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第182話:翠の過去

翠が飴里に自身の過去と幼馴染について語る。

あたし達が漢中に布陣してから暫くが経った。その間にご主人様と一緒に見舞いに行ってた飴里も戻って来て、魏との戦いに備えてた。


漢中を超えた先にあるのはあたしや蒲公英の故郷・・・・・・涼州がある。あたしは陣地の馬小屋で愛馬である黄鵬、紫燕、麒麟の毛並みを綺麗にしてやると十文字槍の銀閃を担いで歩いていた。


「ふぅ・・・よし‼腹減ったから何か食べるか♪」


一先ず小腹が減って来たので食堂がある場所に行くと目の前に見慣れた奴がいた・・・飴里だ。しかも紙袋一杯で湯気が出ている肉まんがあった。しかも片手には美味そうな匂いを醸し出している肉まん。それを美味そうに頬張りながらこちらに歩いていた。


「ん?・・・やぁ翠」

「よっ♪な〜んか美味そうなもん持ってるな♪」

「だったら翠も一緒に食べるかい?流石に作り過ぎてちょっと困ってたんだよ」

「本当か⁉やっりい〜♪」


本当に今日はいい日だぜ♪飴里の作る肉まんは凄く美味いし、それでいて食感も柔らかいし何度食べても飽きが来ない。あたしは飴里の後に続いて向かった。





「ふぅ〜♪腹一杯だ♪」

「ははは・・・喜んでくれてなによりだね」


飴里の作った肉まんを存分に堪能し、あたしはお茶を飲みながら口直しをする。


「そういえば飴里ってライルさんに会えたのか?」

「ライル殿?・・・ああ。一刀君と露蘭、霞と一緒に会えたよ。噂以上に凄くいい人だったし、真名も預かってくれたよ」

「えぇ⁉もう真名を預けたのかよ⁉」

「あぁ・・・もしかして翠はまだだったのかい?」

「くっそ〜・・・・・・あの時にあたしも真名を預けとけばよかったよ・・・」

「ふふっ・・・翠はライル殿を気に入ってるようだね」

「なっ⁉ななななななな何いってんだよ⁉」

「そんなに隠さなくても・・・」

「あ・・・あたしは別にライルさんに真名を預け損ねてるだなんてちょっとも思ってないんだからな‼‼ホントちょっともなんだからな‼‼」

「ははっ・・・相変わらず翠は可愛らしいね・・・」

「!?@¥&♪#〆*☆(翠語発動中)」

「わ・・・分かった・・・分かったから少し落ち着こうか?」


ホントにもう‼ご主人様も飴里も意地悪だ・・・。


「全く・・・ご主人様も飴里もすぐあたしをからかうんだから・・・」

「ちょっと悪戯が過ぎたね・・・・・・あっ、そうだ。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「なんだよ?」

「いや・・・この間に確か花束を持ってたよね?」

「花束?・・・・・・あぁ、あれか」

「なんだか少し気になってね・・・無理にとは言わないけど・・・」

「あぁ・・・ちょっと・・・・・・墓参りをして行ってたんだよ」

「墓参り?・・・・・・母君?」

「いや・・・王氏のだよ」

「王氏っていうと確か・・・・・・漢中の豪族の・・・」


飴里の言葉にあたしは軽く頷く。


「あたし達がまだ涼州にいた頃に・・・朝廷から使者が来たんだよ」

「・・・王氏を中心とした王一族の漢に対する謀反・・・」

「そう・・・・・・謀反をした王氏と一族の討伐・・・それが漢王朝からの書状だったんだ。だから昔から王氏と関わりがあったあたし等が討伐を命じられたんだよ・・・」


あたし達馬一族が王一族の討伐をしたのは今から大体2〜3年前の話だ・・・。


「あたしと母様、蒲公英は一軍を率いてあいつ等が立て籠もってた剣門山に出兵したんだ。あたしはあまり乗り気じゃなかったけどな」

「君がかい?」

「当たり前だよ。敵になっちゃったとはいえ、王氏はあたしのことをよく面倒みてくれてたんだ・・・あたしと蒲公英からして叔父のような存在だったんだ・・・」

「だけど・・・君はそれを振り払って自らの任を全うさせた・・・」

「うん・・・だからあたしは今までの恩を返したくて王氏に一騎打ちをして勝った・・・だけど・・・」


あたしは湯呑を机において、言葉を軽く吐き出す。


「だけど・・・それを見た王一族の残りがあたしに襲い掛かって来て・・・・・・それで・・・」

「仕方なく・・・・・・全員を倒した・・・」

「うん・・・だけど・・・あいつだけはその場にいなかった」

「あいつ?」

「あたしの幼馴染で・・・・・・名前は・・・王異っていうんだ」

「王異・・・・・・聞いたことがある・・・勇猛果敢で才知に優れ、更に戦略家だけじゃなく武芸にも長けた女性だと・・・」


飴里の言葉にあたしは頷く。王異はあたしの幼馴染で、昔から武術だけじゃなく智略にも長けていて、更にあの綺麗さから周りから常に求婚が絶えず、妖精とも呼ばれていた。


「多分・・・あいつは私のことを恨んでると思う・・・」

「まさか・・・」

「ううん・・・絶対に恨んでるさ・・・・・・あいつは王氏が大好きだったから・・・その王氏と家族を倒したあたしを絶対に恨んでるよ・・・」


かつての幼馴染に恨まれる・・・・・・そう考えるだけであたしは辛くなってしまう。小さい頃いっしょに遊んだり、いっしょに飯を食べたり、いっしょに互いの母に怒られたりした。

そんな仲が良かった奴に恨まれるだなんて、辛くて仕方が無い。


「だけど・・・あたしは負けられないんだ・・・曹操から西涼を取り戻さないといけないし・・・ご主人様や桃香様が掲げた仁の世を叶えなきゃならない・・・だからもしあいつが向かって来るなら受けて立ってやる」


そういいながらあたしは握り拳を作ってギュッと握る。

今のあたしは蜀軍に身を置く白銀の槍、錦馬超。仲間や蜀に仇なす悪人共や敵はあたしの十文字槍で貫いてやる‼


そう言ったら飴里は軽く笑いながらあたしに話しかけて来た。


「ふふっ・・・やっぱり翠は・・・元気な方が可愛らしいな」

「!?@¥&♪#〆*☆(翠語発動中)」


また可愛いなんて言われた・・・。あたしは顔を真っ赤にしながら慌ててしまう。せんな話をしていると槍を手にした伝令があたし達に歩み寄って来た。


「報告‼偵察隊が戻りました‼」

「分かった・・・それでどうだった?」

「ハッ‼報告によりますと魏軍の一団が進軍を開始‼天水より南へ出陣させた模様‼」


伝令からの報告で驚く。あたしの予想で魏軍が南侵してくるのは分かってたけど、出陣場所は長安と思い込んでいた。だけど飴里は特に驚くような素振りは見せず、冷静に伝令へと指示を下す。


「やはり・・・天水に軍備を隠していたか・・・・・・その位置から察して敵の目的は漢中の要所・・・定軍山・・・・・・出陣させた敵将は?」

「ハッ‼牙門旗から判断して夏侯淵に張郃‼徐晃‼それと・・・・・・」


あたしは伝令が口にした名前に言葉を失った。何しろ・・・・・・。


「最後の牙門旗は“白銀の王旗”‼司馬懿配下の王異と思われます‼」


先ほどまで話していたあたしの幼馴染・・・・・・王異だったから・・・・・・。

天水より出陣した秋蘭が大将を務める魏軍。狙いは漢中の要所、定軍山。共に出陣する牙刀と凪達は静かなる復讐に燃える王異の言葉に耳を傾ける。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[冷酷な妖花]


王異、自らの復讐の為に一計を画作する。

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