第19話:戦士に対する愚弄
虎牢関に攻撃を開始した袁紹軍だが、3度にも渡って駆逐される。そんな状況に対して袁紹は取り返しのつかないことをやらかしてしまう。
泗水関での時間稼ぎが十分だと判断した俺達は関を放棄。後方に位置する恋率いる第1師団が守備を固める虎牢関に退却した。
虎牢関は正史でもその地形が攻を奏して守るに容易く、攻めるに困難という強固な守備力を誇る。しかも泗水関を守っていた第3師団と第4師団もほぼ無傷の状態で合流を果たしたので総戦力は8万。しかも董卓軍兵士の練度は高い水準を誇り、防御力は屈指とされる。
泗水関を制圧した連合軍では次の虎牢関攻略が話し合われていたが、総大将の袁紹が“ブ男が指揮する雑魚集団の劉備軍と田舎者の孫策軍に退却した董卓軍はメチャクチャ弱い”という世間知らずにも程がある発言と総大将という形だけの地位で虎牢関攻略の第一陣をするといいだした。
そして制圧から3日後、袁紹軍は第1次攻略を開始したが失敗。第2次攻撃も全く同じ地形を無視した人海戦術を使用して失敗作。
第3次攻撃は流石に戦術を変更して攻城兵器の衝車を繰り出したが、俺達のFGM-148BとMk153 SMAWを用いた攻撃で近付かれる前に殲滅した。
袁紹軍陣地では自分の思った通りにことが進まないことで袁紹は部隊長の兵士に八つ当たりしていた。
「貴方達は何をされていますの⁉あんな関1つ陥落させるのに何を手こずっていますの⁉」
『も・・・・・・申し訳有りません・・・』
「全く・・・これだから私の軍に“無能”の男をおくのは嫌なのですわ・・・・・・無駄に損害が大きくなるだけですわ‼」
その場にいた全員が心の中で同時に叫んだ。“どっちが無能だ・・・”と。
確かに一番損害を受けたのは第1次攻撃の際に袁紹が指揮する部隊だからだ。何しろ攻城兵器も持ち要らないただ単の突撃なのだから。
「もうよろしいですわ‼明日の攻撃の指揮は私が執りますわ。しかしどうやって虫けらを屈服させましょうか・・・・・・」
「袁紹様、こんな手段は如何でしょうか?」
かなり肥えた武官と思う男が袁紹に耳打ちすると、袁紹は不快な高笑いをする。
「お〜ほほほほ‼素晴らしい手段ですわ‼これで袁家の名前を全土に轟かせて見せますわよ‼」
そういうと袁紹軍は明日の攻撃に備えて準備をする。そして全員が後で後悔することとなる。“ここで止めておけばあんな事にはならなかったかも知れなかった”と・・・・・・。
翌日、虎牢関前に現れた袁紹軍。しかし今日はいつもと容姿が違う。俺達が様子を伺っていると目の前に現れた“それ”で驚きを隠せなかった。
「なんなんや・・・あれ・・・・・・なんなんやあれは⁉」
霞が大声で叫んでしまった。目の前に現れたのは柱に縛られた霞や嵐、恋、ねねの部下達6名の死体。これまで行なわれた3回の攻防戦で戦死した兵士だ。恐らくはこの愚弄を行なう為に袁紹軍が確保したのだろう。
その光景を見て全員が怒りを露わにする。
「あれは・・・私達の部下⁉」
「あいつらあれでも人間か!どっちが悪やっちゅうねん!」
「あいつら…コロス」
「やつら、人じゃないです‼」
霞達は自分達の部下があんな晒し者にされて怒りを露わにする。この時代では戦死した兵士の遺体とは敵味方関係無く慎重に埋葬しなければならないのに、奴らがやらかした愚策はもっての他だ。
しかしそんな状態で最前線で聞いているだけで火に油を注ぐ。
「虎牢関にいる“愚民共”の皆さん‼早く門を開けて降伏しないとこちらの“生ゴミ”のようになりますわよ‼・・・やっておしまい‼」
『応‼』
袁紹の指示で武官が剣を取り出してその死体の両腕と両脚、更には首を斬り落とした。
『!!!!』
「こうなりたくなかったらさっさと降伏なさいな‼お〜ほほほほ‼」
高笑いをしながら袁紹は後方に戻って行く。しかし袁紹軍に対する怒りは頂点に達していた。それは俺達も我慢の限界に達していた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・ライル」
「・・・中佐」
「分かっている・・・アレックス少佐‼レオン大尉‼」
物凄い怒気を込めた声で俺が名前を呼ぶと2人も踵を鳴らして直立不動の姿勢をする。その表情も俺と同様に怒りに満ちていた。
「全部隊に通達‼奴等を攻撃するぞ‼あのクソッタレ共を皆殺しにしろ‼一切の情けを掛けるな‼負傷した奴、降伏する奴、怯む奴、逃げ出す奴、一切関係ない‼奴等の返り血で雪を染め上げてやれ‼」
「「Sir yes sir!!!!」」
大声で返答するとアレックスはMk46 Mod1と髑髏、レオンはHK417と彼専用の得物である大剣“龍舌”を背中に背負う。
「霞‼恋‼嵐‼ねね‼奴等を皆殺しにするぞ‼」
「よっしゃ‼やったるで‼」
「部下の無念‼代わりに晴らして見せる‼」
「恋・・・袁紹、殺す‼」
「あんなケダモノ連中‼絶対に許せないのですぞ‼」
そういうと霞達はそれぞれの得物を手にして、ねねは全体の指揮をするために持ち場につく。彼女達の表情も怒りに満ちている。
俺はMICH2001を被ってHK416+M26 MASSをスリングに繋げ、神斬狼を腕に装着すると城壁から飛び降りる。
「銅鑼を鳴らせ‼あのクソッタレ共にも聞こえる位に鳴らせ‼」
そういうと城門にいた兵士が銅鑼を力強く鳴らす。彼らの表情にも怒りが感じ取られる。
そして城門が開放されると俺を先頭に敵陣に突撃する。
「来たぞ‼・・・・・・な・・・なんだ・・・・・・?」
「お・・・狼・・・・・・」
無能な袁紹軍兵士でも俺達の怒気がはっきりと伝わる。そこにいたのは悪鬼も怯み、鬼人も逃げ出す神すらも恐れる“血に餓えた狼の群れ”がいた・・・・・・・・・。
ライル達の怒りに触れた袁紹。しかしそれは連合軍内部でも同様だった。
袁紹の下種としかいいようのない行動に一刀と孫策が問い詰める。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[二人の英雄と一人の屑]
二大英雄が愚者に問い詰める。