第209話:駆け抜ける龍
龍を支える凪。彼から自身の不安を聞かされる。
再び動き出した華琳様。この国に泰平を齎す為に孫策とライル殿が待ち受ける呉に進軍を再開させた。
こちらの電撃戦で呉軍は敗走。無事に寿春と揚州一帯を制圧した。しかしすぐに軍備を纏めた呉軍は孫策を中心に赤壁と呼ばれる場所に大規模な水軍を向かわせたらしい。
そこで華琳様は一気に決着を着ける為に荊州水軍の全てを導入して大規模船団を構成。そのまま赤壁へと展開した。
私も隊長が指揮する船の廊下を歩いていた。
「すまない、少しいいか?」
「あっ、副長」
「隊長を何処かで見なかったか?」
「隊長ですか?確かに船首でお見かけしましたが…」
「そうか。すまない、作業を続けてくれ」
船内で作業をしていた兵に隊長の居場所を聞き、私はすぐに船首へと向かう。
敵よりいち早く展開できた我が軍だが、中原出身の者たちは船に慣れておらず、船酔いする兵が後を絶たなかった。そこで桂花様はこの辺りの漁師達に解決策を聞き出し、船と船を鎖で繋いで陸みたいにした。
これで波が来ても微動しかせず、船酔いする者たちは激減した。
先程の兵はその保守点検にあたっていたのだ。
私が船首に続く扉を開けるとそこにお姿があった。船首の淵に腰掛け、月を眺めている隊長のお姿だ。いつもは束ねている銀色の髪を下ろし、黒い鎧と共に月明かりが反射して幻想的だった。
暫く見惚れていたがすぐに戻って隊長に話しかける。
「隊長」
「…………」
「…隊長?」
「んっ……凪か?」
ようやく気が付いた隊長は私に振り向いたが、どこか思い悩まれておられるようにも見えた。
「隊長……どうかなされましたか?」
「なにがだ?」
「隊長…いつもの悪い癖が出ておられます」
「癖?」
「はい……隊長はなにか悩まれると必ず髪を下ろされます」
そういうと隊長は自分の髪を触る。そして軽く私に微笑んでくれた。
「………本当だな」
「どこかお身体でも?」
「いや……ただ少し考え事をしていてな…」
「考え事…ですか?」
「あぁ……随分と私は遠くに来たと………それまでに散って行った同胞のことを思ってな…」
「………はい。これまで付き従って残ったのは自分と沙和と真桜のみとなってしまいました」
これまで私達は数多くの部下を失った。そして先日の寿春攻略戦で私達と同じ位に長く付き従っていた部下が散った。
「………凪…これでよいのか?」
「……………」
「私は…多くの犠牲の上に立っている。指揮する者としての宿命なのは分かっている。だが……」
そういいながら隊長は立ち上がる。
「…死んでいった部下が私のことをどう思っているのか…不安なのだ」
「不安…ですか……」
「あぁ…私は彼等を生きて故郷に帰してやると約束した。だが彼等は帰れなかった。約束を守れなかった私を恨んでるだろうか……それとも呆れているか…」
「隊長」
「………私もいずれは彼等の下に行くことになる。その時に私は彼等からの仕打ちを受けなくてはな「隊長‼︎‼︎」……」
隊長の悲しそうな表情に我慢できず、背中に力強く抱き付いた。
「隊長……どうかそれ以上は言わないでください…」
「……………」
「私は……散って行った者達が隊長を恨んでいるとは思えません…そうでも無ければ隊長について来る筈がありません」
「…………」
「死んでいった部下達も…天で隊長を見守ってると思います……それに私も…」
「……」
「私も………隊長だからこそ隊長に着いてこられて来たのです…」
「……そうだな……私は…ただ…駆け抜けるだけだ」
それだけいうと隊長は振り返り、優しく私を抱き締めて来た。
「た……隊長…」
「すまん…余計な心配をかけてしまっていたな……」
「………本当です」
「凪……この戦…勝つぞ」
「…………はい」
私も隊長にしっかりと抱きつき、隊長も私をしっかりと抱き寄せてきた。その隊長の温もりを感じ取る為に暫く満喫する。
そして翌日、我が軍の前方に呉蜀連合船団が確認された…………。
何とか赤壁に布陣した連合軍。だが既に有利な場所は曹操軍に抑えられており、先手を打たれていた。
そこで敵の戦闘力を少しでも削る為に一刀と飴里は奇策を繰り出す。
次回‘‘真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[ハットトリック]
赤壁の奇策、ここに実現。
*台詞のネタ
ガンダム0083 スターダストメモリーにてガトー少佐とカリウス軍曹の会話をベースとしました。