第84話:袁家討伐後編
魏の拳闘士、龍と共に舞い上がる。
三女の袁煕に続き四女の袁尚が孫策軍によって斬られた。これで袁紹軍の戦線は左右を抑えられ、袁家も残るは長女の袁紹と次女の袁譚のみとなる。
藜陽の中央線戦にはその次女である袁譚の軍勢と曹操軍が凌ぎを削っていた。
「突き進め‼奴等に魏武の強さを死をもって見せつけてやれ‼」
牙刀隊長は部下に檄を飛ばしつつ、斬りかかる敵を返り討ちにする。隊長の武は本当に素晴らしい。的確に相手の隙を見つけだし、豪の中に柔を交えた洗礼された武。
赤色の偃月刀がまるで真紅の閃光を描くように敵を裂き、束ねられた私と同じ銀髪が光を反射して見えるような感覚になる。
その間に敵が自分を討ち取る為に斬りかかってきたが、両腕に装着している手甲の閻王に氣を送り込み、そいつの懐に飛び込むと喉に一撃を食らわせる。
「隊長に遅れを取るな‼後に続けぇ‼」
『応っ‼』
「かぁ〜‼凪の奴、がんばっとるなぁ‼せやけどうち等も突き進むでぇ‼」
『ウラァアアアア‼』
「お前等もっと突っ込むのぉ‼その腐ったケツ引き締めてクソッタレな奴等にぶちこんでやるのー‼」
『サー・イエス・サー‼』
自分の部隊に続いて真桜と沙和の隊も周りにいる敵を次々と倒して行く。自分達にはそれぞれ200人ずつの兵が与えられ、真桜の隊は本来は工兵隊であるが地形的には攻城兵器などは使用できない。
しかし通常戦であっても充分に敵を駆逐できる程の実力は有している。
「凪‼左の奴等から掃討するぞ‼」
「はい‼突入します‼楽進隊続けぇ‼」
自分は命令すると同時に敵が固まっている辺りに飛び上がり、足に氣を集中させる。
「我が武器は拳・・・我が鎧はこの肉体・・・岩砕き、鋼も通さぬ硬気功・・・・・・拳に宿れば炎となり、四肢に満ちれば鋼となる・・・・・・飛べ‼我が内に燃える炎よ‼」
身体を回転させながら左足に氣弾を集中させ、それを一気に振り上げた。父が編み出し、自分が最も得意とする必殺技・・・。
「猛虎蹴撃‼‼」
放った猛虎蹴撃はしっかりと敵集団に直撃、周辺の敵を一掃した。敵は私の攻撃に怯んだのか、その場で足踏みしてしまった。しかし隊長がそれを見逃す筈が無かった。
「いいぞ凪‼よくやった‼」
「はっ・・・はい‼ありがとうございます‼」
「敵は怯んだ‼一気にいくぞ‼」
『応っ‼』
「全軍突撃‼我が漆黒の徐旗に続け‼」
『うぉおおおおお‼‼』
その勢いに身を任せ、出現する敵を縦横無尽に叩き潰す。
隊長は単独でも自分なんかは足元にも及ばない実力者で、華琳様や春蘭様達も認めている数少ないお方だ。
自分も隊長と共に向かってくる袁紹軍兵士を倒しながら、袁譚がいるとされる砦へと向かう。私達が中央を確保したら最後は劉備軍の北郷殿率いる部隊の出番になっている。
連合の中で機動力に跳んだ部隊だ。騎馬を活かして袁紹軍本陣へと雪崩れ込み、袁紹を討つ。その為に左右を抑えたのだ。
自分達は一気呵成に攻めたて、目標の砦の周囲にいた敵を制圧するとすぐに城門を真桜の螺旋槍で穴をあけ、自分の勇龍拳波でそれを広げたら砦内部に突入した。
「門が開いた‼今こそ袁譚を討ち取り、勝利へと邁進せよ‼」
『応っ‼』
自分達の後を直ぐに隊長が部隊を引き連れて砦内部に戸津乳していき、内部にいた袁紹軍と競り合いを開始するが、その中に剣を持った女がいた。
「何をしてらっしゃいますの⁉さっさと敵を片付けてしまいなさい‼」
部下達には無理やり戦わせ、自分は後ろで守られながら戦おうともしない卑怯者・・・髪型も顔も良く似ていたのですぐに分かった。
こいつが袁家次女の袁譚だと。
「隊長‼」
「委細承知‼ここは我等が食い止める‼その隙に凪が奴を討ち取れ‼」
「凪‼任せときぃ‼」
「凪ちゃん頑張るなの‼」
隊長達の声援を受け、袁譚目掛けて姿勢を低くしながら一気に駆け寄り、周りの護衛を先に片付ける。
敵兵は槍を突き出してきたが自分はそれを簡単に蹴り折り、頭蓋骨を粉砕させ、時には手刀で相手の心臓を貫いたりと、ものの数秒で制圧。
だが直後に袁譚が刺突を仕掛けてきた。
「私が・・・私があなたのような醜い方に負ける筈などありはしません‼」
自分は身体を横にして刺突してきた剣を両脇と背中で挟み込み、動けないようにしっかりと押さえ込んだ状態から一気に力を込めて、袁譚が持っていた剣を柄の部分から一気に粉砕。
「ひぃっ⁉」
「袁譚、お前の負けだ。潔く覚悟を決めろ」
自分は手刀の構えを取りながら袁譚に覚悟を決めさせる。一方で死にたくない奴は涙しながら必死に抵抗しようとする。
「お・・・お待ちなさい‼わ・・・私を殺めたらどうなるかお分かりですの⁉私が死んだらこの国は大損害を受けるのですよ⁉」
「・・・・・・そんな訳がないだろう?」
「い・・・いやぁあああ‼⁇」
最後の最後まで往生際が悪い。自分は有無を言わせずに手刀でこの女の首を刎ね、頭が無くなった身体からは大量の血が吹き出し、音を立てて地面に倒れる。
それを済ませると袁譚の首を手に取り、天高く掲げた。
「敵将袁家次女袁譚‼曹操様が配下、徐晃隊‼楽 文謙が討ち取ったぁ‼」
『うぉおおおおお‼‼』
周りからは部下達が歓声を挙げ、自分達の将が討たれたことで士気が地に落ちて、降伏する者と逃げ出す者と綺麗に分かれた。
「凪ぃ〜‼」
「凪ちゃ〜ん‼」
少ししてから手を振りながら真桜と沙和が駆け寄って、後ろから隊長が歩み寄ってきた。
「やったやん凪‼ごっつい手柄やで‼」
「おめでとうなの‼」
駆け寄って来た二人に抱きつかれ、勝利の賛美を受ける。そこへ隊長がすぐ側に歩んで来た。
「隊長・・・袁譚の首です」
「うむ、よくやったな。凪」
そういうと隊長は笑みを浮かべながら自分の頭に手を置き、軽く撫で始める。
「た・・・・・・隊長・・・」
「凪ぃ〜♪顔が真っ赤やでぇ〜♪」
「いいなぁ〜。沙和も隊長にナデナデして欲しいの〜♪」
「?」
自分の顔は恐らく真っ赤だろう。だが自分がなぜ真っ赤なのかは隊長は理解できないだろう。自分達が袁譚を討ち取った時点でこの戦場における袁紹軍の戦線は瓦解した。
その間に劉備軍の騎兵部隊が一気に袁紹軍本陣へと奇襲を仕掛け、袁紹が捕らえられたと思ったが・・・・・・。
「袁紹がいない?」
「ああ、俺達が乗り込んだ時には既にいなかった。戦闘中に自分だけ真っ先に逃げ出したと捕虜が言っていた」
袁紹は逃げ出していた。自分達はこれで戦いが終わると思っていたがそうは行かなかった。
「だけどあの馬鹿猿はどこ行っちゃったんだろ?」
「雪蓮殿、奴が逃げ出す先は一箇所しかありません」
「・・・・・・鄴城か」
ライル殿は軽く頷く。確かに奴に逃げ出せる場所はもはや鄴城以外に残されていない。
なにしろ反乱や暴動で袁紹に味方をする一団は無いに等しく、この藜陽で大量の捕虜を獲得して、袁紹には兵士は無くなったに等しい。
「だけどすぐには兵を動かせないわ。流石に皆を休ませないと」
「曹操殿、我等が行きましょう」
「ライル?」
「奴をこれ以上野放しにしているとなにしでかすか分からない・・・。ここは即行動が大事です」
ライル殿は即時行動を進言する。確かにこれ以上は危険。だったら直ぐにでも行動に移り、袁紹を討ち取る必要があるが、連合の疲労も歪めない。
しかしライル殿達なら可能な気がする。
「・・・いいわ」
「曹操殿?」
「しかし私達はここで軍を休ませる。袁紹追撃はあなた達に一任するけど、いいかしら?」
「了解です。雪蓮殿と冥琳殿もよろしいでしょうか?」
「構わないわ♪」
「うむ、確かに我等も疲労感が歪めないからな。ならばライル達に任せるしかないだろう」
「ありがとうございます。では、すぐに出撃しますので・・・」
ライル殿はそういうと連合軍本陣を後にして、暫くしてからライル殿達が使用していた鉄の車に乗り込んで、鄴城へと向かって行った・・・・・・・・・。
黎陽も連合軍の勝利で幕を閉じたが袁紹はいなかった。捕虜の情報で鄴城へライル率いるハンターキラーが急行する。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
第二章最終回
[New generation]
暴家滅亡後に新たな時代が始まる。