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第212話:朱千夏

諸葛一族が戦場に奇跡を起こす。

赤壁での戦いは膠着状態に陥っていた。数で勝る魏軍は各地で攻撃を繰り返しては退却。連合はそれに防戦で撃退。

一見すれば俺達が優勢に思えるが、実際にはその真逆で状況は日々俺達が劣勢へと追い込まれている。もしこの状況が続くなら先にこちらが息切れを起こし、やがては敗北する。


それが例えライル将軍達であっても全ての戦場を賄うことなど不可能。だから俺達には決定的な乾坤一擲の秘策と奇策が必要だ。


だけど俺にはそれを可能にすることが出来る手段が残されている。俺は主戦場から約8里ほど離れた場所にいた。


「朱里、夏雅里。準備はいい?」

「は…はわわ……だ…大丈夫です⁉︎」

「ふわわ…お…お姉ちゃん…緊張しゅるでしゅ…」


俺と妹である朱里と夏雅里は寺の一画を和尚から借りて、そこに祭壇を設けた。


俺達の服装だが、いつもの格好ではない。白が強調され、恰も巫女や神主を彷彿とさせる。この服は諸葛一族より代々受け継がれる祈祷装束。

更に手にはそれぞれ羽扇があり、白が基調の朱里が持つのが‘‘白羽扇”。

夏雅里が持つ黄色基調の羽扇が‘‘雷光羽扇”。

そして俺が持つ孔雀の羽を使った羽扇が‘‘雀羽扇”。

そして俺達の中央に置かれている祭器からは火が燃え上がり、辺り一面を照らす。


「ライル将軍達が必死に防衛線を死守してる。だから俺達もここで失敗する訳にはいかない」

「は…はい。この策は私達の祈祷で勝敗が決まります。ご主人様が一生懸命になって策を成功させたのに、私達が失敗するなんてことは許されません」

「ふわわ……だ…大丈夫でしょうか?」

「どうしたの夏雅里?」

「だ…だって……わたし…お姉ちゃんやお兄ちゃんみたいに失敗ばかりしちゃいましゅから……も…もし失敗しちゃったらって考えてしまいましゅ……」


そういいながら被っている帽子を深く被って視線を下にずらす夏雅里。この子は昔から奥手で自信が持てずにいた。


失敗するのが怖い。


みんなが傷付くことが怖い。


そんな気持ちを秘めた優しくて可愛らしい妹だ。俺は軽く笑いながらしゃがんで夏雅里を優しく抱きしめてあげる。


「ふわわ⁉︎」

「大丈夫だよ夏雅里」

「ふぇ?」

「大丈夫。俺達なら必ず成功させられる。夏雅里が心配に思えるのは、‘‘みんなが傷付いちゃうかもしれない”ってことだよね?」

「……(コクリ)」

「大丈夫……みんななら必ず無事に帰ってくる。なんせ俺の自慢の妹達が祈るんだから……絶対に神様にも祈りが届く」


出来るだけ安心させるように頭を撫でながら話しかける。


「だから夏雅里も自信を持って……お兄ちゃんが付いてるから……ね?」

「………はい。頑張りましゅ‼︎‼︎」


噛みながらも先程とは打って変って気合が入った返事をする夏雅里。思わず抱き締めたくなったが何とか耐えた。


「よし‼︎じゃあ始めよう‼︎」

「「はい‼︎‼︎」」


俺達は祭器を中心に3方向に分かれる。そしてそれぞれ羽扇を胸の前に持ってくると目を瞑り、祈りを始める。


「この地に眠る古代よりの神々よ。我等の願いを聞きたまえ」

「我等の同胞を護る盾を我等に与えん」

「我等の同胞に勝利の剣を我等に与えん」

「龍脈より舞い上がり、そのお力を我等に貸し与えられん」


3人の祈りが進むにつれて、祭壇より燃え上がる炎が更に強くなってゆく。


「どうか我等に味方を守護するが聖なる風を……」


朱里が祈ると炎が舞い上がり……。


「どうか我等に突き進む導きの風を……」


夏雅里が祈ると炎が猛り……。


「どうか我等に薙ぎ倒す勇猛の風を……」


俺が祈ると炎が走る。


そうしながら祈りを続けていると変化が訪れて来た。先程まで吹いていた北風がまるで渦を巻くように吹き始め、まるで方角を決めようと様々な方角けら吹いてきているのだ。


「我等諸葛一族の名のもと…」

「どうか我等に…」

「東南よりの風を…」


そして仕上げとばかりに俺達は同時に羽扇を高く掲げた。


「「「我等に東南の風を吹かしたまえ‼︎‼︎‼︎」」」


それと同時に炎が今までによりも猛々しく燃え上がり、やがて落ち着くと風は止まった。そして暫くしてから訪れた変化に俺達は驚きを隠せなかった。


「お兄ちゃん‼︎‼︎風が……風が吹きました‼︎‼︎」

「しゅごいでしゅ‼︎‼︎上手くいったでしゅ‼︎‼︎」

「あぁ……やった…風が…東南の風が……吹いた…」


後ろで朱里と夏雅里が手を取りながら喜んでいて、俺も加わりたかったが何とか堪えて、俺はすぐに本隊がいる方向へと向いていた。


「任せましたよ……ライル将軍…孫策様………黄蓋殿‼︎‼︎」


これで俺達の役目は終わった。後はみんなの活躍でこの戦の勝敗が決まる。

そして東南の風を用いる次の一手こそがライル将軍達が考え出した策の要…………黄蓋殿とサイファー殿……


俺は孫呉の道を切り開こうとする2人の宿将の武運を心で祈っていた……………。




東南の風は吹いた。これで連合の準備が整い、反撃に打って出る。

そしてライルが用意した‘‘切り札”に乗り込む祭とサイファー。赤壁の戦いは2人の活躍に掛かっていた。


次回‘‘真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[切り拓かれる道]

孫呉の宿将。一世一代の戦に赴く。

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