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第210話:ハットトリック

一刀による逸話の体現。着実に勝利への布石を固めてゆく。

遂に到来した蜀呉連合軍と魏軍による決戦‘‘赤壁の戦い”。いまの段階では赤壁の北側に曹操軍の大船団が布陣し、俺たち連合軍は南側に布陣。兵力差もある上に気候条件も北風を追い風としている向こうが有利な状況だ。


だけど魏軍に動きは見当たらず、少数の斥候と警備隊による小競り合いはあったものの本格的な戦闘には発展していない。


このことを朱里達に話すと結論は‘‘こちらの動きを伺っている”だ。


だったらこっちはその行動を逆手に取って敵の戦闘持久力を少しでも削ぐ為に行動を開始。俺と飴里は‘‘ある船”に乗り込んで長江を進んでいた。


「もうすぐで曹操軍の前衛と接敵するね?」

「あぁ、幸いにもまだこちらの動きには気付いていないみたいだよ」


船に揺られながら船内で酒を飲む俺と飴里。周りには竹や枝でしっかりと固定された大量の藁。それは船内だけではなく船全体を原型が分かる程度まで包まれた船だ。


はたから見れば何の船なのかは分からないが、俺達にとってこれは策をなし得る為に必要な一手の一つだ。


「月明かりしかない上に濃霧だしね。これで気付かれてたらそれこそ俺達に天命はなかったってことだよ」

「そうだね。だけどよくこんな手段を考え出すね」

「そうかな?別に俺じゃなくても飴里や朱里達だったら少し考えたら出てきそうだけど…」

「いや…確かに俺も敵の戦力を減らすやり方を幾つかは用意してたけど、流石にこんな大胆な策は考えられなかったよ。風向きと様子見を逆手に取って敵の弓矢をごっそり戴くなんて…」


俺が提案した策とは、かつて赤壁にて諸葛亮が周瑜からの依頼である10万本の弓矢をたった3日で揃えた逸話をそっくりそのまま利用した策だ。


「確かにかなり大胆だけど、この策は孫策達の次の策をする為の足掛かりになるからね」

「いま曹操水軍を指揮しているのは元荊州水軍の蔡瑁だ。奴がいなくなれば水軍の指揮能力は大きく削がれる」

「何万本もの弓矢を無駄に使ったとなると曹操は確実に怒る筈だから、更迭か処断は免れない……ちょっと可哀相だけど…」


これが普通の真面目な将だったら哀れに思えるけど蔡瑁なら話は別だ。なにしろ奴は桃香と桃香の従姉妹にあたる劉琦を殺そうとしただけではなく、荊州の民を苦しめていた輩だ。

そんな奴に憐れみなんか感じる必要はない。傍に置いている心龍双牙を軽く触れながら話していると、船尾にいた操舵手が歩み寄って来た。


「北郷様。そろそろ頃合いになります」

「うん、分かったよ。じゃあ予定通りにお願いするよ」

「御意」


それだけ伝えると操舵手は持ち場に戻っていき、少ししてから外から銅鑼の音が鳴り響く。これで敵にこちらの存在が知られることとなるが、こうでなければ話にならない。


銅鑼の音で曹操軍は警戒態勢に入り、甲板ではこちらの弓兵も各小隊長の指揮で攻撃体制に入る。そして先取を魏軍に向けたまま、弓兵隊は一斉に曹操水軍へと矢を放つ。俺はその一部始終を小さな覗き窓から眺めていた。


「…やっぱり北風でこっちの弓矢は一切届かないか…」

「一刀君、そろそろ閉めた方がいいよ」

「分かってるさ飴里。弓兵も船内にすぐ退避させて」

「了解」


飴里もすぐに甲板の弓兵を船内ぬ退避させる。他の船でも同様の行動が行なわれ、甲板に残ったのは弓矢の鹵獲に欠かせない藁の束にでまかせの弓を括り付けた案山子。


そして退避が完了した直後、曹操軍からの反撃が開始される。前衛の船団より雨のような弓矢が一斉に降り注がれ、瞬く間に案山子と藁の束はハリネズミみたいに矢が突き刺さっていき、瞬く間に船首は弓矢だらけとなる。


「よし、じゃあ右旋回の銅鑼をお願い」


弓矢が降って来なくなったことを確認したら次は船を右旋回させて矢が突き刺さっていない箇所を向ける。

魏兵からしたら再び矢を射ると勘違いするだろう。それを表すかのように間を置かず再び矢が雨のように降り注ぎ、次から次へと突き刺さる。


あとはこれをもう一回だ。今度は船体を左側面に向けて銅鑼を鳴らし、魏兵に攻撃させる。

これで前と左右には矢がこれでもかと言わせる位まで突き刺さった状態となり、これ以上は怪しまれる危険性があったので、俺達は1人の死者も出さないで悠々と連合軍本陣へと帰還した。




これを3日連続で実施し、突き刺さった弓矢を全て200本ずつを纏めて集計した。

幸いにも殆どがそのまま利用できる状態であり、その数は予定数値を上回る101,200本。これで俺達の戦闘持久力は高まり、逆に10万本以上の弓矢を使った魏軍は前衛での戦闘持久力が低下した。


加えて周瑜による彼女と旧知の仲である蒋幹を利用した離間の計に加えて、あえて一隻を曹操軍に流れ着かせたことにより蔡瑁と同じ役職の張允が曹操の怒りにより首を刎ねられた。


2人の処断により水軍の指揮系統に少なからずダメージを与えるという第1段階は完了。

俺とライルさんの描く‘‘赤壁の戦い”は着実に進んでいる。後の問題は‘風‘”…………。

一刀と冥琳の連携により魏軍の指揮系統にダメージを与えることが叶った。両軍による睨み合いが続く中、作戦は第2段階へと移行する。


次回‘‘真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[前哨戦]

呉蜀と魏の戦い。火花は突然生まれる。

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