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第59話:ゴマ団子

亞莎の好物。きっかけはここから。

建業にある繁華街。

中佐が提案した割れ窓理論のお陰で治安が飛躍的によくなり、最近では犯罪と呼ばれる事件は聞かなくなった。


建業に齎されたのはそれだけではない。治安がよくなったことで他国から商人が来るようになり、珍しい物や貴重な品が安く手に入るようになって、経済面で呉の繁栄に大きく関わっている。

そして繁華街を歩いている女性はというと・・・・・・。


「ふぅ〜♪満喫した♪」


両手に紙袋を抱えながら買い物を満喫したイリーナの姿があった。いくら精鋭揃いの海兵隊といっても、適度な息抜きもしなければ戦闘に支障が出てしまう。

だから部隊では定期的に1週間の休暇が与えられる。今週はイリーナの指揮する部隊が休暇を満喫しているということだ。


「それにしてもごめんね亞莎ちゃん。買い物に付き合わせちゃって・・・」

「いえ・・・その・・・・・・私も今日は休みを頂いてましたから・・・」


イリーナの隣には同じ様に紙袋を抱える呂蒙 子明こと亞莎ちゃんだ。

何でも彼女も周瑜様から今日一日休むように言われたらしく、それで新しい兵法書を探しに本屋を覗いていたら私に会ったという。

既に彼女の手には私が買ってあげた兵法書があり、亞莎ちゃんは申し訳無さそうな表情でこちらをみている。


「あっ・・・あの・・・・・・イリーナ様・・・」

「もう、亞莎ちゃん。様付けはやめてっていってるでしょ?別に上官部下っていう関係じゃないんだから」

「いえっ⁉・・・その・・・やっぱりイリーナ様は私なんかよりもずっと位が高いですから・・・」


確かに私の孫呉軍における役職は将軍級で、亞莎ちゃんは軍師といってもまだ見習い。しかも孫策様直属だから普通の将軍よりも権限がある。


「う〜ん・・・確かにそうなんだけど・・・・・・私達としては堅苦しいのは苦手なのよね」

「うぅううう・・・だ・・・・・・だったらせめてイリーナさんと・・・」

「本当はタメ口でもいいんだけどな〜」


恐らく謙虚な彼女にはそれが精一杯だろう。亞莎ちゃんのいいところはそこなんだが、同時に短所でもある。無駄に謙虚すぎて自己主張が乏しいのだ。


軍師になるなら相手に自分の考えを悟らせないというのは必要なことだが、せめてプライベートのときは忘れて欲しい物だ。


「イリーナさん・・・本当にありがとうございます・・・・・・」

「気にしなくてもいいわよ。亞莎ちゃんにもお世話になってるんだから、ほんのお礼よ♪」

「い・・・いえ⁉お世話になってるだなんて・・・」


亞莎ちゃんが何かを言おうとした瞬間、彼女のお腹が可愛らしく鳴いた。本人は顔を赤く染めながら裾で口もとを隠す。彼女なりの照れ隠しだ。

その光景は本当に可愛らしく、思わず保護欲に駆られそうになったが何とか抑え込み、話しかけようとした瞬間に私のお腹も鳴いた。


「ははは〜・・・・・・小腹空いちゃったわね」

「はぅ・・・」

「仕方ないわ、向こうのお店でお茶にしましょ?」


小腹を満たす為に近くにあった茶菓子屋に入って行く。この店は建業の老舗で老夫婦が営んでいる結構有名な店だ。イリーナもたまに買いに来ているほどにうまい。


「こんにちはお婆ちゃん♪」

「あら、いらっしゃいイリーナちゃん。おやまぁ・・・今日はお友達と一緒かい?」

「うん♪それで今日のオススメは?」

「丁度よかった。今さっきゴマ団子が揚がったところだよ」

「本当⁉」

「今日はゴマ団子にするかい?」

「うん♪」

「あいよ、ちょっと待っとくれ」


そういうとお婆ちゃんはゴマ団子を詰めに厨房へ向かう。


「むふふ〜・・・楽しみだな〜♪」

「あ・・・あの・・・・・・」

「なに?」

「ゴマ団子って・・・何ですか?」


いま何か聞き間違いのようなことが聞こえた気がした。

ゴマ団子って何ですか?

確かにそういった気がした。少しだけ時間が経過して、ようやく事を理解した私は目を大きくして驚いてしまった。


「えぇえええええ‼??」

「ひゃう⁉」

「亞莎ちゃん⁉ゴマ団子知らないの⁉」

「はっ・・・・・・はい・・・ずっとお城にいましたから・・・」


その言葉で糸が繋がった。確かにこの時代の甘味はかなりの貴重品であり、庶民はもちろん城の人間でも上層部でもなければ滅多に口にする事は出来ない。


亞莎ちゃんも寿春城攻略の後、孫権様に見いだされて下士官から軍師見習いに昇進した。

そう考えたら知らないのも頷ける。

すると箱詰めを終わらせたお婆ちゃんがもどって来て、私達に爪楊枝が刺さったゴマ団子を差し出して来た。


「はいイリーナちゃん、オマケだよ。折角だから熱い内に食べていきなさいな」

「いいの⁉」

「いいのいいの。熱い内が美味しいからね。お友達も食べて行きなさいな」

「わ〜い‼お婆ちゃん大好き‼」


子供のようにはしゃぐ私。出来たてのゴマ団子を食べれるなどは、ある意味で贅沢だ。私が一つ掴むと亞莎ちゃんも同じように摘まんで暫く眺める。


「ほふほふ・・・う〜ん‼ホクホクで美味しい‼亞莎ちゃんも食べてみなさいよ‼すっごく美味しいから♪」

「えっ・・・は・・・・・・はい。頂きます」


私に薦められて亞莎ちゃんも口にする。一口食べたら彼女の表情は驚きに包まれた。


「美味しいです‼」

「でしょでしょ?ゴマの風味と程よい甘さが混ざりあって口の中のモチモチした感触が癖になるのよね〜♪」

「気に入ってくれて何よりだよ。お嬢ちゃんも美味しかったかい?」

「はい‼こんな美味しいもの初めてです‼」

「そうかいそうかい・・・それじゃあイリーナちゃん。はいこれ」

「ありがとう。また来るからね♪」


お婆ちゃんに代金を支払うとイリーナはゴマ団子を受け取って店を後にした。なお、ゴマ団子の虜になった亞莎ちゃんは週一のペースで買いに行くほどになったらしい。



余談だが、なぜイリーナが本屋にいたかというと・・・・・・。


「ふふふ・・・これで絶対に大きくして見せる‼」


本屋にいた理由は女性に人気がある週刊誌[阿蘇阿蘇]を買う為であり、今週の特集はというと・・・・・・。


“必見‼気になる彼を釘付けにする巨乳のなり方‼”


だったらしい。

徐州での戦後処理が完了して、撤収準備を行なうライル達。最後の便に乗り込む前、ライルは一刀にあるものを渡す。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[白い証]

御遣いと狼の絆。

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