第79話:狙撃
大口径の銃弾が飛来していく。
黄河を挟んで両軍が渡河の準備を薦める中、ハンター3は冥琳殿と中佐の指示に従って、袁紹軍の準備を抑制する為、4人で対岸に渡った。
袁紹軍陣地の東側にある山。ここに俺達がいるが、奴等は絶対に発見出来ないだろう。何故なら1,800mも離れている上に、携行している50口径アンチマテリアルライフルのM107A1バレットには迷彩処置が施され、俺達もスナイパーの必需品である偽装用装備のギリースーツに身に纏い、プローン姿勢で身を潜めていたからだ。
この俺、グルック・サイモン少尉はM107A1のスコープを覗き込みながら、目標となるターゲットを探す。
「ハンター3-3、そっちになにか動きはないか?」
<伝令らしき敵の動き以外は見当たりません>
俺達がいる場所から更に北へ500mほど進んだ場所にいるハンター3-3とハンター3-4も同じようにM107A1で敵陣を監視している。
確かにやけに敵の動きが活発になっている。恐らくは何か企んでいるのだろう。
「・・・やけに騒がしいな」
「奴等パーティーの準備でもしてんだろ?」
「ぶっ潰してやりたいな」
「中佐達の渡河作戦には潰せるさ」
「ああ、おったまげるだろう<少尉、右側の山。吹き溜まりにある付近を見て下さい。こちらからではよく確認出来ません>了解、確認する」
ハンター3-3からの報告で指定された箇所を調べる。隣にいるスポッターを務めるハンター3-2も同様に確認する。
「見えたか?」
「・・・・・・3-3の言う通りだ。6名を確認・・・中央セクター・・・700m・・・西の風・・・2ノット・・・4名が武装している」
「残り2名は民間人か?」
<大方、略奪でもするつもりでしょう>
「ゴキブリ野郎が・・・・・・始末してやる」
奴等は正規軍としての誇りを持っていない。やっているのはそこら辺にいる賊と変わらない。俺はスコープのレティクルを調整して、風向きや高低差、気温、湿度等を計算して、中心をほんの少しだけ敵兵の頭部右側にずらす。
「どいつからやる?」
「民間人に一番近い奴から仕留める・・・野郎・・・・・・女に手を出しやがった」
「了解、片付けてやれ」
そういうと俺は息を吸い込んだら吐き出さず、呼吸の際の筋肉の動きを封じて、姿勢を落ち着かせ、M107A1のトリガーを引いた。
撃ち出された12.7mm弾は寸分の狂いも無く、照準を合わせた敵兵の頭部を粉砕した。
敵兵と民間人はなにが起こったのか理解出来ず、ただ頭が無くなった死体を見ていた。
「ナイスショット」
「槍を持った間抜けヅラを片付ける」
次にすぐそばにいた槍兵に照準を合わせ、トリガーを引いた。すると弾丸はしっかりと同じようにヘッドショットを決めた。
「いいぞ、ど真ん中だ」
<少尉、残りが流石に逃げ出しました>
「どっちか狙えるか?」
<槍兵を仕留めます>
「OKだ。軽歩兵は任せろ」
ハンター3-3に1人を任せ、俺は残った軽歩兵に照準を合わせてトリガーを引く。流石にヘッドショットではないが、それでも胴体に命中して、敵の身体を真っ二つにした。
<ナイスショット>
「民間人はどうした?」
「・・・逃げ出したようだ」
<なんかすまない気分ですね>
「当面は夢に出るだろうな」
確かに目の前で頭が吹っ飛んだのだ。この時代ではまずない現象で、下手をすれば・・・いや、確実にトラウマになるだろう。
「グルック、お客さんだ。20名以上」
その方角を見ると馬に乗った敵兵が接近していた。しかし俺達を探しているようではないようで、方角的に敵陣に向かっているのだろう。
「やり過ごせ。動かなければ気付かれはしない」
「了解」
流石に数が多いのでやり過ごすことにしたが、万一に備えてMP7A1の用意をする。バレットを使用するには距離が近すぎる。交戦になったとしてもM107A1と同じようにサプレッサーを装着しているから、敵陣にいる連中には気付かれたりはしないだろう。
敵兵はこちらに気付くそぶりを見せないまま、敵陣に向かって行った。
「脅かしやがって・・・」
「グルック、別の動きだ。丘の上にある山道」
「確認した・・・・・・大部隊だな。ハンター3-3。確認出来たか?」
<了解。こちらでも確認しました。敵の増援ですかね?>
「そうだろう。牙門旗は・・・・・・沮だが・・・誰だ?」
「詳しいのはいないからな・・・先頭にいる踏ん反り返った奴がそうだろう。しかしなんで輿に?」
「俺に聞くな。だがなんだか腹立つな」
「仕留めるか?」
「当たり前だ。距離は・・・・・・1,200ってところか」
「ああ、風向きに変化はないが、強くなっている。風速はおよそ5だ」
「OK」
情報を基に微調整を行ない、レティクルを敵の頭部に合わせる。
準備が整ったら俺は深呼吸して、トリガーを引いたが、微かに下にそれて、担ぎ手の頭部に命中した。
「ダメだ、下に逸れた」
「任せろ、これで終わりだ」
地面に転んで伏せた状態になった敵将に合わせると再び発砲。次は若干上に逸れたが、それでも目標の頭頂部を吹き飛ばし、脳を辺りにぶちまけた。
それを見た敵兵は次々と逃げ出し始める。ひとまずは増援到着阻止といったところだろう。
<ナイスキルです、少尉>
「ありがとう、夜になったら場所を変えるぞ。流石にここはヤバくなりそうだ」
そういって夜になるのを待ち、山の頂上付近へと場所を変えて、再び敵陣の偵察と監視を続行した。
それから2日後、開始された連合軍による渡河作戦は大成功になり、ひとえにハンター3の地道な活躍がそこにはあった・・・・・・。
渡河作戦は大成功に終わった。後は敵本陣目掛けて侵攻するだけだが、その前に兵達を休ませる。
ライルと一刀が食事をしている中、2人の少女が歩いてきた。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[.食いしん坊と料理少女]
持ってきたMREも残りわずか。