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第183話:冷酷な妖花

牙刀に妖花が策を巡らせる。

ライル殿への謝罪を表す弔問、更に呉内部で孫静率いる反乱軍が結成されて孫策軍と内戦状態に突入したという報を受けて一月と少し。

我等は密かに軍備を整えて天水より出陣。漢中を我等の支配下にするべく最大の要所である定軍山へと進路を進めていた。


漢中とは漢の高祖である劉邦が立った地とされ、中山成王に連なる劉備と“天の御遣い”でもある北郷殿がこの地を制すれば戦略的にもこちらに不利となり、逆に向こうは名声も高まる。戦局的にはこちらが有利だが向こうも馬超や趙雲、更には未知数の力を有する徐庶がいる。予断は許されない状況だ。


だから我等は強行軍としてすぐに定軍山を陥落させ、蜀軍の援軍が到着する前に漢中を得る必要がある。

夏侯淵殿を大将とし、私も凪達と兵2000を引き連れて、もう一つの要所である陽平関にいた。


「凪、負傷者の後送は完了したか?」

「はい、既に大半の負傷者が後方に下がりまして、逐一交代要員が鄧艾様と共に到着する手筈です」

「沙和の方も新兵達の配備は完了させたの。負けてないから士気は高いままなの」

「攻城兵器の用意も大方完了してるで。試作品の移動式半自動連弩も残りの部品は鄧艾様が持って来てくれはるし、破城槌も数は少ないけど調整出来とるで」


我等4人は自分達の部隊内にある天幕に集まり、それぞれの作業状況を確認する。

陽平関を陥落させるのには大した時間は掛からず、攻撃開始から僅か2日で陥落させられた。しかし幾分かは問題も生じた。


「せやけど華琳様もなに考えてはるんやろな〜?」

「そうなの。出陣させる部隊を二線級部隊を中心にするなんてちょっとキツイの」


2人のいった通り、今回出陣させた将兵の大部分は後方部隊の兵士や新兵達で構成された謂わば“新調部隊”だ。合肥の戦いにてかなりの数の戦慣れした兵士を失い、あまり余力は無いのは致し方が無いが、流石に少ない。


「新兵を任されたのは仕方が無い。恐らくは実戦を立て続けに経験させて一人でも多くの将兵を鍛え上げたいというのだろう」

「確かに・・・呉との戦いでかなりの数の下士官達を失いましたから・・・」

「あんときはホンマに死ぬかと思たで・・・」

「沙和も聞いてたけど、江東の死神さんが一番怖かったの・・・」

「せやせや、あんとき神楽の姉さん等が来るん遅かったらホンマにうち等死んどったで」


確かにあの時は本当に危なかった。アレックス殿を始めとした孫呉軍の怒りは尋常ではなく、あそこまで簡単にあしらわれたのは初めてだった。しかし何時迄も過去のことを考えている訳には行かない。

私は別の竹簡に手を伸ばして、中に書かれている兵站関係の報告に目をやる。


「とにかく、新兵を少しでも生きて帰す為に兵站は途切れさせてはならん」

「そうですね。しかもここからは山岳地帯になりますし、大半が新兵ならば山岳での戦は知らない筈です」


新兵の他の問題とは我等は今まで山岳での戦は経験していないということだ。山岳地帯ならば兵站の確保は難しく、兵達の疲労もかなり高くなっている。一応は装備を軽歩兵用のものを配備してはいるが、それでも疲労はいがめない。

竹簡に署名するとそれを凪に渡した。


「凪、すまないがこれを夏侯淵殿に渡して来てくれないか?」

「分かりました」

「頼む。それが終わったら休んでくれ。真桜と沙和も各小隊長に伝達が完了したら休んでいいぞ」

「了解や♪」

「は〜いなの♪」


3人に指示を下すと彼女達は天幕を後にする。するとその入れ違いで再び天幕の入口から誰かが入って来た。


「相変わらず・・・賑やかね」

「王異・・・」


入って来たのは黒髪に白い肌。全体的に黒を強調した服。背中に二本の筆架叉を預けた女性・・・・・・司馬懿の副官の1人である王異だ。


「珍しいな・・・ソナタからこちらに赴くとは・・・」

「ええ、少し話があるのよ。いけなかったかしら?」

「そういう訳ではないが・・・何用か?」

「あなた・・・蜀軍の武将に誰がいるか知ってるかしら?」

「・・・うむ・・・・・・聞く限りでは徐庶に趙雲、それに錦 馬超と聞いている」

「そう・・・・・・ふふふ・・・馬超・・・」


馬超の名前を聞くと王異は不敵に笑い出す。


「・・・馬超・・・私の父を殺し、一族を滅ぼした女の子・・・・・・西涼の死神・・・ふふふ・・・やっと会えるのね・・・」

「王異?」

「徐晃殿・・・・・・あなた・・・私に付き合ってくれるかしら?」


いきなり王異が私の側まで歩み寄り、右手で顎を撫でてくる。私はそれを払って彼女との距離を広げる。


「・・・質問の意図が掴めぬ」

「あなたは部下を守り、1人でも多く故地に帰してあげたい・・・・・・違うかしら?」

「当たり前だ。彼らにも家族がある。そこに無事に帰してやるのが将の勤めだ」

「ふふっ・・・だから私に協力して・・・・・・代わりにあなたの手助けをしてあげるわ」

「・・・馬超を討ち倒す手助けをか?」

「察しがいいわね・・・その通り・・・・・・私は死神の首が欲しい・・・あなたは部下を1人でも多く家に帰したい・・・・・・利害は一致しているわ」

「・・・・・・その策とは?」

「協力してくれるのかしら?」

「・・・・・・・・・・・・部下を危険にさせる策は御免被るがな・・・」

「分かっているわ・・・・・・ふふふ・・・」


部下を危険に晒さないという条件で私は王異の策に協力することとした。


王異・・・かつて自身の一族を馬超に討伐された女。私はひとまず協力することにしたが油断ならないのも事実だ。


我が軍はその後も強行を続行し、蜀軍よりも先に定軍山を手中に収めることが叶い、蜀軍の攻撃に備えて守りを固める。


そして陥落から2日後、定軍山の隣に位置する挿旗山にて劉備軍が陣地を築いた・・・・・・・・・。

呉の内乱は膠着状態に陥っていた。神出鬼没でゲリラ戦を仕掛ける反乱軍に応戦する孫策軍。

互いが牽制しあう中、ライル達は遂に孫静の居場所を特定する。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[オペレーション“ファイアストーム”]

裏切り者に狼が駆けつける。

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