第188話:ファイアストーム 中編
銀狼が遂に裏切り者を見つけるが・・・・・・。
「ウルヴァリンからオールハンド。状況を報告しろ」
長沙本城に奇襲を仕掛けている俺達。出現してくる敵は排除したり、気絶させた状態でその場で拘束しておく。
ただ流石に敵の数が多く手を焼いている状態だ。だからその場合はスコーピオン隊による支援射撃を要請。固まっている敵部隊を一網打尽にしながら孫静捜索を継続中だ。
<こちらハルバート2。兵舎で敵部隊と交戦中>
<ハルバート3。2チームに分けて東門と南門を閉鎖。敵兵十数名を捕虜にしました>
<ハルバート4から報告。西門閉鎖後に武器庫前にて交戦中。こちらが押してます>
<ハルバート5よりウルヴァリン。本城東南部の兵糧庫を制圧。C4を設置して爆破します>
作戦は順調のようだ。ハルバート各隊はそれぞれが与えられた任務を順調に消化していき、反乱軍を確実に疲弊させている。
攻城戦においては外から攻め込んで敵を倒すよりも、敵の武器庫や兵糧庫などの要所を制圧もしくは破壊して一枚岩ではない守備を内側から切り崩した方が上手くいくものだ。
特にこの長沙本城は大きく分けて玉座が存在する北部エリアに武器庫がある西部。
兵糧庫が点在する東南部、兵舎や詰所がある東部。そして宝庫の中央部という構造となっており、その周囲に高い城壁と見張り台に防御用連弩を配備させているようだ。
だから敵の攻撃が大きく制限される内側から仕掛ける。俺もHK416に新しいP-MAGを挿入して5.56mm弾を再装填する。
「了解した。こちらも西部武器庫を制圧した。これより玉座へと向かう。各隊は敵の増援と伏兵に警戒しつつ、任務を完遂しろ」
≪了解≫
「スコーピオン隊も引き続き上空から援護してくれ。ただし燃料が半分を過ぎたら補給に戻れ。了解か?」
≪了解≫
「頼りにしている。ウルヴァリン out」
無線から手を放す。そして城壁に残ってこちらを狙っていた敵の弓兵に照準を合わせて発砲。敵はそのまま城壁から落ちて身体を地面に叩きつけた。
「よし‼我々はこのまま玉座へと向かう‼あの陰気臭い野郎共を今日こそ片付けるぞ‼」
≪Hooah!!≫
「1-2はここに残れ‼敵が来たら航空支援を使え‼」
「了解です中佐‼」
「行くぞ‼」
HK416を構え、ハルバート1-1を引き連れて俺は玉座へと急行する。その道中には敵が待ち構えていたがHK417、HK416+M320A1、HK416+M26 MASS、M27 IAR、HK417 DMRから放たれる5.56mm弾と7.62mm弾、散弾に敵う筈もなく、次々と返り討ちにされる。
中には取り付いてくる奴もいたが、俺の二刀槍術や部下達のCQCにてこちらも返り討ち。
途中にあった部屋という部屋を片っ端から制圧していき、北部エリアに到着。玉座の間の入り口前に取り付いた。
「・・・駄目です。内側からロックされています」
「了解だ。軍曹、壁にC2を仕掛けろ。壁に穴を開けて突入するぞ」
「了解」
後方にいた軍曹が扉の左側にバックパックから取り出したC2を円形に仕掛ける。C2は旧式のプラスチック爆薬で、威力が低いことから室内突入用ツールとして使用している。
俺達は少しだけ離れて爆破の衝撃に備える。そしてリモートスイッチを握っている軍曹がスイッチを押すと仕掛けたC2が起爆し、そこに大人が軽く通れる位の大穴を作り出した。
「行け‼突入だ‼」
「Hooah!!」
俺達は銃を構えて室内に突入するが問題が生じた。それは玉座が俺が思っていたよりも広く、反対の壁付近には弓兵がこちらに向かって弓を構えていた。
しかもそれだけではなく、突入した付近からは剣や槍、戟を手にした敵兵が次々と出現し、突入口にも別の敵兵が出現。ようするに・・・・・・。
「中佐⁉」
「くそっ⁉囲まれた⁉」
俺達は完全に包囲されてしまったということだ。俺達は銃を構えつつ円陣を組んで各方角に殺気を浴びせる。すると玉座の一番奥から誰かが姿を表したが、誰なのかは直ぐに分かった。
「やはり来よったか」
「・・・・・・孫静」
雪蓮達の叔母であり、この反乱を引き起こした孫呉の裏切り者の孫静だ。相変わらず不敵な笑みを浮かべ、こちらを見下げるような視線で見てくるが俺はHK416の銃口を向けたままに保つ。
「ここで待っておれば必ず其方らからノコノコと顔を出すと思ったぞ。流石は伯符の飼い犬じゃ」
「ふん・・・きな臭い狐よりはマシだ」
「お〜お〜、怖い。じゃがその狐に囲まれておる犬はどこじゃったかのぅ?」
そういうと孫静は小さく笑い始める。それに釣られてか周りにいた敵兵も声を挙げながら俺達に対して馬鹿にし始める。
「しかし・・・妾は伯符みたいに無闇に手をあげたりはせぬ。大人しく武器を捨てて妾に降るがよい」
「・・・なにを言ってやがる?」
「妾達はこの国に大平を齎す善なる者よ。伯符や劉備、曹操は汚らわしく戦をしておるだけじゃ。見とるこっちが気分が悪くなりよる」
「・・・・・・・・・」
「じゃが妾はお主達にも救いの手を差し伸べてやろうぞ。妾に降り、その力を妾達の為に使うがよい」
「・・・・・・フッ」
・・・・・・聞いているだけで腹が立つ。思わずトリガーを引きそうになったが、それを必死に堪えて睨みつける。
「答えは聞くまでもないが「馬鹿めが‼‼」なっ⁉」
「言いたいことはそれだけか⁉さっきから黙って聞いていれば何をほざきやがる‼貴様こそ・・・いや‼貴様の方がただ民を苦しめて無益な戦いを広げているだけだ‼」
「なっ⁉・・・ぶ・・・無礼者‼妾を誰だと思っておるか⁉」
「孫呉軍人としての誇りを忘れ、民や家族を苦しめる偽善者野郎だろうが⁉」
「なっ⁉偽善者じゃと⁉」
「あぁ‼自分からは手を汚さず高みの見物しかしないクソ偽善者だ‼俺達や雪蓮達は民を守る為に危険を顧みない‼戦って明日を勝ち取る‼貴様のような腰抜けとは違うんだよ‼」
俺は持てる限りの怒気を周囲にいる全ての敵に浴びせてやる。敵兵はそれに思わず怯んで、孫静自身も小さく悲鳴をあげて身を縮ませる。しかしやがて身体を震わせながらこちらを睨み始めた。
「・・・よう分かった・・・・・・ならば妾は邪悪な其方らにせめてもの慈悲を与えてやろうぞ・・・・・・潔く散るがよいわ‼」
そういうと孫静は右手をあげ、それをみた弓兵は弓を構える。俺達もそれぞれの武器を構えて応戦の構えをみせる。そして・・・。
「放てい‼」
孫静が攻撃を指示した瞬間、突入口にいた敵兵が血飛沫を吹き出しながら吹き飛ばされる。いきなりだったので孫静達はもちろん、俺達もそれに驚いて振り向いた。
そこにいたのは頼もしい援軍でもあり、俺にとって掛け替えのない存在。逆に孫静にとって恐怖以外なにものでもない存在の・・・。
「久しぶりね・・・・・・孫静叔母様」
南海覇王を構えて裏切り者を粛清しにきた雪蓮だった・・・・・・・・・。
翠の危機に颯爽と駆け付けた飴里。その翠に深い憎しみを抱く蒼。互いの刃がぶつかり合う中、天蕩山に辿り着いた一刀と露蘭達も行動に移す。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[天蕩山からの奇襲]
一刀達、天の知識を使って魏に食らいつく。