第81話:倉亭解放戦
袁紹軍占領下の倉亭へと向かう一刀達。御遣い達による救済が始まる。
袁紹軍による攻撃は連合軍の不動の防御を前に全て払い除けられ、当初30万もいた袁紹軍だが、度重なる敗戦や各地で発生した抵抗軍による抗戦、袁紹軍将兵達による反乱で次々と兵が失われていき、今や7万もいればまだマシだということになっていた。
最終目的地である鄴城に向けて連合軍は進軍を開始され、俺達劉備派遣軍は機動力を活かして即応部隊として、倉亭へと向かっていた。
「愛紗、倉亭まではまだ掛かるの?」
「いえ、この山を超えたら見えてくるはずです」
「せやけど袁紹のアホんだら共がどこにもおらへんなぁ。どないなっとるんや?」
「あの袁紹が策を講じるなんて考えられないわ。多分だけど将兵達が怖気づいて出てこないんだと思うわ」
それは言えてる。既に俺達も多数の捕虜を獲得して、軍備の増強を行なえた。もちろん希望者は暫くの捕虜生活を送ってもらって自分達の家に帰ってもらったり、他陣営に行きたいという者もいれば送り届ける。
因みに一番人気は曹操軍の陣営であり、捕虜の4割は既に曹操軍参加が決まっている。
「なあ、詠」
「なによ?」
「領土問題の事なんだけど、詠はどう考えてる?」
「青州や幽州の覇権のこと?」
「ああ、俺の考えだと・・・領土に関しては全て曹操が統治すると思うんだ」
「なあ、一刀。なんで分かるん?」
「俺達やライルさん達、それに孫策軍は別に領土目的や袁紹の遺産接収が目的じゃない。ただ純粋にあの女をこの世から消したい。それだけだ。だけど曹操の目的は計り知れないところがあるんだ。欲しい物は絶対に手に入れるって言い放った程だからね」
実を言うと俺やライルさん達には分かり切ったことだ。
何しろ正史で黄巾の残党が青州で跋扈した際に、曹操は土地や生活の場を与える条件で精強な軍勢“青州兵”を作り出している。
俺達にとってそれは脅威になるが、向こうは漢室に最も近い曹操。恐らくは荀彧や郭嘉、程昱辺りが根回しをしている筈だ。
「あんたのいう通り。それに今の私達に新しい領土なんて資金を締め付けるだけよ。だったら私たちは少しでも多くの兵力を吸収すればいい」
詠が考えた方針は兵力の確保。いずれは曹操軍が軍勢を南下させ、力による天下統一を狙い、それに備えた軍備増強を画策する。
いくら雑兵ばかりといっても訓練し直しさえできれば、幾分かはマシになるだろう。
「しかしご主人様。曹操殿は確かに脅威になるでしょうが・・・」
「愛紗?」
「孫呉も侮れないかと・・・」
「なんやぁ?愛紗はライル達が裏切るんゆうんかいな?」
「そうはいっていない。私もライルが裏切るなどとは思ってはいない。だがあの軍勢が敵に回るとなったらと考えてな」
「・・・まあそうやな。もしライル等が敵になりよったら、正直ゆうて勝てる自信は無いでぇ」
確かに愛紗や霞の言うことにも一理ある。ライルさん達には戦車や榴弾砲、攻撃ヘリがある上に、アメリカ海兵隊最大の武器になる兵士。
更にライルさんが将軍を務める知識を注ぎ込んだ孫呉海兵隊。加えて総大将の孫策も恋を超える実力を持ってる上に美周嬢こと周瑜、漢で一番の実力を有した孫呉水軍だ。
現段階でもし敵になったらまず勝てないだろう。というよりも本当に現段階では孫呉による天下統一も可能だろうが、孫策が前に言っていた。
“私が戦う理由は民や家族を守る為。だから本音を言ったら天下なんて興味も無い”。
その言葉に偽りは見当たらなかった。恐らくは真実だろう。
そう考えていると前方に馬に乗った味方がやって来た。軽歩兵の装備を身に纏った斥候部隊の兵士だ。
「報告致します‼倉亭にて火の手が挙がっております‼」
「火の手やて⁉」
「まさか・・・袁紹軍の奴等‼」
「周辺には袁紹軍の牙門旗‼倉亭に暮らしていた民が次々と奴等の手に‼」
「くそっ⁉外道が‼愛紗と霞は一緒に‼騎馬隊を連れて急行するぞ‼」
「御意‼」
「任せときぃ‼」
「詠は後続部隊の指揮を任せる‼到着したら俺達の動きに併せて支援を‼」
「わかってるわ‼」
「さあ皆いこう‼民を救い出すんだ‼」
『応っ‼』
そう指示すると俺は乗っている愛馬“飛燕”を走らせ、倉亭へと急行する。
倉亭の集落からは確かに火の手が挙がっていた。遠くには民が備蓄したとされる食料を運び出す袁紹軍の姿。更に斬り捨てられた老人や村人の死体。
中には両手両足を縛られ、慰め者にされた後に腹を斬られて命を落とした女性の死体もあった。
俺は怒り浸透の状態で神龍双牙を抜刀すると、敵兵目掛けて突入を開始する。
「突っ込む‼霞は回り込んで撹乱を‼」
「了解や‼」
「ご主人様に続けぇ‼」
やがて集落に突入して敵を斬り倒す。袁紹軍は俺達が来るなんて予想すらしていなかったようであり、略奪した品をその場に投げ捨てると逃げ出そうとしていた。
「一人も逃がすな‼奴等に自分達がやった重さを思い知らせてやるのだ‼」
俺の側で走らせる愛紗も青龍偃月刀を握りしめ、逃げ出す敵兵の背中を斬り倒す。義の刃とも軍神とも呼ばれている彼女の実力は恋に次ぐもので、馬から飛び降りたと同時に次々と倒していく。
俺も逃げ出そうとしていた一団の前に立ち塞がると剣先を殺気と共に向けた。
「このクソッタレが・・・死ぬ覚悟は出来てるだろうな?」
「へっ・・・・・・へん‼テメエ見たいな優男にま・・・負ける筈がねえんだよ‼やっちまえ‼」
完全にひるんでいる状態で10人ほどが剣を片手に突っ込んで来た。俺は小さく溜息を吐くと神龍双牙を繋げて薙刀にすると、それを数回ほど回転させて構える。
「北郷流二刀心眼術・・・“皐月”‼」
北郷流二刀心眼術二の大刀“皐月”をお見舞いする。薙刀にした神龍双牙を縦横無尽に回転させ、足と手首の向き次第で予測不可能な剣裁きを使える対同時攻撃手段である。
「ふ・・・ひぃいいいい‼??」
「逃がしは・・・しない‼」
僅か2秒足らずで10人を斬り裂き、指示した敵はその光景に恐怖を抱き、槍を捨てて逃げ出したがそうはいかない。
俺は倒した敵兵の槍を広い、それを思いっきり投げた。ほぼ垂直で飛来した槍は敵兵の首を貫通して、首を吹き飛ばした。
「愛紗‼民間人を安全な場所に避難させて‼俺は敵を片付ける‼」
「はい‼ご主人様‼お気をつけて‼」
「愛紗も気をつけてくれ‼軽歩兵隊は俺に続け‼街の中心地に向かうぞ‼」
『応っ‼』
俺は愛紗に民を任せると軽歩兵100人を連れて集落の中心地へと急行する。
戦闘開始から15分が経過した頃に、詠が指揮する後続部隊が到着。詠は騎兵隊を駆使して敵を追いかけ回し、やがて丘に展開していた弓兵と弩兵が射程距離に飛び込んで来た敵を次々と射抜いていく。
民間人の退避が完了させると、後方に回り込んだ霞率いる騎馬隊が敵の退路を遮断。そこから敵を締め上げて殲滅。敵は完全に戦意を失い、降伏してくる者も出て来たが、そんな都合がいい場面などない。俺はもちろん奴らを徹底的に殲滅させる為に再び構える。
戦闘開始から約1時間。展開していた敵部隊は完全に殲滅され、解放した倉亭と負傷した民を到着した曹操軍に任せ、再び前進する。目指すは最終目標の鄴・・・・・・。
官渡の戦いは連合軍の完勝で幕を降ろした。袁紹軍は冀州の藜陽に退却。そこに全軍を集結させて決戦の構えを見せる。
連合軍も万全な状態で決戦に挑む。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[袁家討伐]
迷家の命運が尽きようとしている。
第3回キャラクター投票運動部編
第1位:凪
・あんな後輩が欲しい‼
・何事も一生懸命で、失敗した時に見せる恥ずかしいリアクションが可愛すぎる‼
・後輩だけではなく、彼女として欲しい。
第2位:翠
・一緒にいると元気になれそう‼
・信じられない失敗をして涙目で帰ってきたら抱きしめてあげたい。
第3位:蒲公英
・元気を分けてくれそう。
・怒れない悪戯でみんなの妹になって欲しい‼
以上になります。皆様のご投票、大変感謝致します。次回も学園物になりますので、是非ともご参加下さいませ。