第58話:ファイアトレーニング
海兵隊での日常。それは射撃にあり。
キャンプ・ヴェアウルフ内部にある室内射撃場。留守を任されている守備隊と機甲中隊の海兵隊員の一部が射撃訓練を行なっていた。
「よし‼ヘッドショット‼」
「甘い甘い‼素早くヘッドショット連発してみな‼」
海兵隊員はそれぞれ1番から10番で射撃訓練を行なっていた。いくらキャンプ・ヴェアウルフの守備や装甲車の運用が主任務であっても状況に合わせて歩兵隊への転属もある。
さらに海兵隊は全員が射撃の名手でなければならない。それを表すかのように、先程から命中している箇所が頭部や心臓などという急所だけだ。
各隊員はそれぞれHK416、HK417を構えてターゲットを倒して行く。
そして全員が一通り射撃を終わらせると、反対側にある長机で射撃直後のメンテナンスを行っている。
「そういえば曹長、中佐達はいつ帰ってくるんでしたっけ?」
「ああ、徐州に攻め込んだ袁紹を撃退したって通信が入ったからな。戦後処理が完了したら帰還するらしい」
「予定よりも随分と早いですね」
「それほど袁紹軍が雑魚だってことだ」
ここにいる全員が董卓軍にいた頃に袁紹軍と交戦したことがあり、近接戦で1人あたり平均100人以上は確実に仕留めている。
中佐達曰く“あんな簡単に仕留められる敵は初めて”だ。
会話をしながらも榴弾砲部隊所属のアーヴィン・パーキンス曹長が最初にHK417を組み立て終わった。
「よし、終わった」
「相変わらず早いですね、曹長は・・・」
「さすがガンスミス」
「やかましい・・・・・・そういえばお前等、今晩は出掛けるのか?」
「はい、久々に外出許可が明日一日出ましたから遊びに行こうかと・・・」
「なんですか曹長、奢って頂けるのですか?」
「さっすが曹長‼太っ腹‼」
「まだなにもいってないが・・・ちょっとした勝負しないか?」
勝負という言葉に全員が耳を傾ける。
「確か中佐達が前々から新規導入しようとしてるライフルが届いてたよな?」
「M27ですか?」
「そうだ。性能テストを兼ねてな・・・すまないが持ってきてくれ」
「了解」
指示を下すと兵長が指定した火器を隣接している武器保管室に向かった。一分もしない内に指定した火器のM27 IARを手に戻ってきた。
この世界に来てからも機関銃手の被攻撃回数が他と比べて多い。
そこで部隊の主力火器であるHK416をベースとしたM27をMk46と並行して運用する計画が持ち上がった。
「M27持って来てどうするんですか?」
「簡単だ。通常分解した状態から素早く組み立てて、そこから的を10個をヘッドショットで仕留めて行く」
「それで?」
「それで1番早かった奴は明日の飲み代はタダで、1番遅かった奴がそいつの酒代を払うんだ」
「そいつはいいなぁ‼」
「よしっ‼乗った‼」
「きまりだな・・・ちなみにダットサイトは無しだ。サイトシステムもな」
そこそこ難易度が高い設定だ。なにしろ照準に必要なものがないので、射撃手の実力が大きく出る。
M27を分解し終わると少しだけ離れた。
「よし、まずは誰がやる?」
「だったら自分が・・・」
「よし」
そういうと兵長が構えて、合図と同時に取り掛かった。
それから15分後、結果が決まった。
「・・・・・・・・・・・・ハァ」
「ええっと・・・・・・なんかすみません曹長」
「いや・・・最初に言い出したのは俺だからな・・・」
結果は兵長が1番早いタイムを叩き出し、アーヴィンが最も遅かった。
ガンスミスであるアーヴィンは組み立ての段階ではよかったのだが、射撃時に最後の一発を放つ直前、派手にクシャミをしてしまい、放った弾丸が的から外れたのだ。
その結果、アーヴィンだけが命中数が9発で残りの9人が全弾命中。自動的にアーヴィンが最下位になってしまったのだ。
「仕方ない・・・・・・それよりこいつの感想は?」
「撃ちやすいですね。やっぱり」
「操作性も416や417と同じですから、誰でもすぐにガナーになれますね」
アーヴィンはポケットからメモ帳を取り出し、全員の意見を書き足して行く。
「よし、あとは環境下でのテストだけだな」
「いつですか?」
「ひとまずは中佐達が帰って来てからだ。実行許可書に中佐のサインがいるからな」
「アーヴィン曹長」
声を掛けられたので振り向くと、守備隊所属の二等軍曹がいた。
「どうした?」
「はっ、レオン大尉がお呼びです。至急建業の警邏隊本部に出頭せよ」
「了解だ。すぐに向かう」
敬礼をすると二等軍曹も同じ様に敬礼を返し、そのまま射撃場をあとにする。
「というわけだ。悪いが行ってくる。建業城の城門前で待ち合わせだ」
「了解です」
軽く敬礼をすると、アーヴィンは射撃場を後にしてヘリポートで待機していたナイトホークに乗り込むと建業へと向かった。
余談ではあるが、二日後に財布の中身を見ながら落ち込むアーヴィンの姿が目撃されたらしい・・・・・・・・・。
久々の休みで建業の繁華街を散策するイリーナと同じく休みだった呂蒙こと亞莎。
小腹が空いたことで近くの茶菓子屋へと足を伸ばす。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[ゴマ団子]
亞莎の好物の原点。ここから始まる。