第27話:孫策
第2章:群雄割拠。
陽人の乱よりやく一月。ライル達は彼女と再会する。
陽人の乱が終結して一ヶ月が経過した。洛陽を脱出してから、俺達は無事に合流地点である南陽に辿り着き、再編成が完了するとすぐに移動。後継者争いが続いている荊州から東に向かい、今は予州にある汝南という場所にいる。
ここから北西に移動すると、曹操が治める許昌があり、更に西に進めば袁術の領土である寿春が存在する。
現在駐屯している山中の近くにある集落から当面の間だけ居座る見返りに出没する賊討伐を無料で引き受け、俺達は討伐を行なっていた。
「中佐、突入部隊から報告。タンゴリーダーダウン。残敵も制圧完了との報告です」
「タンゴリーダーの頸は?」
「確保したとのことです」
「分かった。タンゴベース爆破後に帰還する」
「了解」
A中隊所属の曹長は命令を実行する為に向かう。俺達139名に対して敵の数は約3000人程だったが、練度は袁紹軍兵士よりほんの少しだけ優れている程度。
一言でいえば俺達の敵では無かった。まずは30名の強襲部隊で山頂を根城としていた敵に襲撃を仕掛け、SMAWと60mm軽迫撃砲による先制。不意を突かれた敵は蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、山の尾根で包囲していた部隊が各個撃破、最後に締め付けていくように円を閉じる。
ベトナム戦争で韓国派遣軍が実施したゲリラ掃討作戦[スレッジハンマー]の縮小版である。
「中佐、爆破準備が整いました」
「分かった、部隊をセーフティエリアに退避させろ」
「了解です」
敵拠点の爆破準備を済ませた部下が知らせて、俺はすぐに退避命令を発令して同じ様に安全な場所に退避する。
敵の拠点は鉱山跡地を利用したもので、かなり大きい物だ。ここを残していたら再び別の盗賊が使用する可能性がある。
それを防ぐ為に爆破して崩落させるのだ。部隊の退避を確認した曹長は、内部に仕掛けたTNT爆薬のスイッチを押した。
それと同時に坑道の奥からばくはつおんが鳴り響き、やがては入り口から爆風と爆炎が吐き出され、坑道そのものが激しく音を起てて崩落していった。
「爆破完了を確認」
「よし、任務完了だ。帰還する・・・少し待て」
帰還命令をだそうとした瞬間、通信があったのでインカムを使って応える。
「こちらウルヴァリン、感度良好。どうした?」
<中佐、東南方向から大規模な騎馬隊を確認>
周囲で警戒に当たっていた部隊からの方角をみると確かに砂塵が舞っている。結構な数の騎馬がこちらに向かって来ていたのだ。
前にも似た状況があったような感覚に襲われるが、双眼鏡を取り出してその馬群を見る。幸いにも賊では無さそうだ。更に牙門旗も確認できたが、確認したら思わず溜息を吐いてしまった。
「はぁ・・・・・・」
「中佐、指示を」
「俺達を討伐しに来たんじゃないだろうが、そのまま警戒を維持だ」
「了解です・・・単騎掛けで誰か来ます」
「言わなくてもわかる・・・全隊に連絡。“小覇王”が接近しているが、攻撃は禁ずる」
「了解、伝えます」
そういうと周辺で警戒している部隊に連絡する為、曹長は移動していく。その直後に馬に跨った1人の人物がやって来た。
桃色のロングヘアに赤色の大胆なチャイナ服・・・・・・孫策だ。
「やっほ〜♪一月ぶりねライル♪」
「・・・・・・お久しぶりですな、孫策殿」
「ぶ〜ぶ〜‼ちょっとは嬉しそうにしてよね」
「あのね・・・・・・賊の討伐完了直後に現れたら誰だって同じ反応をしますよ・・・」
「そういうものなの?」
「そういうものです・・・で・・・何かご用で?」
「う〜ん・・・・・・なんとなく♪」
「・・・・・・帰りますよ」
「ちょっと⁉冗談よ冗談‼ちゃんと話があるから⁉」
細やかな仕返しは成功して、孫策は見事に慌てた。
「まあ、ここでなんだから、取り敢えずは私達の陣に来ない?ここから5里くらい行った所にあるんだけど・・・」
「ここでは駄目なのですか?」
「私はいいんだけど・・・・・・」
そういうと彼女は空を見上げる。上空には雲が覆いかぶさっており、湿気の臭いもする。少ししたら大雨が降ってくるだろう。
俺達は別に構わないのだが、女性を雨の中にいさせるのは流石に忍びない。そう考えたら彼女の陣に向かった方がいいだろう。
「分かりました、では私が陣に送り届けさせて頂きます」
「お願いね♪あっ‼それとこの前のカラクリってあるの?」
「カラクリ?」
「ほら、洛陽で別れた時に乗って行った・・・」
そう言われて記憶を掘り起こす。するとなんて事はない。あの時に見せたカラクリといえばハンヴィーしかない。
「はい、ここに来る際にも乗りましたが・・・・・・」
「(ワクワク・・・ワクワク)」
彼女は目を輝かせながらこちらを見つめてくる。あからさまに何かを望んでいる。それに気が付いた俺は溜息を大きく吐き出す。
「はぁ・・・・・・乗りますか?」
「うん‼乗る乗る‼」
まるで子供のように孫策は両手を挙げて、その場に飛び跳ねる。それも洛陽で出会った本人なのか、疑問に思うほどにだ。
「曹長、聞いての通りだ。俺は孫策軍の陣地に送り届ける。お前たちは先に駐屯地に帰還しろ」
「了解」
曹長に命令すると、俺は孫策を連れてハンヴィーに乗り込み、孫策軍の野営陣地へと向かって行った・・・・・・・・・。
孫策の案内で彼女の軍野営地に到着しらライル。そこで名高い武将達と出会う。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[孫策]
内乱の準備、確実に進む。