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第67話:知力

官渡に集った群雄達。英雄と称される者達の対話が始まる。

案内に来た徐晃殿の案内で本陣に案内された俺と雪蓮殿と冥琳殿。一刀に軍師の詠と副将の愛紗。

因みに桃香達は徐州に残っている。

理由としては二つあり、袁紹軍の別働隊が再び攻め込んでくる可能性があり、それらに備えた手段。

そしてもう一つは桃香本人が妊婦だからだ。


それに加えて正史でも実際に参加していた愛紗や詠、霞の3人と兵士2,000名を連れて来ているみたいだ。

本来なら鈴々と星も参加していたが、今回は桃香の護衛に残っている。仕方がないことだ。


違いがあるとすれば官渡の戦いで劉備軍は徐州を追われて袁紹の下に身を寄せていた。

最も、袁紹が曹操軍に客将として身を寄せていた関羽を見掛けて劉備達を捕らえようとして逃げ延び、荊州の劉表に匿ってもらったとされる。

徐晃殿に案内されて、俺達は本陣の天幕に到着した。


「失礼致します。孫策軍及び劉備軍の方々をお連れ致しました」

「ありがとう牙刀。中に入れてちょうだい」

「はっ。・・・どうぞお入りください」


徐晃殿に勧められ、俺達も天幕の中に入って行く。その直後に俺達に視線が集中した。天幕の中には既に他の陣営からの大将が集まっていた。特に一番奥にいる金髪の少女の視線が強烈だ。


左右に虎牢関で俺と一騎打ちをした夏侯惇に妹の夏侯淵、更に猫耳を思わせるカチューシャをした少女がいるのだから、彼女こそが乱世の奸雄で知られる曹操だろう。


「久しぶりじゃない孫策」

「あなたもね、曹操」


2人は簡単に笑顔で挨拶はするが、目が笑っていない。むしろその笑顔に恐怖を抱く。


「北郷もよく来てくれたわ。関羽もね」

「ああ、袁紹の野郎が許せなくてね。力を貸すよ」

「曹操殿。この節は世話になった」

「あら、お礼なら貴女が来てくれたらいいわよ♪」

「前にもお伝え致したが、私はご主人様や桃香様の義の刃。降ることなどありはしない」

「そう、残念ね。・・・・・・そして、そっちの男が噂のライルね?」


曹操は一刀達にも挨拶をすると、待ってましたと言わんばかりに俺の事を品定めの如く見てくる。何だか知らないがあまりいい気分では無い。一個人としても尊敬している曹操から見られているのだ。落ち着く訳が無い。

しかし何とか平常心を保ち続け、彼女の前で踵を鳴らして敬礼をする。


「お初にお目に掛かります曹操殿。自分は孫策様配下、孫呉海兵隊司令ライル・L・ブレイドであります」

「直接会うのは初めてね。私が曹 孟徳。今回の連合軍総大将で、魏を治める魏王よ」

「名高い曹操殿とお会いで来て嬉しく思っております。その節は直筆の書状まで頂き、感謝致します」

「ねえライル、いつの間に手紙のやりとりをしたの?」

「洛陽を脱出して傭兵として活動していた時期であります。ちょうど孫策様が訪れる4日ほど前に・・・・・・」

「ブー‼私もライルからの恋文が欲しい〜」

「なっ⁉ライル、貴様⁉華琳様を誑かすつもりだったのか⁉」


雪蓮殿の冗談を真に受けて夏侯惇が物凄い剣幕で詰め寄って来た。


「ちょ⁉・・・落ち着け夏侯惇‼雪蓮殿も達の悪い冗談はやめてください‼」

「だって〜、本当のことなんだも〜ん♪」

「だから冗談はやめてください‼曹操殿もご説明を‼」

「あら、てっきり私は閨の誘いかと思ってたわ♪」

「あなたも何を言ってるんですか⁉」

「ライル貴様ぁ‼そこに直れ‼首を叩き斬ってやる‼」

「お前も武器を振り回すな⁉全部根も葉もない嘘だ‼この2人の冗談だ‼」


・・・・・・なんだ・・・この状況は・・・。

俺は何とか冥琳殿と一刀の助け舟に救われ、からかっていた雪蓮殿と曹操殿は満足した笑みで椅子に座る。

というか曹操殿がここまでドSだとは予想すらしていなかった。


そんなこんなでようやく軍議が開始されることになったが、既に俺は疲れ果てていた。


「さて、本来なら自己紹介をするのが正しい手順だけれども、以前の連合の時の面子と殆ど変わらないから省かせてもらうわ。早速だけれども軍議を始める」


曹操殿が仕切ると全員が中央の机の上に敷かれている地図に視線を移す。

地図にはここ官渡から袁紹軍の本陣がある鄴城を挟み、烏巣、白馬、延津、原武の位置が記されていたが、相変わらず雑な地図だ。

しかしこれでもこの時代ならかなり正確な地図なのだろう。


「袁紹は既に鄴城から大軍勢を出陣させてここ官渡に向かってるらしいわ。これまで私の部下が調べた結果、敵の数は10万から12万とされるわ」

「12万・・・・・・随分と集めれたものね」

「大方、しらみつぶしで各集落を脅迫し回ったのでしょう。徐州を攻め込んだ兵も子供や老人が多かったほどです」

「相変わらず解せないわね・・・そんな奴が帝を名乗るなんて、猿が王冠を被るようなものよ」

「全くです‼華琳様を差し置いて王座に就くなどばんじいに体当たりする‼」

『?』


夏侯惇の言葉に全員が困惑する。いま確かにバンジーや体当たりといったが、少し考えて似た言葉を考えた。


「ええっと・・・・・・夏侯惇?」

「なんだ?」

「それを言うなら万死に値するじゃないのか?」

「私はそう言ったのだ‼馬鹿ではないのか⁉」


俺は夏侯惇の印象は“アホ”と判断する。


「姉者・・・今のは姉者が間違っていたぞ」

「そ・・・・・・そうなのか?」

「全く‼これだから脳筋は・・・」

「誰がノーコンだ‼」


なんでそんな言葉を知っている⁉


「はぁ・・・春蘭、私に恥をかかせたいのかしら?」

「うぅううう・・・・・・華琳様ぁ・・・」

「はぁ・・・相変わらず姉者は可愛いなぁ」

「曹操殿、頼みますから話を修正していただけないか?」

「そうね・・・・・・すまないわね」


曹操殿は溜息を吐きながら話を元に戻す。


「詠、君の考えはどう思う?」

「白馬と延津はどうなってるの?」

「あなたは?」

「私は詠、軍師よ。それよりどうなの?」

「ふぅ〜ん・・・・・・両方ともあの馬鹿の手中にあるわ。それがどうしたの?」

「だったら取るべき手段は明白よ」

「ほぅ・・・両方に囮を置くのか?」


冥琳殿がそういうと詠は頷く。


「あの馬鹿の性格からすれば怖気付いたと思って陽動に気が付かないはずよ。その後に各個撃破」

「兵は多いが愚か者で保身に走ることしか脳が無い愚者の中の愚者・・・・・・」

「確かに袁紹は食い付くはず・・・それだけで私達の勝ちになります」


軍師達が先を読みながら策を練ると、愛紗が地図を指差す。


「しかし・・・この囮こそが問題ではないか?敵は数で勝るので、些細な囮など歯牙にも欠けないだろう」

「ふふっ、相変わらずいい着眼点ね関羽」

「すみません、ご主人様」

「いいよ愛紗。それで曹操達はどう思ってる?」

「関羽と同意見よ。何処の陣営がこれを引き受けるかしら?」

「・・・・・・少しいいでしょうか曹操殿?」

「なにかしら?」

「袁紹や奴に組するクソッタレが確実に食い付く有効な手段がある」


俺がそういうと全員が俺の言葉に耳を傾ける。だがその前に地図をどうにかしたい。俺は胸ポケットから周辺の地図を取り出し、それを広げた。


「これは・・・・・・すごい地図ね・・・」

「この戦が終われば記念に差し上げます・・・・・・地図を見る限りでは白馬と延津のちょうど中間あたりに渓谷があり、戦闘には不向きですが、敵を誘い込むには最適な場所です。囮部隊はここを進軍して手前で反転して退却。

両方の部隊を誘い込んだ隙に別働隊が白馬と延津を攻撃。

敵の兵器を破壊したら占領はせずに放棄。その後に合流して中央の敵を撃破して撤退します。するとどうなると思われますか?」

「・・・敵の戦力を分散させられるということね?」

「その通りです。それにはこの陽動部隊にはかなり重要な役割を担いますが、1つ最高の手段があります」

「はいはいは〜い‼先陣は私が立候補する〜‼」

「雪蓮殿・・・頼みますから話を最後まで聞いて下さい・・・・・・2つの拠点間を守備している将が確実に食い付き、なおかつ討ち取れば武名が挙げられる・・・・・・貴女にお願いしたい・・・曹操殿」


そういうと全員がどよめいた。何しろ総大将を囮に使うのだから当然だ。しかし成功すれば敵は確実に食い付く筈。手段としては最良だが彼女達が黙っている筈が無い。

案の定、夏侯惇達が怒気を込めながら詰め寄って来た。


「貴様‼華琳様にそのような危険な役をさせられる筈がないだろう‼」

「そうよ‼馬鹿じゃ無いの⁉だったらあんたが囮になって突っ込めばいいじゃない‼」

「まあ聞いてくれ。敵は曹操殿が総大将を務めていることは気がついているだろうし、もし仮に曹操殿が討たれたら俺達の敗北は知っている」

「だったら尚更・・・「面白いじゃない」か・・・華琳様⁉」

「確かにわたしを討ち取れば、袁紹は無条件で天下を下すことになるし、名も挙がるでしょうね」


万が一・・・否、億が一も無いだろうが仮に袁紹が勝利すれば俺達は確実に見せしめとして斬首。

兵力を吸収して各地で虐殺を開始するだろう。


「しかし袁紹如きの雑兵で負けることなど無い。こちらの作戦に気が付かないまま敵は確実に敗北するでしょう」

「ライルも言うようになったわね♪だけど私も同じ考えよ。あんな馬鹿猿に負けることなんて考えてもないし♪」

「俺もライルさんや孫策と同意見だ。奴のせいで俺達の仲間が傷付き、幽州にいた友人や戦友が命を落とした・・・・・・絶対に許してはおけない‼」

「私には春蘭や秋蘭、牙刀、有能な臣下達が集ってる。更に江東の小覇王に江東の銀狼、天の御遣い、軍神という英雄達も集った。袁紹に負ける要因など考えられないわ」


いつかは敵になるかも知れない。しかし今は信頼出来る仲間同士だ。決意し合うと天幕にウルフパックの海兵隊員が入って来た。


「報告‼袁紹軍が進軍を開始‼進路から判断して原武に向かっていると思われます‼」

「早いな・・・」

「えぇ・・・のんびりはしてられないわね・・・・・・ライルの案で進めるわ‼」

「じゃあ私達は延津を攻めるわ」

「俺達劉備軍は白馬を攻める‼」

「俺達群狼隊を3つに分けて置く‼俺は一刀と行く‼作戦内容は追って通達する‼」

「頼むわね・・・解散‼」


曹操が指示すると全員が行動する。歴史の分岐点となる3大戦場の1つ“官渡の戦い”がいま、始まろうとしていた・・・・・・・・・。

遂に開戦した官渡の戦い。数で圧倒的不利の状況下で、ライル率いる第1中隊は一刀達と共に白馬を目指す。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[オペレーションボギー発動]

狼と御遣い、白馬に君臨。

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