第80話:食いしん坊と料理少女
食事は古今東西、常に重要。
ハンター3による影ながらの活躍で連合軍は無事に黄河を渡河した。
袁紹軍はハンター3による狙撃と連合軍を前に撤退していき、連合軍も侵攻部隊の渡河完了まで川岸で陣を張る。
俺達は中心の孫策軍陣地の前方に布陣して、袁紹軍の反撃に備える。現に袁紹軍は既に4回、反撃してきているが俺達の銃撃や阻止砲撃、更に機動力を活かした一刀、愛紗、霞達による奇襲。
更に徐晃と夏侯惇、夏侯淵達による猛追で殆ど損害を発生させず全て撃退した。そして今日も袁紹軍による5回目の反撃を防ぎ、共に出陣した一刀と共に俺達の陣にいた。
「ふぃ〜‼食べた食べた‼」
「満足してくれたようだな?」
戻ってきた時間帯がちょうど昼飯時だったので、折角だから一刀と共に食事をした。
戦地で重要視されている食事。例え優秀な兵士や軍隊であっても温かくて栄養がある食事を摂らなければ力が発揮できない。
アメリカ海兵隊でも戦地で充分な食事が摂れるようにCT(コンテナ化キッチン)を使用している。俺達もそれを採用しているのだ。
内部に調理台や配膳用テーブル、グリドル、配膳用キャビネット、寸胴加熱装置、オーブン、トレッチラックヒーター、浄水装置を備え、1日3食の温かい食事を最大800食分供給できる能力を持ち、最大で3日間のフル稼働が可能だ。ウルフパックでは軍に入隊する前に一流ホテルにいた部下もいて、その実力は味が示していた。
知識さえあれば様々な料理を作れるが、欠点として移動にトラクターが必要であり、CTの隣には移動用のM1083/M1088戦術級中型軍用車両が停車している。
「けど本当に美味しかったですよ。まるで一流ホテルみたいな美味しさだ」
「ああ、料理長がホテルで実際に料理長をしていてな。ミシュランで星2つを貰ったらしい」
「どうりで・・・・・・」
本当に美味だった。今日のメニューだが定番のチリビーンズに飯類のジャンバラヤ、スープ類のフィッシュチャウダー、肉料理のミートローフ、サラダ類のコールスロー、デザートのアップルパイだ。
かなりガッツリとくる組み合わせだがバランスよく栄養を摂取出来る。
因みに一番人気が高いのが日本料理であり、一週間に一回は和食が出る。その際の料理長は南郷だ。明日がその和食が出る日なので楽しみである。
「だけど鈴々や恋がいたら平らげてしまいそうですね」
「いくらなんでも2人だけで500人分を平らげるのは無理があるだろう・・・・・・多分」
「そうですよね・・・・・・多分」
本音を言えばあり得ないことはない。
「それよりライルさん」
「なんだ?」
「さっきから気になってたんですが・・・・・・」
「「(ジィー)」」
頼むから触れずにいてほしかった。先程から机に隠れながらこちらを見ている少女が2人。1人は桃の髪を2本の春巻きみたいに束ねた
活発な印象が強い女の子で、もう1人は緑色の髪に青い大きなリボンを付けた少し天然そうな少女だ。
俺は最後まで気が付かないふりをしようとしていたのに、一刀が指摘したことで気にせざる得なくなってしまった。
「ええっと・・・・・・な・・・なにかな?」
「ふえっ⁉気付いてた⁉」
「いや・・・初めから気が付いてたからね・・・一応は言っておくけど・・・・・・」
「ご・・・ごめんなさい」
「いいよ・・・それより、何か用かなお嬢ちゃん達?」
「ぶぅ〜‼ボク達はお嬢ちゃんじゃないやい‼許褚だ許褚‼」
「「そうかそうか。許褚っていうのか・・・許褚⁉」」
「うん、そうだよ。そんでこっちが琉琉」
「は・・・初めまして。典韋といいます」
「「典韋⁉」」
なんというか・・・久々に驚かされた。
「ええっと・・・許褚ちゃん?」
「なに?」
「確認がてら聞きたいんだけど・・・・・・字は仲康?」
「うん‼そうだよ‼」
元気一杯に答えられて、間違い無さそうだ。
「ねえねえ、それよりさっきからなに食べてたの?」
「なにって・・・俺の国の料理だが・・・」
「季衣(きい/許褚の真名)、いきなりじゃいけないよ。まだこの人達の名前も知らないんだから・・・」
「う〜ん・・・そうだね」
「はぁ・・・・・・俺は孫呉海兵隊指揮官のライルだ」
「俺は北郷 一刀。劉備軍所属だよ」
「へえー。兄ちゃん達がそうなんだ‼」
「に・・・兄ちゃん?」
「うん‼」
なんというか・・・まるで鈴々のような感覚だ。というよりも人懐っこい妹というポジションだろう。
「ねえねえライル兄ちゃん‼ボクも食べたいよ」
「なんだ、腹が減ってたのか?」
「そうなんだよね。ボクと琉琉って華琳様の親衛隊だからさ〜。さっきまで春蘭様と一緒に敵をやっつけにいってたから、お腹ペコペコなんだよ」
「夏侯惇と・・・・・・分かったよ。持って来てやる」
「やったぁ〜‼」
「典韋ちゃんも食べるか?」
「あ・・・はい・・・・・・だけど、少しお願いが・・・・・・」
典韋はその場でお辞儀をする。
「あの・・・無理じゃなかったら、その・・・厨房を見せて欲しいんです」
「厨房を・・・・・・なぜ?」
「はい、私はよく季衣や華琳様の食事を用意するので、ちょっと興味が・・・」
だから彼女の腕に微かだが火傷の跡があるのか・・・・・・。おそらく中華鍋を振るった時に油でも掛かったのだろう。料理人なら誰でも必ずなることだ。
しかし典韋は礼儀正しい性格をしている。なんだか本当に妹のような感覚を放ち出す2人だ。
俺は軽く微笑むと2人の頭を撫でながら答えた。
「いいよ。折角だから見ていきなさい」
「本当に⁉」
「ああ」
「ありがとうございます‼兄様‼」
「じゃあ、俺は自分の陣地に戻ります。ご馳走様でした」
「ああ、また一緒に食べようぜ」
そういうと一刀は紙トレーを所定の場所に捨てると自分の陣地に戻っていく。この後に2人を案内したが、何かと大変だった。
典韋は見たこともない調理器具や食材、調味料に興味津々であり、許褚もゆうに20人前以上は軽く平らげた。
更に訪れた曹操や夏侯惇や夏侯淵、楽進、于禁、李典にもご馳走する羽目になり、意外にも大食いだったのでゆうに8人だけで50人前は平らげられてしまった・・・・・・・・・。
官渡の戦いはもはや決着が着きつつあった。袁紹軍内部は度重なる敗戦で総兵力を次々と失い、冀州、青州、幽州各地でレジスタンスによる抵抗や将兵達による反乱で、指揮系統は壊滅。しかし現実を見ない袁紹は民間人が残る倉亭に軍を進めた。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[倉亭解放戦]
劉備軍による民間人救出が開始される。