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第185話:飴里

定軍山攻略の前に飴里は策を生み出す。

魏軍が漢中を手中に収める為に軍備を進めたという情報で急いで向かったが一歩遅かった。既に定軍山は魏軍により占領され、周辺には魏軍守備隊が展開していた。


仕方がなく俺たちは褒城に駐留。敵の動きを警戒しながら軍備を纏めていた。


「まずいな・・・・・・魏軍の動きがまさかここまで早いだなんて・・・予想外だよ。本当に・・・」


俺は報告書を片手に机の上に広げられた地図とにらみ合う。まだ基盤が固まっていないにしろ、敵の動きが本当に機敏でまさかこんな短時間で定軍山にまで進出してくるとは誰も思わない。

こちらも対応策として陽平関と武郷、そしてこの褒城の三つを結んだ防衛網を形成し、早馬で一刀君達にも援軍を要請しているがいつになるか分からない。


対して向こうは兵力で勝る上に情報によると長安から物資と兵員を送って来ており、いつまでもここにいると魏軍の守りが硬くなる。

攻撃を掛けるなら守りが整ってない今しかない。


「定軍山はまさに天然の要塞・・・高低差が激しい地形。険しい道に断崖絶壁の崖・・・・・・守るに容易く、攻めるに困難だ・・・・・・さて・・・どうやってこれを・・・ん?」


顎に手をあてながら考えていると不意に天幕の外から人の気配。俺は白虎を手にして警戒するが、それが誰なのか理解すると軽く笑いながら収める。


「ふぅ・・・・・・そんなところで立ってないで中に入ってきたらどうだい?・・・・・・雛里、夏雅里」

「「あわっ⁉(ふわっ⁉)」」


俺に言い当てられて、2人は相変わらず可愛らしい声を出しながら姿を見せる。


「あ・・・あの・・・・・・か・・・飴里様は何で私達がいると?」

「う〜ん・・・・・・何と無く・・・かな?」

「ふわわ・・・あ・・・相変わらじゅしゅごいでしゅ・・・」

「ははは・・・・・・それで・・・俺に何か用事かな?」


そういいながら2人は両手に持っていたお盆を前にだす。その上には彼女達が作ったであろう好物の肉まんと湯気があがったお茶だ。


「その肉まんは・・・どうしたの?」

「は・・・はい・・・・・・遅くまでお仕事してる飴里様に・・・」

「わ・・・私と雛里お姉ちゃんで作ったでしゅ・・・」

「俺に?」

「「そ・・・そうでしゅ‼あわわ(ふわわ)・・・噛んじゃった・・・」」


2人はお盆をもちながらいつものように噛む。その何とも可愛らしい光景に俺は先程まで自分が放っていた緊張感が和らぎ、2人に歩み寄って頭を撫でていた。


当人2人は相変わらずあわわとふわわを口にしながら照れていた。


「ありがとうね、だけど俺の方は心配ないから大丈夫だよ」

「ふわわ・・・で・・・でも飴里しゃま・・・・・・ここに来てからおやしゅみしてないでしゅ・・・」

「(コクリコクリ)魏が定軍山を奪取してしまったのは確かに大変ですが、少し休憩した方がいいです・・・」


そういうと2人は心配そうな表情をしながらこちらを見上げてくる。仕方無く俺は周辺の地図を片付けて雛里が持っているお盆の上にある肉まんに手を伸ばして口に運んだ。


「あの・・・お・・・・・・美味しかった・・・ですか?」


2人は感想が気になって心配そうな表情でこちらを見る。ゆっくり味わうと俺は笑みを浮かべながら彼女達に目線を合わせる。


「うん、皮生地はふっくらしてて、肉汁も染み込んでて美味しいよ」


率直の意見を述べると雛里と夏雅里は安心したようだ。


「さて・・・2人がこれ以上心配にならないように今日はこの位にしておくよ」

「あ・・・はい・・・じゃあ私達が持ちます」

「いいよ、自分で持てるから大丈夫だよ」

「ふわっ⁉私達もおてちゅだいしましゅ⁉・・・ふわわっ⁉」


2人が俺の荷物を持とうとした瞬間、夏雅里が服の裾を踏んでその場に転んでしまった。いつも姉である朱里より大き目の服を着ている彼女だ。その影響でよくこのように服を自ら踏んで転ぶことがよくある。


普通なら自分に合った大きさの服を着たら解決するのだが、その光景が一種の保護欲に駆られてしまう上に癒し系でもある。だから誰も服を小さくした方がいいと言えずにいるのだ。


「あわわ・・・だ・・・大丈夫・・・夏雅里ちゃん・・・?」

「ふわわ・・・お膝・・・しゅりむいちゃいました・・・」

「はは・・・災難だね夏雅里・・・」


夏雅里に歩み寄ろうとした瞬間、不意に視線が机の足に向いた。

そこには先程まで夏雅里が手にしていたお盆が奇跡的に立て掛けられた体勢にあり、机におかれていた湯呑が倒れて中に残っていたお茶が溢れてお盆に落ちていた。


「あ・・・あの・・・・・・飴里様・・・」

「えっ?・・・・・・あぁ・・・ごめん」

「あの・・・私は夏雅里ちゃんを連れて行きますから失礼しましゅ・・・噛んじゃった・・・」

「あ・・・あぁ・・・分かった。肉まんご馳走様」

「(コクリ)あ・・・ありがとうございます・・・・・・行こ、夏雅里ちゃん」

「あぅ・・・」


それだけ伝えると雛里はすぐに夏雅里を連れて本幕を出る。俺はそれを見送るとすぐに定軍山周辺の地図を机に広げて調べ事を始める。


「もし一刀君が言ってた“あれ”が使えるなら・・・・・・よし。いける・・・いけるぞ‼」


定軍山周辺の“とある場所”を確認し、魏への対抗策が思いついた。しかしこの手段は乾坤一擲でもあり、もし失敗したら俺達は退却するしかなくなる。


だが俺は負けるなんて全く考えていない。一刀君やライル殿が家族を信じるように、俺もみんなを信じる。

俺は策を巡らして定軍山攻略の手段を用意していくのであった・・・・・・。

長沙での戦いは熾烈を極めていた。茶子山方面でも数で勝る反乱軍とアレックス率いるウルフパック本隊を含む孫呉海兵隊による戦いが激化。

レオン率いるウォーランス隊も敵の真っ只中へと突撃を敢行する。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[陸の王者]

百獣の王と陸の王者が敵を喰らう。

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