第65話:魏武の龍
許昌に1人の英雄が帰還する。
徐州における劉備軍の圧勝、それに伴う袁紹軍の戦力低下、呉の海兵隊創設。これらの情報が覇王 曹操が治める許昌にも齎された。
「・・・以上が細策からの報告になります」
「ありがとう桂花(けいふぁ/荀彧の真名)」
荀彧の報告に曹操は頷く。
この世界の荀彧はそういった傾向は全く感じられず、曹操に心髄している感じだ。
「しかし袁紹軍もやはり大したことありませんね‼所詮はう・・・・・・うご・・・秋蘭、なんだっけ?」
「はぁ・・・烏合の衆だ。姉者」
「そうだそうだ‼烏合の衆です華琳様‼」
言葉を思い出させてもらった夏侯惇。そのことを曹操達は呆れてしまう。
「まあ、袁紹のことなどどうでもいいわ。しかし劉備と孫策が同盟を組んだ方が興味深いわね。しかも・・・」
「北郷 一刀に・・・・・・ライル・L・ブレイドか?」
「ええ、それに関羽や張遼、呂布、趙雲・・・・・・欲しいわね」
「そんな華琳様⁉華琳様のお側に汚らわしい男など置かれたら妊娠してしまいます‼」
「落ち着きなさい桂花、公私混同はあなたの悪い癖よ」
この世界の荀彧には大の男嫌いがあり、それが公私混同となっている。
「しかしあの男の武と覇気は素晴らしいものだ。側においておいた方が貴女の力になる筈よ」
「あら?、季琳は随分とあの男に興味があるようね?」
「まあな、1人の将としても一度は手合わせ願いたいものだ」
「待て季琳‼ライルとの一騎打ちは私が先だぞ‼」
「はぁ・・・相変わらず姉者は可愛いな」
何だか脱線している。そんな状況から不意に扉が開けられ、そこから衛兵が入ってきた。
「失礼致します‼徐晃将軍がお戻りになられました‼」
「分かったわ。通して」
「御意‼」
そういうと衛兵が再び部屋を出て、入れ違いで別の人物が中に入って来た。
黒と濃紫色の服装の上に黒と淡い青色を主体としたカラーリングの鎧を身につけ、銀髪を後ろで束ねるポニーテールの男性。
彼の名前は徐晃 公明。
彼は彼女たちの前まで歩み寄ると、片膝を付いて拝礼の姿勢を執る。
「曹操殿。徐 公明、ただいま帰還致しました」
「ご苦労だったわね牙刀(がとー/徐晃の真名)。早速だけど、手筈は整ったのかしら?」
「はっ。既に楽進、李典、于禁、曹洪殿、郭嘉、程昱等を中心に軍勢を洛陽で編成完了。ご命令があり次第、いつでもかの地に出陣可能であります」
牙刀の出陣可能という報告で、曹操は口元を笑わせる。
「いつもそうだけど、相変わらず仕事が速いわね」
「恐縮であります。曹操殿」
「はぁ・・・いつも言ってるけど、私のことは真名で呼びなさい」
「それは恐れ多く思います。私のような将が曹操殿の真名を口にするなどと・・・・・・」
「牙刀‼華琳様の命令が聞けないのか⁉」
「牙刀・・・・・・華琳様や姉者、他の者たちはお前のことを高く評価しているのだ。いい加減に私達のことを真名で呼んではくれないか?」
「ふっ・・・ふん‼あんたみたいな男に真名を呼ばれると妊娠しちゃうかもしれないけど、華琳様のご指示だから仕方なく呼ばせてあげるわよ‼」
「確かにお前は無駄に固すぎる。私も前にいったがお前のことは高く評価しているのだ。真名を託せるくらいにな・・・・・・」
曹操達は牙刀の無駄に固いことを口にする。彼の性格は軍に忠実で忠誠心も高い。更に武も夏侯惇と互角で、知識や戦術に関しても荀彧や郭嘉、程昱にも匹敵する。
魏の中でも屈指の実力者とされ、敵味方問わず“魏武の龍”という異名で知られる。
主に対して忠誠心が高いのはいいのだが、武人としての能力の影響で堅物となっているのだ。
「託して頂いたという名誉と誇りは確かに喜んでお受け致しましたが、口にするというのはどうかご理解を・・・・・・」
「はぁ・・・ならいつか呼ばせてみせるとして、桂花。こっちの用意は?」
「はい、軍備は整いました。今は兵糧の確保を行なっていますが、5日以内に全ての用意が整います」
「分かったわ。じゃあ今日はここで解散とするわ。牙刀、今晩こそ閨に来ないかしら?季琳でもいいけど・・・」
「いつも言わせて頂いておりますが、恐れ多く思います」
「だから私もそんな趣味は無いと言っているだろ?」
「やっぱり・・・・・・じゃあ桂花、今晩はあなたにお願いするわ」
「はい‼華琳様‼」
そういうと全員が解散していく。
それから3日後、各地はある書状で騒ぎ出す。その内容は・・・・・・・・・。
“袁紹が帝を僭称した”
袁紹が帝を僭称した。この内容はあからさまな漢室への反逆で、武力をチラつかせるがどこも従わなかった。そして遂に曹操主体で“反袁紹連合”が結成され、ライル率いる孫呉海兵隊も雪蓮と孫権と共に袁紹討伐に決戦の地“官渡”へ動き出す。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[英雄達の対峙]
官渡の戦いが始まろうとする。
オリジナルキャラクター設定
徐晃 公明
曹操に仕える武将で真名は牙刀。魏の重鎮ね中でもただ1人の男で、その武や知は夏侯惇や荀彧を上回るとされる。
かなり堅物で、彼女達から真名は預かっているが部下と同僚以外の真名口にすることは滅多にない。
劉備軍の愛紗とは同じ河東郡の出身同士であり、彼女に青龍偃月刀を与えたのも彼である。
彼の得物は青龍偃月刀の対になる赤龍偃月刀。