表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/221

第39話:部隊創設の足掛かり

二日酔いが完治して職務に復帰したライルは、冥琳殿に呼ばれて軍議室にいた。

俺達が孫呉に降って二ヶ月。俺達が提供した知識で軍の実力と建業の治安は格段に向上した。治安が良ければ貿易が円滑に進み、他国からやって来る商人が呉に利益を齎す。

その影響で孫策軍に志願を希望する希望者が急増したらしい。そして俺は冥琳殿に呼び出されて、今は軍議室に赴いていた。


「・・・・・・新兵の増加ですか?」

「そうだ、この一月で呉軍への志願者が急増してな、その対処に追われているのだ」

「急増の理由は?」

「分からないか?」

「うむ・・・・・・独立を果たした事でしょうか?・・・それとも英雄孫策の影響ですか?」


自分の予測を言うと、冥琳殿は溜息を吐きながら眼鏡のブリッジを押さえて、眼鏡を元に戻す。


「はぁ・・・・・・志願の理由に確かにあったが・・・・・・一番の要因はお前達だ」

「・・・・・・えっ?」

「そんな素っ頓狂な声を出すな。実は初めは徴兵の宣伝文句でお前達を利用したんだが、自分達から志願する志願者が後を絶たなくなった」

「何時の間にそんなことを・・・・・・?」

「断りもなくすまないな。しかしまさかお前達の名声がこれ程のものとは・・・・・・正直に言うと予想外だよ」


まあ、分からなくはない。自分でいうのもなんだが、俺達の力はこの時代ではまさに異色のものだ。

僅かな人数で強襲を仕掛けたり、戦車や戦闘車、航空機を運用して敵を圧倒する。

もし俺が最初からこの世界の住人だったら、徴兵される前に自分から志願しているだろう。


「はぁ・・・それで志願兵の数は?」


尋ねると冥琳殿は親指、人差し指、中指を立てた。


「3,000名ですか?」

「桁が一つ足りない」


冥琳殿がそういうと顔を引き攣ってしまう。志願兵の数は30,000名。アメリカでも一度にそこまで志願者が集まることはない。


「それで・・・・・・俺は何をすれば?」

「うむ、だがその前に・・・・・・いいぞ。入って来なさい」


冥琳殿がそういうと不意に扉が開けられて、部屋に1人の女性が入って来た。グレーのショートヘアに額の右側から左目の下まで続く切り傷。目線が鋭く実戦経験者を示す戦士を思わせる女性だ。


「彼女は?」

「新しい部隊を創設する為に連れて来たお前達の補佐役だ」

「・・・凌統 公績。真名は“百合(ゆり/凌統の真名)”です」


この忠犬みたいで忠誠心の塊みたいな女性が凌統とは・・・・・・。


「百合は我等の水軍で部隊長をしている。補佐役には最良の人材だろう」

「しかし、よろしいのですか?水軍も増強中だと聞きましたが・・・・・・」

「任務でありましたら構いません。従うまでです」


任務や主に忠実。無表情だが志しは見事だ。更に様子からしても将軍職で、文武両道の将と思われる。海兵隊にピッタリな女性だ。


「それとライル、編成の際に必要な条件はあるか?」

「条件ですか?」

「ああ、例えば祭殿の部隊は弓兵が多い。それ故に弓や弩の扱いに長けてないと務まらんし、私の部隊は主に諜報や偵察に長けるように、その将軍の特性にあった編成になるのだ」


つまりは編成に必要な特性と、配備される新兵がそれらの条件に似合った素質の有無を見分ける必要があるということだ。

確かに潜入が得意なのに弓兵隊に配備されたら、その兵士の真価を発揮出来ない。しかし問題はその条件だ。俺は少し考えると、メモとペンを取り出して条件を書いて行く。


「こんな感じです」


冥琳殿は中身に目を配ると、その内容に驚愕する。


「・・・・・・随分と無茶な条件だな・・・大半が脱落するぞ」

「俺の考えている部隊編成は前にいた世界で、俺達が所属していた軍隊の流用です。それらが成り立たなければ不可能です」


俺が書いた条件とは・・・・・・。

1:弓術、剣術の他にもう一つ長けている

2:国家に対して絶対的な忠誠心を持つ

3:ウルフパックの訓練を3ヶ月間、耐え抜ける

4:船酔いしない

5:個々の能力よりも隊の連携を実行出来る


以上の5つだ。この時代においてこれ等の条件はまさに無茶苦茶であり、孫呉では部隊長クラスの兵士に当たるらしい。


「ライル将軍、定員数は如何様に?」

「我等を除いて指揮官を含めて4,000名を。志願者は各地の城で振り分け、内容に当てはまった志願者のみを編成地に送って下さい」

「条件に1つでも当てはまらなかった者はどうする?」

「通常部隊への派遣か断りを・・・」

「いいだろう。ならばこの件は全てお前に一任する。百合もしっかりと支えてくれ」

「「御意」」


そういうと俺と百合は軍議室から退出していく。俺が創設することになった全く新しい部隊の創設。

前世でも4軍の中で通称“殴り込み部隊”と呼ばれる部隊を作り上げる。完成したら孫呉軍で屈強の部隊になるであろう・・・・・・・・・。

陽人の乱が終結して3ヶ月あまり、戦火の狼煙は急に広がる。袁紹軍による幽州侵略。要人達を集まった中でライルは“ある部隊”の出動を決める。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[加速する時代]


積年の恨みを晴らすべく、出陣。


凌統 公積

孫呉水軍に所属する1000人隊の指揮をしていた武将。軍人としての誇りが人一倍強く、与えられた任務は確実に遂行する。

孫呉でも扱える者が極端に少ない6本の剣を同時に扱う“飛翔剣”の使い手で、乱戦を最も得意とする。


性格は忠実で忠犬のようだが、お化けや妖の類が大の苦手。


※活動報告にも記しましたが、この作品を“対テロ戦争”で亡くなられた全ての方々に捧げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ