第191話:ファイアストーム 後編
孫呉内乱。ここに終結。
「久しぶりね・・・・・・孫静叔母様」
俺達が孫静の罠に嵌って包囲された状況に突入口から雪蓮が南海覇王を片手に駆け付けて来た。既に彼女は多数の敵を葬っているようであり、南海覇王を含めて彼女の身体には返り血がびっちりとこびりついていた。
孫静を含む敵部隊はそっちに目線がいっていた。それを俺達が見逃す筈もなく、HK416を背中に預けてショートグレイブを両方とも取り出した。
「突っ込むぞ‼」
『了解‼』
そう指示すると部下達はそれぞれの得物を片手に突撃を開始する。
「はあぁあ‼‼」
「ぐはっ⁉」
「ぎゃっ⁉」
敵の懐に飛び込んだ俺は、まず手前にいた敵を雷で切り裂くとそのまま回転しながら雪の石突で腹に一撃を加え、振り上げるように敵を切りあげる。
「ひ・・・怯むな‼奴を討ち・・・ぎゃっ⁉」
「あら?私を忘れないで欲しいわね」
いつの間にか俺のすぐ側に来ていた雪蓮も近くにいた敵の腹に刺突を見舞って葬り、それを一気に引き抜くと振り上げ、立て続けに振り下ろす。
そのまま舞うように左右上下の斬撃で敵を次々と薙ぎ払う。彼女の活躍に負ける訳にはいかない。俺はショートグレイブを両方とも弓を構えた敵兵に投げ付け、そのまま敵の命を奪う。
「いい武器だ。借りるぞ」
倒した敵が持っていた手斧を構え、そのまま破壊力に任せて敵を文字通り吹き飛ばす。俺は何らかの理由でショートグレイブが使えない場合に備えて複数の武器を使えるように訓練している。
刀に斧、弓、方天戟、更には双鈎や九歯鈀。これまでに6つの武器が使えるようになり、現在は撃剣も鍛錬している。
敵を薙ぎ払いつつ、ショートグレイブの側まで歩み寄ると周りにいた敵に手斧を投げ付けると一気にショートグレイブを抜き取り、再び舞うように敵を薙ぎ払う。
「中佐達に遅れるな‼俺達も敵に食らいつくぜ‼」
「応っ‼」
「殺ってやるぜクソッタレ‼」
横目で部下達もOKC-3Sや呉鈎一型、自身の得物である槍や朴刀で敵を倒していた。
ただ斬りつけるだけではなくCQCや体術を組み合わした戦い方を見せており、日々の訓練を怠っていない証拠だ。俺は嬉しく感じつつも雪蓮と共に向かって来る敵を倒していった。
「な・・・何をしておる⁉早く奴らを仕留めぬか⁉」
「じ・・・冗談じゃねえ⁉俺はもうあんなバケモノなんかと戦いたくねぇ⁉」
「や・・・やめてくれ⁉俺は降伏するぜ⁉」
「俺も降伏する⁉」
俺達の戦いを目の当たりにして、戦意を失った敵兵が次々と武器を捨て始め、それを確認した部下達に拘束させていく。
「お・・・お主等⁉あれだけ大金をつぎ込んだというのに妾を見限るのか⁉「やはりそういうことか」ひぃ⁉」
勝手に降伏していく傭兵達を避難する孫静に俺達は怒気を込めながら睨みつける。
「なにが“雪蓮はただ戦いを無闇に広げているだけだ”だ・・・貴様がただ金を使って戦を拡大させている張本人じゃないか」
「う・・・うるさい⁉お・・・お主等・・・自身が既に負けることを知らぬようじゃな⁉今頃妾の船団が建業を制圧「あら?それも無理よ叔母様♪」な・・・なんじゃと⁉」
「確かに長沙方面の船団も叔母様に加担しちゃってるけど、そんなのごく一部。あなたに不満を持ってた人達はすぐ私達に降伏したわ」
「な・・・なんじゃと⁉」
「それに連絡があった。生きた的が俺達の基地に出現したを海岸で全滅させたらしいぞ」
この報告は少し前に入って来ていた。なんでもヴェアウルフに長沙方面から向かって来た敵性船団が上陸してきたが、地雷原と城壁に設置されている対地防御火器に流用したVADS(Vulcan Air Defense System)と2連装艦船搭載タイプのM2により簡単に壊滅させられた。
この時代では難攻不落どころではないレベルを誇る防御力を誇るのだ。そんな程度の戦力で陥落させるなど舐め切っているとしか言いようがない。
自身の船団が壊滅したことを聞いた孫静はショックが隠せないようであり、徐々に後ろに下がっている。
「さて・・・外にいた奴等も大半が降伏してるし、最早お前に味方する奴等はいなくなった。つまりは・・・」
「あなたの負けっていうことよ・・・謀反人孫静 幼台‼」
「くっ⁉」
俺達はそれぞれ南海覇王とショートグレイブの鋒を構える。すると孫静は恐怖に駆られたのか、後ろの通路へと走っていった。逃げ出したので俺はグレイブを突き刺してHK416を構えるが、雪蓮がそれを静止した。
「逃がすか‼「待ってライル」雪蓮?」
「ライル・・・それを貸して」
そういうと雪蓮は俺からHK416を奪うように手に取り、若干戸惑いながらも構えてTrijicon ACOG TA31 ECOSを覗き込む。
「裏切ったとはいえ、孫家の一員だった・・・だからせめて私の手で・・・」
「・・・・・・分かった・・・使い方は前に教えた通りだ。落ち着いて狙え。君なら大丈夫だ」
そういいながら彼女は照準を孫静に合わせる。そして深呼吸すると息を止めた。
「叔母様・・・・・・これが・・・手向けよ」
それだけ言うと雪蓮はHK416のトリガーを引き、5.56mm弾が撃ち出される。銃弾は真っ直ぐと飛来していき、孫静の後頭部を貫通。孫静の身体は廊下に音を立てながら倒れてピクリとも動かなくなった。
「・・・・・・ヘッドショット確認。いい腕だ」
「ありがとう」
それだけ言うとHK416を俺にHK416を返し、代わりに南海覇王を抜刀して掲げた。
「敵総大将孫静‼孫家当主孫策が討ち取った‼‼」
勝利宣言をすると俺達はそれぞれの武器を掲げて勝鬨を挙げた。
この勝利により反乱軍は瞬く間に壊滅。降伏が続々と続いて呉内部における内乱は終結を迎えた・・・・・・・・・。
定軍山に急襲を実行した一刀と露蘭。予期していなかった兵法により混乱する魏軍。露蘭はその中で従兄妹である夏侯淵と対峙する。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[夏侯の名を持つ者達]
2人の夏侯が火花を散らす。