第48話:猫
建業で警邏任務に就いていたレオン。そこで珍事件に巻き込まれる。
ライル達が劉備軍との同盟を締結させ、魯肅と千里が建業に帰還し始める調度そのころ、留守を任されたレオンは建業市街地の警邏を行なっていた。
「今日も異常なしっと・・・」
「ええ、平和そのものです」
大半の仕事を終わらせ、共に警邏に出ていた孫策軍警邏部隊の兵士と一緒に平和を感じる。
警邏に導入した割れ窓理論のおかげで、その治安維持能力を認められたライル達に予算が増やされ、次の段階に移行できた。
その段階とは、建業を合計11箇所の区画に区分けして、その区画毎に常駐の警邏隊の詰め所を大き目の空き家で作る。今で言う処の分署だ。
今までの警邏では事件が起こったとしても、本部がある建業城に知らせるか、警邏中の隊員を見つけなければならず、その間に事件が解決、もしくは最悪の事態に起こりかねない。
実際にライル達が警邏隊の指揮を任された当初に何度もそういうことがあった。
そのおかげでレオンが建業に来てから行きつけの酒屋の亭主が、黄巾党の残党に殺害されかけた。
しかし分署を設けたことで通報までの時間が短縮され、建業全体の治安はかなり改善されている。しかも民の意見も円滑に聞き取れるようになり、よい街づくりを行なえるようになった。
「しかし最近は本当に何も起こらなくなったな」
「レオン将軍やライル様達が来てから本当によりいい街になりました。全ては将軍達のお陰です」
「よせって・・・俺や中佐達が向こうにいた頃の警察・・・・・・警邏隊の組織図と知識を利用しただけだ。後はお前達の実力だよ」
「しかしきっかけをくれたのは将軍達です。皆、将軍達に感謝しています」
「そ・・・・・・そうか・・・」
レオンは流石に恥ずかしくなって、頬を掻きながら顔を背ける。すると少し先に行った辺りで見覚えのある人影を見つけた。
黒い長髪に人形のように目尻が上がった大きな目、忍者の忍装束のような格好をした少女・・・・・・周泰 幼平こと明命だ。
彼女は何かを探すように周りを見渡し、石段をトテトテと駆け上がって行った。
「今のは周泰様ですね・・・どうしたのでしょう?」
「分からない・・・・・・何か探してたようだが・・・」
「様子を見に行きますか?」
「そうだな、すまないが先に行っててくれ。俺が行ってくる」
「御意」
ひとまずは彼には先に詰め所に戻ってもらい、レオンは明命の後を追うことにした。幸いにも彼女はすぐに見つかった。石畳の道から離れて草むら辺りでやはり何かを探していた。
「どこなのですか〜?」
草むらを掻き分けて何かを探す明命。レオンは反対側の草むらに隠れて様子を伺う。しかしつい癖で泥を顔に塗ってカモフラージュしてしまったのはお約束だ。
気配を消して様子を見ていると、何やら別に動きがあった。
‘ニャー’
草むらからひょっこり現れたのは白い毛並みに黒模様が混ざった猫だ。それ自体なら珍しくない。しかし驚愕したのは明命の方だ。
「はぅああ〜‼お猫様ぁ〜‼」
‘ニャ?’
猫を見つけた瞬間、表情を更に輝かせて猫に歩み寄る。一瞬何が起こったのか理解出来なかったが、そういえば少し前に彼女が極度の猫好きだと、彼女の親友である亞莎から聞かされている。
「お猫様ぁ〜・・・今日もお変わりなくお綺麗な毛並みですぅ〜」
‘ニャー?’
「はぅ⁉私の膝に乗られるのですか⁉」
‘ニャー’
「はぅ〜・・・モフモフですぅ〜」
自分の足に乗って寛ぎ始める猫を明命は幸せそうに撫で始める。
「ニへへ〜・・・幸せですぅ〜」
本当に幸せそうだが、彼女は一つ忘れている。猫という生き物は気まぐれの代名詞だ。せっかく寛いでいたのに、しつこく撫でられていると・・・・・・。
‘ニャー‼’
「あうっ⁉」
手の甲に必殺“猫パンチ”を食らい、下りた猫はそのままトコトコと立ち去って行った。対して明命はこの世の終わりみたいな表情をしながら立ち去る猫を見る。
「あぅあ〜・・・・・・お猫様ぁ〜・・・」
(ぶ・・・・・・くくく・・・お・・・面白過ぎる・・・)
そんな光景にレオンは必死に笑いを堪えている。
すると足下に気配を感じたので視線を落とすと、別の猫がレオンに身体を擦り付けて匂いを付けていた。
(お・・・おい‼あっちに行け‼)
‘ニャー♪’
何とか追い払おうとするが、あくまで匂いを付けているだけなので本気を出せず、代わりに“嫌だ”というが如く鳴き、それを聞いた明命は髪に猫耳を出したような感じを出し、目を輝かせながらこちらに駆け寄って来た。
「おーねーこーさーまー‼‼」
「ぎゃふ⁉」
一歩手前に到着すると明命は飛び上がり、俺に飛び込んで来た。
「はぅあ〜、こちらのお猫様は大きいですぅ〜♪まるで人みたいな感じ・・・あれ?」
「み・・・・・・明命・・・俺なんだが・・・」
何かおかしいと悟った明命は見上げると、レオンとしっかりと目線が合ってしまう。そして少しだけ時間が経過して、状況を理解した明命は顔を真っ赤にしながら慌てて離れた。
「はぅあああ⁉れ・・・れれれレオンしゃま⁉わわわわわ・・・私⁉レオン様に抱き付いてレオン様の身体に頬ズリして・・・あぅあぅあぅあぅ‼‼????」
「お・・・・・・落ち着け明命⁉猫が驚く‼俺の上で暴れるな‼そしていろんな意味でキャラ被るから落ち着けぇえええ‼」
レオンも若干混乱しているようだ。その後、なんとか落ち着かせたレオンは明命と共に城に帰ったが、二人とも顔を赤くしていたというのはいうまでもない・・・・・・・・・。
準備は整った。袁紹軍による徐州侵略に備え、ライルと一刀は支城で話をしていた。今後の流れ、時代の流れ。そしてライルはあることに気がつく。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[未来の父]
英雄同士の会話に衝撃が走る。