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第176話:南蛮

一刀が合流した南蛮方面軍。南蛮の地にて新しい仲間が増える。

蜀の南部に広がる鬱蒼とした森林地帯、南蛮。中国大陸を制した国が南西方面の帰順しない異民族に対する呼称となったこの土地に暮らす民族は漢王朝に帰従せず、部族単位で動くことでしか知られていない。


その南蛮部族の一部が最近になってから蜀の国境付近に悪さをし始め、このことを重く感じた俺はライルさんへの見舞いを済ませ、蜀に帰還してすぐに桃香達南蛮平定軍と合流。

そこですぐに南蛮へと向かったが問題が早くも生じた。それは・・・・・・。


「あ・・・暑い・・・」


あまりの暑さに参っていた。一応は俺も薩摩出身だがここの暑さは比べ物にならない。だから俺もフランチェスカ学園の上着を脱いで紛らわせているが、それでも暑かった。


「ご〜主人様ぁ〜・・・何とかならない〜?」

「こればっかりはどうにもならないよ・・・」

「しかし・・・この暑さで兵達もかなり参っています」


愛紗の言葉で俺は振り向いた。確かにみんなこの暑さでかなり疲れているようだ。一応は休息を多めに与えてはいるけれども、こればっかりはどうしようもない。


「はぁ〜・・・だったら短期決戦ってことかな・・・」

「そういう事になるよ・・・ところで、南蛮の国の特徴は分かる?」

「そうですねぇ~、まずこの国の住民は家では無くて洞穴に住んでいるそうです」

「獣じみた格好をしていたり、見たこともない食べ物を食べたり・・・」


朱里と雛里の言葉に俺は耳を傾ける。


「つまり・・・文化が全く違うってことだね・・・他には?例えば部族の規模とか・・・」

「それほど大きな部族はおらんだろうな」

「何故そう言えるのだ?」

「南蛮の人間は部族単位で動く。部族には必然的に口を賄える人数しかいない」


流石は蜀に長く仕えている焔耶だ。確かに南蛮の民族一つ一つは小さいが、それらが連合を組んで蜀に反旗を翻したとされる。


「じゃあ狙い通り、短期決戦で決着を付けられるかな?」

「それは無理なのだ。だって地の利は奴らが持ってるんだから。」

「あ・・・そっか・・・う〜ん・・・じゃあ長期戦になるかもしれないねぇ」


桃香が深くため息を付く。その時・・・


「当然なのにゃ‼」


どこからともなく声が響いた。俺達はそれぞれの得物を手に取って臨戦体制を整える。


「誰だっ⁉」

「我こそは南蛮大王孟獲なのにゃ‼ショクとか言う奴らめ‼我らの縄張りに入ってきて、タダで帰れると思ったらいかんじょ‼」


そこにいたのは前方から愛らしい出で立ちの元気一杯の小さな猫耳少女がいた。俺は思わず鋒を下ろしてしまっていた。

特に桃香はいつの間にか目を輝かせながら歩み寄っていた。


「うわ〜‼可愛いぃい♪」

「にゃ?」

「ねぇねぇご主人様‼この子、ぬいぐるみみたいで可愛いよ‼耳までついてるし‼」

「・・・」

「ご主人様?」

「・・・・・・」

「ご・・・ご主人様?」

「・・・・・・・・・」


桃香が話し掛けているようだが、俺は耳に入っていなかった。孟獲に歩み寄ると・・・。


「にゃっ⁉」

「・・・・・・お持ち帰りする・・・」


孟獲を抱きかかえると来た道を引き返していた。


「ニャー⁉にゃにするにゃ⁉みぃは南蛮の王様なのにゃ‼離すにゃ‼」

「・・・って⁉ご主人様⁉あなたは何をしておられるのですか⁉」

「はっ⁉・・・・・・危なかった・・・」


愛紗が俺を止めてくれたおかげで人攫いみたいなことは避けられた。

ジタバタと暴れる孟獲を俺はゆっくりと地面に降ろしてあげた。


「ごめんごめん・・・ところで、君がここに来たって事は戦いに来たのかな?」

「そうなのにゃ!お前達の相手をするにゃ‼」

「ほぅ・・・ならば話が早い。南蛮王の素っ首たたき落とし、後顧の憂いを断たせてもらおうか‼」


愛紗が偃月刀を構える。


「上等なのにゃ‼南蛮大王孟獲が相手をするじょ‼子分共‼」


孟獲が先に大きな猫の手の付いた鈍器を構えた。すると孟獲の背後から・・・。


「みぃ様がんばるにゃー‼」

「つぎトラ‼トラがたたかうにゃ‼」

「みぃ様〜・・・おなかへったぁ~」


・・・・・・なんだこの小動物は・・・。


何やら猫娘達が応援を受け、孟獲は勇ましげに武器を構えた。


「ふーっ‼みぃは強いじょ‼泣いて謝ったら許してやるじょ‼」

「あらあら♪可愛らしい子分さん達ね♪」

「・・・ご主人様」

「・・・分かってる・・・戦えないんだよね?」

「・・・は・・・はい」

「うん・・・気持ちは凄く判るから良いよ。下がっといて」

「す・・・すみません。はぁ~・・・」


いつもは真面目な愛紗がこんな惚けてしまっている表情をしながら後方に下がる。

恋と同じ匂いがする相手じゃ、愛紗じゃ戦えないだろうな。というかこんな子供と戦うとまるで俺達が悪者だ。だから俺は神龍双牙を納刀して孟獲に歩み寄る。


「まぁまぁ孟獲ちゃん。ちょっとお話しようか?」

「何にゃ?」

「俺達はね。孟獲ちゃん達を力で従えるつもりはないんだよ」

「にゃ?」

「簡単に言うとね。俺達とお友達になって仲良くしましょうって事だよ」

「仲良く・・・にゃ?」

「うん、そうだよ」

「ふん‼みぃはお前達と仲良くするつもりはないのにゃ‼」

「そう・・・じゃあどうすれば仲良くしてくれるのかな?」


そういうと孟獲は考え始める。


「う〜ん・・・そうだにゃ‼この森の中でみぃを捕まえる事が出来たら考えるにゃ‼」

「この森の中で逃げる孟獲ちゃんを捕まえればいいんだね?」


つまりは鬼ごっこということだ。


「分かったよ。だけど捕まえたらちゃんと約束を守らなきゃ駄目だよ」

「もちろんにゃ‼そのかわり捕まえられなかったらお前達の負けにゃ‼」


それだけいうと孟獲が走って俺達から離れる。


「へへーんにゃ‼捕まえられるものなら捕まえてみろにゃ‼」


猛スピードで視界から消えていった。


「よろしかったのですか?」

「なにが?」

「地の利は向こうにありますし・・・何より・・・・すばしっこそうですよ?」

「大丈夫だよ。俺に考えがあるから・・・蒲公英はどこだ?」

「ここにいるよ〜♪」


俺がそういうと元気一杯に手を挙げながら蒲公英が現れる。


「朱里、雛里、蒲公英。ちょっと耳を拝借」


俺は3人を集めて話をする。


「・・・・・・・・・・・・って内容だよ」

「はわわ・・・なるほど。」

「あわわ・・・それは名案です」

「にしし~、面白そう‼蒲公英そういうの大好き♪」

「よし、それじゃ、すぐ始めようか」

「「御意です♪」」

「了解~♪」


そういうと3人はすぐ準備に取り掛かる。愛紗や桃香達は何なのかあまり理解出来ていなさそうだけれども、説明するよりも見た方が手っ取り早い。

俺達は猫を捕まえる為に行動に移る。





「・・・え・・・えっと・・・ご主人様」

「なに?」

「いくらなんでも馬鹿にし過ぎなんじゃ・・・」


桃香は俺が仕掛けた罠に失笑していた。というか罠というよりも落とし穴にの上に饅頭を置いただけのものだ。普通の人なら素通りする程度のものだ。


「うん、大丈夫だと思うよ。というかこっちの罠の方が掛かる気がするからね」

「でもいくら私でもあんな罠には引っかからないし、それに分かり易いし「にゃにゃぁ〜⁉」えっ?・・・・・・」

「こんなところになんで落とし穴があるにゃ⁉深いにゃ⁉助けてにゃ⁉」

「・・・・・・あ・・・あはあははは・・・」

「・・・綺麗に引っかかったね・・・」


仕掛けた罠にあっさりかかる孟獲。俺は落とし穴に歩み寄って孟獲を抱きかかえる。因みに猫みたいに首を掴まれた状態だ。その時に朱里と雛里が“あっ・・・猫”と口にしたのは爆笑しかけた。


「はい、捕まえた」

「にゃ~・・・」

「これで良いかな?」

「まだにゃ‼みぃはまだ降参しないにゃ‼」


子供みたい・・・というか子供か・・・。諦めが悪い孟獲をゆっくり降ろして同じ目線になるようにかがむ。


「じゃあ・・・次また捕まったら約束を守ってね」

「ふー‼覚えてろなのにゃー‼」


捨て台詞を残して去っていった。



それから何種類か罠を仕掛け、流石に簡単には引っかからないと思ったが・・・。


「にゃー⁉網が落ちて来たにゃ⁉暗いにゃ⁉助けてにゃ⁉」


スズメ獲りの罠に引っかかったり・・・。


「ハグハグハグハグ‼」


肉をぶら下げた釣り糸にあっさり釣れたり・・・。


「あぅぅ〜・・・頭に血が上るのにゃ・・・たすけてぇ~、た~すけてにゃ~・・・」


スネアトラップに引っかかり・・・。


「にゃ⁉なんでこんなところに穴があるにゃ⁉」


二回目の落とし穴・・・。


「にゃぁああ⁉また引っかかったにゃぁ・・・もう嫌にゃぁぁぁ⁉」


三回目の落とし穴。そして極め付けは・・・。


「にゃぁぁぁ・・・もう嫌にゃぁぁぁ・・・・・・みぃはもう帰るにゃぁぁ・・・」


・・・四回目の落とし穴。下手な獣よりも簡単に引っかかったな・・・。

流石に7回も引っかかったことでグッタリとしている孟獲は・・・・・・。


「うにゃぁぁぁ・・・もう降参にゃぁ・・・」


俺達の前で尻をついて降伏していた。流石にやり過ぎたと反省した俺は孟獲を抱き抱えてそのまま肩車をしてあげる。


「に・・・にゃっ⁉」

「ごめんね、いじめちゃって・・・だけど君と友達になりたいってのは本当だよ」

「にゃ・・・みぃと友達になってくれるのかにゃ?」

「ああ、本当だよ」


俺の顔を覗き込む孟獲に俺は笑顔で答える。すると孟獲はニカッと笑顔を見せて答えてくれた。


「分かったにゃ‼みぃはショクと友達になるにゃ‼」

「そりゃ嬉しいな。じゃあ俺のことは一刀って呼んでいいよ」

「兄ぃはこれからみぃの兄ぃにゃ‼真名のみぃを預けるにゃ‼」


兄ぃって・・・まぁ確かにこの子は何というか元気一杯の末の妹みたいな感じがする。肩車をしてあげると何かに気が付く。

右側から砂塵を舞い上げながら何かがこちらに向かって来ていた。

それを見た美以はなんだか慌て出した。


「にゃ⁉あ・・・あれは⁉・・・兄ぃ‼すぐ逃げるにゃ‼」

「に・・・逃げる?」

「にゃぁぁ・・・まずいにゃ・・・また菫に怒られるにゃ⁉」

「・・・・・・?」


かなり混乱している様子だが、俺が話し掛けてかける前に砂塵の要因からなにやら声が聞こえて来た。


「こぉぉぉぉぉぉらぁあああ‼‼みぃぃぃぃいぃぃぃぃ‼‼」


見えてきた姿はカールがかかった黒髪に桃色主体の南蛮服を身に付け、桃色の猫耳と尻尾を付けた紫苑や桔梗に負ける劣らずのスタイルを持った女性だ。

その女性はすごい勢いでこちらに向かって来ていた。


そして美以の前で急ブレーキをかけて停止した。


「美以‼あんたまたあたいが寝てる隙に勝手に出歩いて‼」

「ひぃ⁉」

「おまけにまた人様に迷惑掛けて・・・今日という今日はお仕置きだよ‼」

「にゃっ⁉ご・・・ごめんなさいにゃ⁉もうしないにゃ⁉」

「あ・・・・・・あの〜・・・」

「ん?・・・あぁすまなんだね。あたいの美以が迷惑掛けちまったみたいだね。で・・・あんた等はなんだい?」

「お・・・俺は北郷 一刀って言います・・・後ろにいるのは俺の大事な家族です」


ひとまずは自己紹介すると、女性は俺のことをマジマジと見てくる。


「へぇ・・・あんたが噂の御遣いって奴かい・・・あたいはこの子等の親代わりをしてる祝融ってんだ」

「分かりました・・・で・・・・・・なんで俺の顔をジロジロと?」

「いやだねぇ・・・噂の御遣いってのがどんな奴だと思ってねぇ・・・」


そういいながら祝融は俺の胸板に手を置いて来た。


「へぇ・・・よく見たら中々可愛い坊やじゃないかぃ・・・」

「あ・・・あの・・・」

「気に入ったよ、あたいもあんた等蜀に協力させてもらうよ。これからはあたいのことは(すみれ)って呼んどくれ」

「わ・・・・・・分かりました・・・」

「そんな固っ苦しい喋りは無しだよ♪どうだいあんた?このままあたいの家に来るかい?いろいろと尽くしてやるよ♪」


そういいながら菫は俺の腕に抱きついてきて、顔を口付けが出来る距離までに近付けてきた。

それと同時に背後からなにやら気配が・・・。


「ご主人様〜・・・」

「あなたは何をされておいでですか?」

「は・・・・・・はあははははは・・・」


振り向くとそこにいたのはヤキモチを焼いている桃香と愛紗・・・。


「す・・・菫さん・・・気持ちは嬉しいんだけど・・・その・・・」

「あら残念♪だったら今度は一晩・・・じっくりと・・・」

「「ご主人様‼⁉⁇」」

「ご・・・誤解だぁあああ‼⁉⁇」


嫉妬に駆られた二人による鬼ごっこが始まった。

この後に南蛮と交友を深めて平定に成功。美以達も正式に蜀の客将として迎え入れられ、これにて南蛮問題は解決した・・・・・・・・・。


因みにこのあと、愛紗と桃香に捕まった俺は二人とデートする羽目となった・・・・・・。

南蛮平定が完了した丁度その頃、使者達が帰還していった呉でも新たな動きが見えた。

保守派による大規模な反乱。現場に復帰したライルも部下を率いて反乱軍に占拠された街に潜入する。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[ハリケーン]

深夜の街並みに狩人達が忍び込む。

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