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第78話:赤兎馬

陣地で休息を執るライル。そこに曹操が訪ねて来た。

連合軍の大反抗作戦で白馬を占領した俺達は補給と休息を行う為に、完全制圧して補給地として再起動した烏巣に駐留していた。

破壊した兵糧の残骸や袁紹軍兵士の焼死体は既に取り除かれ、内部には既に物資が集められていた。

俺達は孫策軍の陣営で身体を休めていた。


「美味いなぁ」

「ええ、全くです」

「たまにはコーヒーも悪くありませんね」

「俺は毎日飲んでるがな」

「だから中佐の執務室は豆の臭いがするんですか・・・・・・」


これをいうのもなんだが、俺の執務室兼自室の一画にはコーヒーメーカーと複数の瓶に入ったコーヒー豆が置かれており、遠征前に訪れて来た冥琳殿に注意されたことがある。

群狼隊陣地の一画で俺と南郷、更に南郷を兄と呼ぶポーの3人でコーヒーを飲んでいた。


「おい、ライル」

「よお、アレックス。どうした?」

「お前にお客さんだよ」

「客・・・誰だ?」

「直接会えば分かる・・・どうぞ」


客が来たと報告したアレックスは直ぐに俺たちがいるテント入り口の右側に直立不動で敬礼をする。

そこに入ってきた人物達を見て俺達も慌てて立ち上がって敬礼をする。


「あら?・・・邪魔だったかしら?」


何しろ入ってきたのは曹操に徐晃、更に曹操と顔が似ているが、俺より少し身長が小さいくらいの長身で黒のVネックノースリーブにホットパンツ、黒のロングブーツというなんとも大胆な格好で、金髪のショートヘアをした女性がいた。

どうでもいいが、その服装に雪蓮殿並のバストは狙っているのか?


「楽にしてくれていいわよ」

「どうかなさいましたでしょうか?」

「ええ、あなたに用があって来たのよライル」

「自分に?」

「ええ、悪いんだけれど一緒に来てくれないかしら?」

「それは構いませんが・・・そちらの女性は?」

「そうだったわね、愛琳」

「あいよ。初めましてだなライルさん。あたいは曹洪。字は子廉ってんだ。よろしくな」


だから顔が似ているのか・・・・・・。



「孫呉海兵隊指揮官のライルだ。部下の南郷とポー」

「副官の1人をしております南郷 武久大尉であります」

「輸送隊所属のポー・リーチェン曹長であります」


ハンターキラーという訳には行かないので、機密保持の為に普段は輸送隊所属ということになっている。


「曹洪殿。今は要件を先に・・・」

「分かってるって・・・相変わらず牙刀は固いなぁ♪」

「愛琳(あいりん/曹洪の真名)」

「あいよ華琳」

「それで、来てくれるわよね?」

「・・・・・・分かりました。お供します」


そう返答すると俺は曹操と共にテントを後にして移動する。




3人の案内で連れてこられたのは少し先に行った所にある曹操軍陣地。そこにある軍馬の馬小屋だ。餌の枯芝に馬特有の臭いが充満している。


「なぜ馬小屋に?」

「いいからついて来なさい。見せたい物があるから」


そう言われながら後に続くと、馬小屋の一番奥にいた他の馬とは明らかに違う馬に目を奪われた。


血のような深紅の肌。烈火の如く赤髪。更に見るもの全てを震わせるような眼。

三國志演義で“鬼神”呂布と“軍神”関羽にしか従わなかったとされ、最後はそれを表すかのように食べることを拒み、自ら餓死を選んだとされる獰猛な馬・・・・・・。


「・・・赤兎馬」

「赤兎馬?」

「ライル殿、この馬をご存知なのか?」

「ええ・・・・・・まあ・・・」


どうやらこの世界では赤兎馬とは呼ばないようだ。まあ仕方がない。赤兎馬の伝説は賛否両論と別れており、本当に空想上の生き物とも、血のように赤い汗をかく汗血馬とも言われている。しかしそれは分かるがなぜここに連れてこられたのかが理解出来ない。


「この馬はね、反董卓連合を組む少し前に旅商人から受け取った馬なんだけど、気性が荒くて誰にも従わない暴れ馬よ」

「気性が・・・・・・荒い?」

「そう。だから私はもちろん、夏侯惇や夏侯淵、この二人でさえも扱えなかった程のね」

「しかも春蘭は斬り殺そうとしたほどにね♪」


曹洪は笑ってはいるが、かなり無理がある笑方だ。恐らくは何か派手な落馬でもしてトラウマになっているのだろう。

余計な検索は諦めて、改めて赤兎馬の眼を見る。


「・・・・・・いい眼をしている」

「それでライル、あなたって馬に乗ったことはある?」

「小さい時にはよく乗っていました・・・・・・それが?」

「そう・・・・・・牙刀、愛琳」

「御意」

「あいよ」


二人は何かを悟り、赤兎馬を連れて外に出る。俺も曹操に連れられて同じように馬小屋の外に出た。


「曹操殿・・・なにを?」

「ライル。あなた、この馬に乗ってみたくない?」

「・・・・・・・・・・・・」

「はぁ・・・その沈黙は答えているようなものよ」


俺の沈黙に飽きれながらもそう口にする曹操。しかし本音をいえば乗ってみたい。何しろ呂布と関羽にしか懐かなかった名馬だ。しかもあの馬みたいなじゃじゃ馬なら尚更だ。


俺は無言で頷き、赤兎馬に跨って手綱を手にした瞬間、赤兎馬が暴れ出した。辺りに積まれていた木箱を蹴り倒し、木製の壁は難なく蹴破られる。


「くっ⁉」


こいつはあからさまに俺を試している。


暴れて俺を降り落とそうとするが、手綱をしっかりと握り、足に力をいれて踏ん張る。その途中で被っていた野戦帽を落としたが、恐らくは踏まれただろう。だが気にする余裕などありはしない。


俺は確かにハイスクールまで乗馬をしていたが、それは競馬や牧畜などで使用されるアメリカンクォーターホースだ。


恐らくは数分の時間が経過しただろう。俺は若干の興奮状態になっていたが、馬はようやくおとなしくなった。暴れる様子も見られない。


「はぁ・・・はぁ・・・」

「まさか・・・・・・」

「すごい・・・あのじゃじゃ馬を・・・」

「・・・・・・・・・」


俺は息を上げながは周囲を見渡す。そこには驚きを隠せない曹操、徐晃、曹洪が見えた。


「・・・曹操殿」

「走ってみたいのね?いいわ。あなたなら乗りこなせると思うわ」

「ありがとうございます・・・・・・・・・ハァ‼」


許可をもらうと俺は赤兎馬を走らせる。ハイスクール時代に乗っていたアメリカンクォーターホースが赤子に思えるような早さだ。

正史でも一日で千里を駆けると言われ、希代の名馬とも呼ばれている。


(凄い・・・風になった気分というレベルじゃない‼俺がこいつになった気分だ‼)


こいつの考えや気持ちが手綱を通じて伝わってくる感覚がする。それは本当に一心同体になった気分だ。反対に赤兎馬も俺の考える動きを的確に実行して駆け巡る。

そして暫く走らせて、興奮も冷めぬ状態で曹操の下に戻って来た。


「曹操殿‼こいつは素晴らしい名馬だ‼」

「随分と気に入ったようね?」

「ええ‼こんな名馬は生まれて初めてだ‼」


本当に素晴らしい名馬だ。しかも曹操にも懐かなかった馬に俺は乗れた。俺は馬を降りて首を数回撫でる。


「曹操殿、こんな素晴らしい名馬に乗せて頂き、本当にありがとうございます」


俺が手綱を渡そうとした瞬間、彼女はそれを制した。


「この子はあなたに託すわ」

「俺に?」

「ええ、残念だけれど、私の陣営には乗りこなせる者はいないわ。それにこの子もあなたと一緒に行きたいみたいだし」


そういうと赤兎馬を見た。確かに瞳を通して俺に訴えかけて来ているように感じた。


“相棒”と・・・。


俺は暫く考えて、笑みを浮かべると手綱を左手で握りしめながら、曹操に踵を鳴らして最敬礼をする。


「ありがとうございます‼喜んでお受け致します‼」

「大事にしてあげなさい。・・・・・・それとライル」

「何でしょう?」

「あなた・・・・・・私の処に来ないかしら?」


その言葉に俺は再び冷静になる。曹操からの勧誘。しかしそれは祖国への裏切りになる。俺は笑みのままで首を横に振った。


「・・・それは出来ません」

「どうして?」

「自分は孫呉に忠誠を誓った身・・・・・・孫策殿達や仲間を裏切りたくはありませんし、1人の軍人としても志を貫き通したいのです」

「・・・・・・そう・・・残念ね」

「しかし、お気持ちだけはしっかりとお受け致しました」

「分かったわ。今回のところは下がるけど、これだけは覚えておきなさい。私は欲しいものがあれば必ず手に入れるわ‼だから覚悟しておくことね」

「・・・Thank you.Cao Cao・・・」


そういうと俺は赤兎馬を走らせて自分の陣地へと戻って行った。そして俺に出来た新たな相棒・・・・・・赤兎馬に乗って戻ってきた俺を見てアレックス達は驚きを隠せずにいた。

そしてこいつの新しい名前を直ぐに考えた。




“スレイブニル”と・・・・・・・・・。

新たな相棒であるスレイブニルを手に入れたライル。一方で連合軍による黄河渡河作戦と決行された。

ライルもハンター1を率いて対岸に先行する。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[狙撃]

狼の正確無比な攻撃が静かに始まる。

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