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第174話:嵐VS麒麟児

対五胡で出陣した嵐。そこで難敵と出くわす。

主様と霞達がライルの見舞いの為、建業にいる頃の益州西部の国境付近。私達が対峙しているのは異民族が暮らすとされている五胡。


奴等は怪しげな妖術を使うとされ、この国に何度も侵攻を仕掛けて来ている。

夏雅里と飴里の推測によると奴等の目的は新しい領土と食糧を得ることらいしがあくまでもそれは憶測。噂に聞いたことがあるのだが商人の一団が奴等に捕まり、見るも無惨な殺され方をされた。


もしそれが本当ならそのような蛮族をこの国に入れる訳にはいかない。私は金剛爆斧を担ぎながら奴等がいる荒野を見つめていた。


「・・・・・・来ないな・・・」

「来るわよ・・・必ずね」


口から漏れると隣にいる詠がそれに答える。


「まさか今回に限って来ないだなんてことはないだろうな・・・・・・闘いたくて身体が疼くではないか」

「あんたまたそんなこと言って・・・そんなことばっかりしてると痛い目を見るわよ」

「分かっている。今の私はかつての私ではない・・・。今ここにいるのは劉 玄徳様と北郷 一刀様に使える大斧だ・・・。民の為に我が武を振るうのが私の役目だ」

「・・・あんた・・・本当に変わったわね」

「そう褒めるな・・・・・・偵察隊が帰って来たようだ」


私が詠と話していると、前方に国境のすぐ手前まで向かっていた偵察隊が帰って来たが何か様子がおかしい。偵察隊の1人が慌てながら私達のもとに駆け寄って来た。


「ほ・・・報告致します‼」

「どうした⁉」

「はっ‼五胡の軍勢がこちらに接近しております‼」

「来たか・・・敵の数は?」

「10,000弱と予想されます‼敵の全てが歩兵で騎兵は確認されておりません‼」


五胡の兵力は10,000弱・・・。いつもの兵力に比べればかなり少ない。我等を侮っているのか・・・・・・それとも何か策があるのか・・・どちらにせよ油断は出来そうにもない。


「分かった・・・お前達は後方に下がって今暫し休め」

「はっ‼」


指示を下すと偵察隊はすぐに後方へと下がっていく。


「詠・・・五胡の連中をどう思う?」

「今迄の五胡にしては数が少ないわ・・・威力偵察が目的か・・・それともこちらの情報が向こうに伝わっていないか・・・」

「それで・・・どうするのだ?」

「兵力ならこちらが上よ。敵をこの渓谷手前に誘き寄せるわ。嵐にはその尖兵を率いて」

「うむ、向かって来る敵は全て我が仁の大斧で蹴散らしてみせよう‼」


そういうと私は部隊を率いてすぐに五胡に向かって馬を走らせる。





戦が始まるのに大した時間は掛からなかった。敵は何の躊躇もなく私達へ刃を向け、そしてぶつかってきた。五胡軍の兵士は全身の筋肉が引き締まった大男が多く、何かの動物の頭蓋骨を仮面として被っている。その力強い攻撃は確かに驚異ではあるが動きが単純だ。


「奴等の越境を許すな‼我等の家族を守る為にも踏み留まり闘い抜くぞ‼」

『応っ‼劉備様と北郷様の為に‼』


私が率いる華雄隊は私を先頭に奮戦する。私達の部隊は敵陣の奥深く突き進む強襲を主眼に置いた部隊ではあるが、同時に向かって来る敵をその爆発力で封じ込める防衛の任も任されることも多い。


昔の私に見習わせたい気分だ。かつての私はただ正面から仕掛けることしか知らない猪であった。しかし主様が私の力を活かしつつ、圧倒的な剛を持って敵の攻撃を跳ね返す戦い方を伝授して下さった。


金剛爆斧の攻撃範囲の長さと私が持つ力を合わせて向かって来る五胡を次々と吹き飛ばしていく。


「五胡の蛮族共よ‼我は仁徳王、劉 玄徳様と北郷 一刀様に仕える仁の大斧の華雄‼貴様等蛮族に我が蜀を好きにはさせん‼命が惜しくば立ち去るがいい‼」


私は金剛爆斧を地面に突き刺し、仁王立ちにて威嚇するが奴等は立ち去る処か表情を変えずに向かって来る。それを確認したらすぐに金剛爆斧を引き抜いて構える。


「引かぬか‼ならば貴様等の頸、この華雄が貰い受ける‼はぁああああああ‼‼」


剣や槍を構えて向かって来る五胡。私はそれに向かって斬り込むが何かがおかしかった。奴等は私と刃を交える距離より前で急に立ち止まり、鋒を下ろす。

そして違和感がもう一つ。何かがこちらに向かって飛んでくる音だ。それが何なのか分からなかったが直感で上空に構え、それと同時に何かが当たった。


(小刀・・・・・・いや・・・違う⁉)


飛来して来たのは確かに小刀だが、柄には紐が設けられており、それが引っ込むと上空に飛び上がっていた誰かの手元に戻り、同時に逆手で持っていた剣で私に斬りかかってきた。


「くっ⁉」


その攻撃を受け止め、私はその敵を弾き飛ばす。しかし攻撃者は何回転かしながら軽々と着地して構えの姿勢を取る。


その姿は他の五胡の兵士と比べて小柄かつ華奢だが、それでも筋肉の締まり方は立派なものだ。青色の髪を束ねて動物の毛を使った服装に血のように真っ赤な胴巻き、左目のみを露わにさせている仮面。更にその欠如させてある個所から覗かせている黄色の瞳をした目は私に狙いをつけている。


それらを見て私はすぐに感じ取った。


(こいつ・・・かなり出来る・・・)


全身から発せられる闘気でかなりの強敵だと感じ取った。体格からして若い男と推測させられるこいつは再び私に斬りかかってきた。逆手に持った剣を振り上げ、そのまま左からの薙ぎ払い、左手で保持された小刀による刺突。

刺突の反動を利用した再度の薙ぎ払い。その素早くも的確な攻撃の前に私は反撃出来ずにいた。


「くっ⁉やるな‼」

「・・・・・・」

「五胡にも貴様みたいな奴がいるとは・・・・・・だが国に仇なすなら容赦はしない‼」

「・・・・・・・・・」


何も喋ろうとしないこいつに対して今度は私の反撃を見舞わせる。


金剛爆斧に渾身の力を込めて振り下ろし、そのまま体を捻らせて反動を利用した一回転からの振り上げからの連続しての振り上げ。


それが終了したら再び奴の猛攻、そして私の反撃。この繰り返しが何度も行なわれ、時間が経つのも忘れていた。


「はぁ・・・はぁ・・・」

「ふぅ・・・ふぅ・・・」


何度も刃をぶつけ合い、互いに息があがった状態だ。だがこれ以上の時間は掛けられない。何としてでも次で勝負を決める必要がある。私は金剛爆斧の柄を短く持ち直し、敵に斬りかかった。


「甘い‼」

「⁉」


敵はその攻撃を受け止めるが、私はすぐに手を離して受け止められた反動を逆に利用してその場で飛び上がり、身体を捻りながら回し蹴りを見舞う。

流石にこれには反応しきれなかったようであり、私の蹴りが仮面を粉砕する。いくら仮面で威力が半減されたといっても顔に食らったのだ。少なくとも手傷にはなるだろう。


「勝った・・・のか?」


勝利したと思ったが、奴は顔を押さえながら立ち上がり、姿勢を整えると押さえていた手を退けて私を睨みつけてきた。しかし奴の顔を見て私は驚きを隠せなかった。何しろその顔は・・・。


「あ・・・・・・主・・・様・・・?」


私の主、北郷様と瓜二つだったからだ。私の反応を見て奴は自身の得物を手にしてその場で立ち止まる。


「・・・やるじゃないか・・・・・・まぐれ当たりとはいえ、この私に一撃を与えるとはな・・・」

「なっ・・・」

「貴様に免じて今日は退くとしよう。だが・・・次は無いと思え・・・・・・引き上げるぞ‼‼」

『うぉおおおお‼』


信じられない位の大声で奴は部下達に退却を命じ、同時に一矢乱れぬ統制された動きで退却していく。奴もその場から立ち去ろうとするが、私は奴に問いかける。


「また会おう・・・蜀の大斧」

「ま・・・待て‼貴様は・・・一体・・・・・・」

「・・・俺は姜維 伯約。麒麟児と呼ばれ・・・いずれは漢を打ち滅ぼすものだ‼」


自身の名前を名乗ると姜維はその場から駆けていく。その早さは馬にも負けないものであり、瞬く間に見えなくなった。私はそれをただ見ているしかなかった。


「華雄様‼ご無事でしたか⁉」

「えっ・・・あ・・・・・・あぁ・・・」

「どうかされましたか?」

「い・・・いや・・・なんでもない」


部下の言葉で私は正気を取り戻し、地面に落ちたままだった金剛爆斧を手にする。


「それより、部隊を再編成して本陣に戻るぞ」

「はっ‼既に編成は完了しております‼」

「そうか・・・ならば早く戻るぞ」

「御意‼」


本陣に戻る指示を下すと私達はすぐに撤退を開始する。主様と瓜二つの難敵・・・姜維 伯約。このことは主様以外には黙っておいた方がいいだろう。そう思いながら私達は本陣に向かうのであった・・・・・・。

謁見が行なわれた翌日。一刀達はそれぞれの陣営に帰ることになっている。帰る準備が進められる中、ライルと雪蓮もようやく二人きりとなれた。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[雷と雪]

英雄も普段は人の子となる。

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