撃てぇ‼‼」
もはや逃がしはしない。俺の発砲命令で全員が一斉射撃で袁紹に発砲。袁紹の身体中に多数の銃弾が命中していき、袁紹は音を立てながら剣を手放して倒れた。
「撃ち方やめぇ‼」
射撃停止で全員が射撃をやめて新しいマガジンに交換する。確認したら俺はM45を構えながら慎重に歩み寄る。すると袁紹は微かにだがまだ生きていた。
「め・・・・・・名・・・族・・・・・・が・・・・・・ま・・・けは・・・」
「・・・お前が負けた理由は単純だ・・・・・・外道の道に踏み込んだ時点でお前は死んだようなものだ」
そういうと俺はM45の照準を袁紹の額に合わせて、トリガーを引いて発砲。この愚かで哀れな女にトドメを刺した。
袁紹殺害を完了させると俺は通信機で連絡を入れる。
「ウルヴァリンからオーバーロード」
<こちらオーバーロード。感度良好>
「報告する。タンゴダウン。繰り返す、タンゴダウンだ。袁紹は死んで、この戦いに終止符を打った」
<タンゴダウン確認。作戦終了。増援を送ります>
「頼む、ウルヴァリン out」
通信の向こうからタンゴダウンを聞いて歓声が挙がったのを聞きながら通信を終了させる。
袁紹が死んだことは瞬く間に全土に広がり、奴の首は斬り落とされ、見せしめとして槍に突き刺されて鄴城の城門前に晒されることになった。
この戦いは連合軍の勝利で幕を閉じ、袁紹軍が治めていた領地は全て事前に根回ししていた曹操軍が統治することになり、袁紹の遺産も半数が曹操軍に渡る。
俺達には攻城兵器全て、一刀達には黄河における貿易優先権と兵力を確保した。
袁紹を討ち取った俺には討逆将軍への昇格が決まり、正真正銘の英雄となった俺達は戦後処理が完了次第、すぐに呉への帰路に就いた。
そして、戦いが終結してから半年後の徐州の下邳城。俺はクラス“B”ブルードレスを着て一刀と桃香の部屋に来ていた。
「よく似てるじゃないか」
「えへへぇ〜♪可愛いなぁ〜♪」
「ライルさん、本当にわざわざ来てくれてありがとうございます」
寝台には桃香。その隣には腰にまで髪を伸ばして三つ編みポニーテールにした一刀。
そして彼女の腕の中にはスヤスヤと幸せそうに眠っている新しい命・・・・・・一刀と桃香の間に産まれた子供である。
なお、愛紗達は宴の準備で城を空けており、城下からは二人の子供誕生を祝う為に様々な祝いの品が届けられている。国全体がお祝い状態だった。
産まれて来た子供は男の子で、顔立ちは桃香似で目や口元は一刀と似ている赤毛が混ざった茶髪の男の子だ。
俺は赤ん坊の頬を軽く触れながら一刀に振り向く。
「それで一刀、この子の名前は?」
「はい、幼名は“阿斗”にしました。ね、桃香?」
「うん♪それでね、大きくなったら姓は劉で名は禅。字は公嗣にするんだよ♪」
「真名は?」
「ご主人様♪」
「うん、真名はこれです」
そういうと一刀はクラス“A”ホワイトドレスの胸ポケットから一枚の紙を取り出して、俺に渡す。そこに書かれていた名前は・・・・・・・・・。
「・・・“刀瑠(とーる/劉禅の真名)”・・・」
俺はその日の晩は宴に出席して戦争とは無縁の時間を過ごした。この後、覇道を突き進む曹操との戦いが待っている。
袁紹軍とは比べ物にならない程に苦戦するだろう。だが俺は祖国や民、更には仲間達の為に武器を取る。
だが今は、平穏の時間を噛み締めよう・・・・・・・・・・・・。
第二章“群雄割拠” fin
袁紹討伐から約1年、呉の中でも屈指の重鎮となったライル。彼が休暇を満喫している背後で雪蓮の姿があった。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
第三章:乱世の混沌
[ライルの日常生活]
ライルの平和な日常生活が明らかになる。