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第38話:心優しい龍

ライル達の基地が完成した次の日、イリーナが初の警邏に出る。

ライル達が孫呉に降ってから一ヶ月が経過した。その間にウルフパックの本部が完成。孫策軍では潜州城のままだが、ウルフパックではこの基地の事を“キャンプ・ヴェアウルフ”と名付けた。

基地の完成祝いと称して酒盛りが行われたが、これが災難だった。酒に凄く弱いライルが雪蓮殿と祭殿に酔い潰されたからだ。

仕方が無いので酷い二日酔いのライルが完治するまでの間、アレックスが指揮を引き継いで、今日は警邏任務が初となるイリーナが行う事になった。


「・・・では気をつけてくださいね?」

「はい、ご迷惑をお掛けしました」


繁華街で客引きをしていた亭主に警告すると、イリーナは移動する。何でも売り上げを伸ばしたい一心で、客を無理に引き入れようとしたらしい。

まあ、初犯ということもあったので今回は注意だけで済ませた。警邏任務を任されたライル達が警邏に取り入れたのは“割れ窓理論”を取り入れた。治安低下には決まった流れがある。



建物の窓が壊れているのを放置すると、それが“誰も当該地域に対し関心を払っていない”というサインとなり、犯罪を起こしやすい環境を作り出す。

ゴミのポイ捨てなどの軽犯罪が起きるようになる。

住民のモラルが低下して、地域の振興、安全確保に協力しなくなる。それがさらに環境を悪化させる。

凶悪犯罪を含めた犯罪が多発するようになる。



これ等を未然に防ぐ為にはどんな小さな犯罪でも取り締まり、それでも従わない場合には厳しくても逮捕する。

今はこれだけだが、功績が認められて予算が下りれば次の段階に入る予定だ。保守派の連中が何を言うか分からないが・・・・・・。


「ふぅ・・・・・・」

「どうかされましたか?」

「大丈夫です。警邏が結構大変と思って・・・・・・」


溜息を吐いて隣にいた同行者が声を掛けて来た。

2m近くもある引き締まった長身に千里が来ていた袖無しロングコートに袖を取り付け、鉛で出来たALICE GEARを思わせるベルトとY型サスペンダーを身に付けて、太腿まである銀のラインが入ったロングブーツを履いたスキンヘッドの男性だ。

彼の名前は丁奉 承淵。真名は優龍(ゆうろん/丁奉の真名)。


普段は警邏任務に就いているが、戦場に出ると“牙門旗狩り”の異名が示す通り、手にした双鉞“鬼神双鉞”で斬り込むらしい。


「それよりもイリーナ殿。この街には慣れられましたか?」

「実を言うとまだ・・・」

「そうですか、この国に暮らす民は皆、よい人達ばかりです。だからイリーナ殿もすぐに慣れられます」

「ありがとうございます・・・・・・あら?」

「何か?」

「あそこの子供・・・・・・」


イリーナが方角を示すと、座り込んで泣いている子供がいた。物陰にいるのでよく見ないと見つからない場所だから、通行人は声を掛けられないみたいだ。

すぐにイリーナと優龍はその子供に歩み寄る。


「どうかした?」

「ひっく・・・ひっく・・・・・・」

「ねえお嬢ちゃん、何で泣いてるの?お父さんかお母さんは?」

「ひっく・・・・・・あのね・・・お母さん・・・ひっく・・・・・・いなくなっちゃった・・・」


どうやら迷子のようだ。少女は不安なのか、完全に泣き弱んでいる。


「お嬢ちゃんのお母さんとは何処で逸れた?」

「うぇ・・・・・・わかんない・・・」

「じゃあお家は?ここから遠いの?」

「ううん・・・・・・わかんない・・・お母さん・・・・・・どこ・・・・・・・・・う・・・うぇえええええん‼」


寂しさのあまり、遂に大泣きをしてしまった。その泣き声で通行人も何事か足を止めてこちらを見る。流石に騒ぎになり出すと問題だと判断した優龍は女の子を抱きかかえると肩車をする。


「ふぇ・・・・・・」

「これでよく見える。某も一緒に母君を探そう」


確かに190cmもあれば少女の視線は2m少しの高さになるから、遠くまで見渡せるだろう。最初は戸惑った少女だったが、見た事無い視線でピタリと泣き止んだ。


「イリーナ殿、某は母君を探します故、申し訳ござらんが警邏を・・・「私も一緒に探します」イリーナ殿?」

「だって1人よりも2人、2人よりも3人ですからね。人手は多いほうがいい。でしょ?」


ウィンクしながらそういうイリーナ。優龍は少し考えたが、軽く微笑んで答えた。


「御意です。お願いします」

「はい・・・それでお嬢ちゃん。どっちから歩いて来たか覚えてる?」

「う〜んとね・・・・・・あっち‼」


方角は市場が集中する区画だ。もし遠くから来たのだったらこの子の親は商人か何かだろう。


「よし、それでは参ろうか?」

「うん‼おじちゃん‼」

「がっはっはっはっはっ‼元気の方が子供らしく可愛いものよ‼」


大声で笑いながら優龍は少女を肩車しながら歩き出す。後ろから見ると本当の親子のようだ。

イリーナはその光景に微笑みながら後をついて行く。母親を見つける迄の道中に少女に団子をご馳走したり、道中にいた旅芸人のパフォーマンスを見たりと、本当の親子のような捜索が続き、少ししてから母親を見つけた。

警邏は殆ど出来なかったが、迷子になった少女な母親捜索と報告したらお咎めなしに終わる。

まあ、代わりに明日も埋め合わせで警邏をさせられる羽目になったが・・・。


イリーナからの優龍に対する印象は・・・・・・



“子供好きの龍”だったらしい・・・・・・・・・・・・。

ライル達が孫呉に馴染み、少しが経過した。冥琳殿に呼ばれたライル達は、全く新しい部隊の創設を命じられ、新たな補佐役が着任した。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[部隊創設の足掛かり]

孫呉の軍勢に新勢力が登場。


キャラクター設定

丁奉 承淵

孫呉水軍出身の武将。“牙門旗狩り”の異名を持つ叩き上げの軍人であり、これ迄に何度も負傷しながらも、それを上回る功績を叩き出している。


豪快な性格だが軍人としての責任感が強く、任務には忠実。強面の顔に似合わず大の子供好きであり、自分の給金をよく孤児院に回す事めしばしば。

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