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第205話:雪蓮

ライルが遠征している頃、建業にいる雪蓮に変化が訪れる。

晴れ渡った昼下がり。私は仕事の合間を貰って久々に食堂でお昼ご飯を食べていた。いつもなら侍女が持って来てくれるんだけど、今日は私の大好物の揚州炒飯だって聞いたから食べに来た。



なんだけど・・・。


「うぅ〜・・・なんだか食欲が湧かなかった・・・」

「あれだけ間食すればそうなるに決まっているだろ?」

「そうですよ、お姉様」


なぜか半分くらいしか食べられなかった。前までなら普通に完食できたんだけど、少し前から半分しか食べられなっていた。残すのは作ってくれた人に申し訳ないから一緒にいた冥琳と華蓮に食べてもらった。


「でもお姉様。最近になってから間食が増えましたよね?太っちゃいますよ?」

「それは分かってるんだけど・・・なんだか妙に酸っぱいものが食べたくて仕方が無いのよ」

「酸っぱいものですか?」


最近になってから妙に酸っぱいものが食べたくて仕方が無いのよね。蜜柑は確かに嫌いではないけど格別に好きという訳でもない。

多く食べたとしてもせいぜい1日4〜5個くらいなんだけど、最近は20個近くを食べてる気がする。


一週間前から蜀との軍事合同演習で遠征をしているライルから貰った凄く美味しい蜜柑なんだけど流石に食べ過ぎているわ。


「蜜柑は確かに美味しいですけど食べ過ぎは身体に悪いですよ」

「しかし何でこう毎日のように蜜柑を欲しがるんだ?普通なら食べ飽きる筈だが・・・」

「それが分かったら苦労しないわよ。流石の私も今回は勘が冴えないわ」

「・・・・・・それは本当か?」

「えぇ、おまけに月のものも来てないし・・・なによりも食べると・・・・・・・・・うぷっ⁉︎」

「雪蓮?」

「お姉様?」


いきなり気持ち悪くなって私は口を手で塞いで我慢しながら急いで厠へと向かう。少し間をおいてから後を追うように2人も駆け出す。


「・・・ふぅ・・・」

「大丈夫か雪蓮?」

「お姉様・・・なにかご病気なのですか?」

「心配ないわよ2人とも。ちょっと戻しちゃっただけだから・・・」

「ダメですよ。もしかしたら本当に何かの病気かもしれませんから、いちど私が診察します」

「本当に大丈夫♪ただちょっとびっくりしちゃっただけだから♪」

「調子が悪い人に限ってそういうんですよ。だから私が診ますからしっかりと治療を受けて下さい」

「ぶ〜ぶ〜‼︎冥琳もなんとかいってよ〜‼︎」

「雪蓮。悪いことは言わないわ。華蓮様の治療を受けなさい」

「そうですよ。それにもうお姉様の身体はお姉様だけのものじゃないんですよ。もし何かあったりしたらライル様が悲しんじゃいます」

「うっ・・・だ・・・だから本当に「「受けなさい‼︎‼︎」」・・・はい・・・」


2人の気迫に負けて仕方無く華蓮の診察を受けることになった。その間にも華蓮はブツブツと考えていた。


(食べる毎に戻して月のが来てない・・・それで酸味があるものを食べる・・・・・・まさか・・・)


考え事をしている華蓮の後に続いて私はそれに続いて医務室へと入る。因みに冥琳は外で待つことになった。診察そのものはすぐに終わる。

流石に治療を受けたからその診察結果が気になってしまうのは心理かしら?


「・・・・・・・・・」

「で・・・どうだったの?」


私がそう尋ねると華蓮は軽く笑って私の手を取りながら小さく力を込める。


「お姉様、落ち着いてよく聞いて下さいね」

「な・・・なに?」

「・・・・・・おめでとうございます‼︎」


いきなり祝いの言葉を伝えられて思わず困惑してしまう。しかし華蓮はそれに気にもせずただただ喜んで手を振るう。


「ちょ⁉︎だ・・・だからどうしたの⁉︎それになにがめでたいのか説明してよ⁉︎」

「これが喜ばずにはいられませんよ‼︎あぁ‼︎お母様とお父様がいたらどれだけ喜ばれるか・・・」

「だ・・・だから教えてってば⁉︎」

「出来ちゃったんですよ‼︎‼︎雪蓮姉様のお腹の中に赤ちゃんがいるんですよ‼︎‼︎」


華蓮の言葉に私は耳を疑った。たしかにいま私のお腹の中に私の子供がいるといった。何かの聞き間違いかと思ったけど、そうでもなければ華蓮の嬉しさが説明できない。


「・・・えっと・・・・・・か・・・華蓮・・・誰のって?」

「嫌ですよ♪とぼけちゃって♪お姉様とライル様の子供に決まってるじゃないですか♪」

「わ・・・私とライルの・・・子供・・・」

「そうですよ♪あぁ〜♪愛の結晶が出来るなんて羨ましいです♪」


私は何気無く自分のお腹を触る。すると微かにだが新しい命の気を感じ取れる。それもライルの気も混ざっていて、これが私とライルの子供だということを表していた。


本当なら私も望んでいたことでもあり、喜ぶべきだけれども・・・・・・。


「こうしちゃいられません‼︎早く演習に行ってるライル様にお知らせしないと「華蓮」はい?」

「・・・このことは・・・ライルには黙っていてくれないかしら?」

「えっ?」


・・・今は喜んではいられない。予想すらしていなかった言葉に華蓮は膠着してしまっていた。


「な・・・なんでですか⁉︎」

「今は魏との戦いが控えているのよ・・・みんなに余計な気遣いを掛けさせたくはないのよ」

「で・・・でも⁉︎ライル様はきっと喜ばれますよ⁉︎ライル様はお姉様のことを本当に愛して「だからこそよ」・・・」

「私も・・・ライルには知って貰いたいし、ライルの子供を産みたい・・・だけどもし今しってしまったらライルは戦いに集中出来なくなるかも知れない・・・」

「・・・・・・・・・」

「ライルには私から時期を見計らって教えるわ・・・だから今はこのことを胸に閉まっておいて・・・・・・お願い・・・」

「お姉様・・・・・・分かりました・・・」


そういいながら華蓮は診察結果が書かれた紙を細かく破る。


「お姉様の病状は‘‘単なる食べ過ぎ”。時間は掛かりますけど放っておけば完治します」

「・・・ありがとう」


そういいながら私は華蓮の部屋から退出する。出来ることなら私もライルには知って貰いたい。だから時期を見計らって魏との戦いがなさそうだったら伝える筈だったけど、それは暫くは叶いそうにもなかった。


約一ヶ月半の軍事合同演習を終えてライルが呉に帰還してから暫く経過したある日、寿春方面軍からの伝令で私達は忙しくなった。






‘‘曹操軍が大規模な軍勢を率いて南進を開始。寿春は陥落寸前”






曹操が再び動き出した。敵の狙いは寿春の制圧。破竹の勢いと戦力差を覆すことが不可能と判断した雪蓮は寿春からの撤退を命ずる。

殿を務めることとなった優龍も味方を逃がす為に立ち塞がる。


次回‘‘真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[寿春撤退戦]

呉の牙門旗狩り、魏の大軍に立ち塞がる。

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