第55話:蜂蜜好きな少女達
蜂蜜料理の定番。2人にご馳走。
中佐率いるオーバーロードが徐州で袁紹軍と交戦して圧倒的な勝利を掴んだ丁度その頃、建業城の厨房では・・・・・・。
「イリーナ〜‼まだなのかのぅ?」
「まだ〜?」
「はいはい、もうすぐで出来上がりますから、もうちょっと待って下さいね?」
私はクラス“C”サービスドレスの上にフリルが付いた可愛らしいエプロンを身に付けて料理をしている。
そして食堂では私が作る料理を楽しみにしているシャオちゃんと美羽ちゃんがいた。
なぜこんな状況になったかというと、全ては30分前に遡る。
「はぁあ〜・・・・・・ようやく警邏が終わったぁ〜」
「なんだ?疲れたのか?」
「だって普段は基地の事務作業をしてるのよ。あんまり慣れてないのよ百合」
「しかし警邏も重要な任務だ。怠るわけにはいかない。それは分かってる筈だが・・・?」
「はいはい、相変わらず真面目ね。百合ちゃんは♪」
今日は珍しく凌統 公積こと百合ちゃんとタッグを組んだ警邏で、今は詰め所での勤務を引き継いで建業城内部にある中佐の執務室(今はレオン大尉が代理でいる)に向かっていた。
私の百合ちゃんに対する印象は真面目でいい子。スタイルも中々で胸は・・・・・・言うと悲しくなる。
(なんで呉の女子は胸が大きい子が多いのよ⁉)
孫策様や孫権様、黄蓋様、周瑜様、穏さんは言うまでもなく、思春さんと百合ちゃんも5人ほどではないけれど胸は大きめ。
(あの5人組と比べたら・・・・・・はぁ〜・・・)
心の中で思いっきり溜息を吐いてしまう。言いたくは無いけれど、私のバストのサイズってAなのよね・・・・・・。
おかげでよく男に間違えられるし、今日に関しては小さい子供におじちゃんって言われた。
・・・思い出しただけで涙が出てくる。
「イリーナ、どうかしたのか?」
「いえ・・・・・・なんでも無いわ・・・」
少し落ち込みながら廊下を歩いていると、角から見覚えのある女性がいた。
青いセミロングの髪にスチュワーデスのような服を来た女の子・・・張勲こと七乃だ。
彼女と美羽ちゃんは袁家の呪縛から解放されて、表向きで死んだことになりながら、孫呉軍からの保護を受ける代わりに七乃は攻撃主体の軍師として力を貸している。
一言に軍師と言ってもそのスタイルには特徴がある。七乃の軍師としての能力は守備や諜報ではなく、攻城戦で真価を発揮させられる。
董卓軍にいた頃も詠ちゃんは守備を重視した策が得意で、ネネちゃんも攻撃主体。
実力者となると周瑜様や穏さんみたいなオールラウンダーもいるけど・・・・・・。
「七乃」
「あら、イリーナさん。それに凌統さんも・・・警邏の帰りですか?」
「ああ、今からレオン将軍の処に報告しに行くところだ」
「それよりどうしたの七乃、何か考え事をしてたみたいだけど・・・・・・」
「はい、実は今からお嬢様のオヤツを用意するんですけど・・・・・・」
「美羽ちゃんの?」
「そうなのですが・・・実は冥琳さんから急な仕事を頼まれて、すぐに北門に竹簡を届けなきゃいけないんです」
そういうと何処からか周瑜様から預かったとされる竹簡を取り出した。
「だけどお嬢様を待たせたりは出来ませんから困ってたんですよ」
「ふ〜ん・・・だったら私が美羽ちゃんを見てようか?」
「いいんですか?」
「イリーナ。報告がまだ残ってるだろ?」
「大丈夫よ。報告って言っても百合ちゃんがいれば十分だし、それに美羽ちゃんって私達から見たら妹みたいな存在だから、大尉も分かってくれるわ」
「しかしだな・・・・・・」
「あっれ〜・・・いいんだそんな意地張っちゃって〜」
「な・・・・・・なんだ?」
「だって〜、私知ってるんだよ♪百合ちゃんってお化けがこ「そうだな。報告だけなら私だけで十分だろう」・・・早っ⁉」
彼女の弱点を言おうとした瞬間、阻止するがの如く素早い切り替わりを見せた百合。
余談だが、彼女の弱点とは“お化けが大の苦手”だ。
「それじゃ、百合ちゃんも承認してくれたし、美羽ちゃんはどこ?」
「はい、先に食堂にいると思います。厨房に蜂蜜を置いて貰ってますから、それで蜂蜜水でも作ってあげてくださいね」
「分かったわ」
そんな流れがあった。最初は美羽ちゃんだけだったけれど、丁度材料もあったから“蜂蜜にピッタリなあれ”を作ってあげることになった直後にシャオちゃんもやって来たのだ。
「それにしても二人って本当に仲良しよね」
「うむ♪シャオは妾の親友なのじゃ♪」
「そうだよ〜♪美羽と一緒にいると楽しいんだよ♪」
美羽ちゃんが保護されてから、すぐにシャオちゃんと意気投合して、今では本当に仲良しになっている。素晴らしいことだ。
そうこうしている内に作っている料理が焼き上がり、あとは皿に盛り付けて上から蜂蜜をたっぷりと垂らして、2人に持っていった。
「はい、出来たわよ」
「蜂蜜なのじゃ♪」
「すっごく美味しそう‼でもイリーナ、これってなに?」
「これはホットケーキっていうお菓子よ」
「勃斗・・・なんなのじゃ?」
「ホットケーキよ。私の故郷でも定番のオヤツなのよ」
「じゃあ、天の国のお菓子なの?」
「そういうことになるわ」
どういうわけか知らないけど、厨房にバターが少しだけあったので、卵、牛乳、砂糖、薄力粉を使って、ホットケーキを焼いたのだ。本当ならバニラエッセンスも入れたかったが、流石にそこまではなかったようだ。
「ほほ〜・・・・・・なんだかすっごく美味しそうな匂いなのじゃ♪」
「さっ、熱い内に召し上がれ♪」
「うん‼」
「分かったのじゃ♪ではでは・・・」
「「いっただっきま〜す‼(なのじゃ‼)」」
2人は箸でホットケーキを小さくして、口にいれる。そしてよく味わうと驚いた表情をした。
「う・・・うまいのじゃあ‼‼」
「本当に美味しい‼」
「喜んでくれた?」
「「うん♪」」
「ふふっ、ありがとう。まだまだ一杯あるから、たくさん食べてね♪」
私はこうなることを予測して大量に焼いておいたのだが、予想以上に喜んでくれた。料理を作る者にとって食べた時に表してくれる笑顔は掛け替えのない報酬だ。
その後も彼女達は焼いていたホットケーキを全て平らげてくれた。喜んでくれてなによりだったが、薄力粉や砂糖が少なくなったことがばれて、周瑜様にこっぴどく怒られたのは言うまでもなく、更に美羽ちゃん経由で孫策様達にも知られてしまい、次の日のオヤツ時に用意させられたのも言うまでもない・・・・・・・・・。
戦後処理が行なわれている徐州。朱里と雛里は一刀の進めでライルの兵法を教えて貰っている。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[銀狼による臥龍と鳳雛の個人授業]
軍師。それは好奇心の塊。