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第204話:月夜の音色

寝苦しい夜。涼みに出てきた蓮華はそこで1人の少女となる。

その日は久々に蒸し暑い日になっていた。季節が夏だというのもあるけれど昨日は雨が降ったというのもある。

その蒸し暑さも加えてここ建業は真夏になると本当に暑い。そこに湿気も混ざったら交州にも負けない位の暑さになるから、過ごしにくい。


「ふぅ・・・やっぱり外はまだ涼しいわね」


私は暑さで寝苦しかったので外に出て風当たりがいい城壁へ涼みに向かっていた。寝汗をかいて気持ち悪かったので寝巻きを新しいものに着替えてからだけど。


「だけどたまにはゆっくり月を見てお酒を飲むのもいいわよね。姉様に見つかったら大変だけど・・・」


私は小さめの酒壺と湯のみを片手に城壁へと続く階段を上がる。すると中間あたりで何かが聞こえてきた。


「これは・・・・・・笛?」


聞こえてくる透き通った音色。すぐに私はそれが笛の音色だと理解した。そのまま音色に誘われるように城壁へと上がって辺りを見渡すと少し先でその音色を醸し出している張本人を見つけた。


「・・・レオン?」


笛を吹いていたのはレオンだ。小さな蝋燭と月明かりに照らされ、硝子の湯のみに注がれたお酒。

更に目を閉じて笛の音色を巧みに操るその姿は幻想的で、どこか切なかった。しかし私は惹きつけられ、自然とレオンに歩み寄っていた。


「レオン」

「ん?・・・蓮華か」


笛に集中していたのか、私に話し掛けられるまで気がつかなかったようだ。


「どうしたんだ?こんな夜更けに・・・」

「ちょっと寝苦しかったから風に当たりに来たのよ。レオンこそどうしてここに?」

「似たようなもんさ。今晩は特に蒸し暑いからね。となり座るか?」

「えぇ。ありがとう」


そう言われてレオンはすぐに私が座れる程の場所を空けてくれて、私はそこに腰掛ける。


「レオンって笛を吹けたの?」

「あぁ、最近になってから中佐に勧められて始めたんだ。まだ中佐のようには上手く吹けないけどね」

「そんなことなかったわ。透き通ってて綺麗な音色だったわよ」

「はははっ。そう言ってくれて嬉しいな。ありがとう」

「私もたまに冥琳に二胡を教えて貰ってるけど、中々うまく弾けないわ」

「へぇ・・・」

「・・・なに?その意外そうな顔は?」

「いや・・・いいことを聞いたと思ってね。それよりもそれは酒か?」

「えぇ。一緒に飲む?」

「じゃあ・・・お言葉に甘えて」


私はレオンの湯のみに持って来たお酒を注ぎ、そのお返しとしてレオンは私の湯のみに自分の酒を注ぐ。

そのあとに湯のみで乾杯し、それを一口だけ飲む。


「美味しいお酒ね」

「あぁ。自慢の酒だからね。飲み慣れて無い人でもこれなら対して酔わずに済むんだ」

「そうなの?だけど飲み過ぎは出来ないわね。二日酔いにでもなったら明日の業務に影響が出ちゃうし、姉様に説得も出来なくなるわ」

「ははっ・・・相変わらず真面目だな?」

「相変わらずは余計よ」


そんな話をしながら自然と笑顔になる。ライルもそうだけどレオンも不思議な雰囲気を出して皆を惹きつける。

普段から常に明るく、何処か軽い一面もあるけれど民や仲間のことを大事に思う熱い一面や知略と武勇にも優れてる。


本当に不思議な人だ。


だから色んなことを知りたくなる。レオンの生まれ故郷や家族、軍に入った理由やレオンの素顔なんかも知りたい。


私の事をどう思っているのかも・・・・・・。


「・・・・・・ねぇレオン」

「なんだ?」

「す・・・少し貴方に聞いてみたいことがあるのだけれど・・・」

「どうしたんだ?急に改まって・・・」

「べ・・・別に深い意味はないわ・・・・・・だ・・・ダメ?」


私は顔を赤くさせながらレオンに問いかける。ただ聞いてみたいだけなのに我ながら恥ずかしい・・・。

するとレオンも顔を赤くさせながら話し始める。


「そ・・・そうか・・・・・・それで・・・何が知りたいんだ?」

「そ・・・その・・・・・・レ・・・レオンは私のことをどう思っているの?」

「・・・・・・はい?」

「だ・・・だから・・・・・・レオンは私のことをどう思ってるの?」

「・・・・・・プッ‼︎」

「わ・・・笑わないでよ⁉︎」

「い・・・いやぁゴメンゴメン♪印象か・・・・・・そうだな・・・」


顎に手を当てながら考えるレオン。


「真面目で一生懸命。一緒にいるとこっちも勇気付けられる・・・そんな感じだな・・・・・・だけど・・・」

「だけど・・・なに?」

「無茶をしすぎるというか・・・真面目だけど何処か危なっかしい。個人的にももうちょっと自分に素直になって欲しいな」

「・・・悪かったわね。素直じゃなくて・・・」

「拗ねないでくれよ。だけど素直になって欲しいってのは本心だね」


そういいながらレオンは私の手をとってこちらを見る。思わずドキドキしてしまい、顔が赤くなりそうだけれど視線を少し逸らして何とか悟られなかった。


「蓮華、よく聞いて欲しいんだ。君は初めて出会った時からだいぶ変わった。前は無鉄砲で誇りに固執したヒヨッコだったけど、今では中佐や少佐達も認める立派な指揮官だ。それは誇っていい。だけど・・・」

「・・・・・・・・・」

「だけど・・・もう少しだけ自分に素直になって欲しい。せめて戦いや業務がない時は‘‘蓮華”という少女になってくれ」

「私という・・・少女?」


今なら何と無く解る気がする。昔の私は孫家の次女という誇りに似合うことに意識しすぎて皆を危険に晒していた。

だから昔とは変わった私なら、レオンの言葉の意味が解る気がする。


「・・・・・・ねぇレオン」

「なにかな?」

「一つ・・・お願いしてもいい?」

「いいよ。なに?」

「その・・・笛を聞かせてくれない?」

「笛を?」

「うん・・・ダメかしら?」

「・・・喜んで」


そういいながらレオンは笑い、その場に立ち上がると笛の吹き口に口を添えて吹き始める。

どこか優しくて懐かしさを感じる音色。身体全体を使って表現し、月明かりに照らされたその姿は神秘的で、まるで彼がどこか少年のようなあどけないように思えた。


それを見ている内・・・・・・いえ。


前から私は気付いていたわ。だけど自分に素直じゃなかったから気が付かないフリをしていた。私は・・・・・・・・・。


(・・・あなたが好き・・・)




蜀と呉の同盟強化を目的とした合同演習が行なわれている中、建業で留守番となった雪蓮と祭と華蓮。

久々に食事をしながら話していると雪蓮に変化が・・・。


次回‘‘真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[雪蓮]

孫呉の祈願が訪れる。

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