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第167話:司馬懿

ライルと司馬懿。2人の英傑が対面する。

次がいよいよ司馬懿との対談だ。正史にて当時の大将軍であった曹爽を殺害し、形骸と成り下がった魏を廃止し、晋の基礎を築き上げた戦略家。

かの諸葛亮も遂に勝つことが出来なかった人物でもある上に、曹操も常に警戒していたらしい。


一先ずブルーマウンテンをカップに注ぎ、待つことにした。

卓越した香気を持ち、調和の取れた味わい、軽い口当りと滑らかな咽越しが特徴で、コーヒーの最上位と有名である。


入れ終わって口にしていると司馬懿が訪ねて来た。


「ほぅ・・・ここが英雄殿の自室か・・・」


司馬懿は入室するや否や室内を興味深く見渡す。一回り見渡すと俺に拱手の礼をして挨拶する。


「少しだけ遅れましたな。私は曹 孟徳様配下の性は司馬、名は懿。字を仲達と申す」

「・・・・・・・・・」

「どうかなさったか?」

「・・・いや・・・・・・何でもない」


何だか知らないがこの男に違和感が感じられる。俺はジェスチャーで席を指し、それに気が付いて司馬懿も反対側の席に座る。


「これは・・・あの2人が話していた天界の飲み物ですかな?」

「そうだ、そこにある角砂糖一つと牛乳を少しだけ入れて掻き混ぜるんだ。そのままでも飲めるが、苦かったらそれらを入れるんだ」


そう説明すると司馬懿はまずブラックで飲んでみた。苦味を感じる感覚は無いようで、平喘としている。


「ふむ・・・多少は苦味を感じるが・・・口当たりがよいな」

「珍しいな・・・こっち側の人間は初めて飲むと甘さを求めるんだがな・・・」

「そういうものか・・・。まぁ良い」


カップをコースターに置き、司馬懿は再び俺を見通すような視線でこちらを見てくる。


「何か?」

「うむ・・・良い眼をしているな。それも左右で色が違うというのがな・・・」


俺のオッドアイを見ていたのか・・・。俺の瞳は右が琥珀色で左が赤というかなり変わった色合いをしている。琥珀色は俺の血筋がドイツ系であるという名残だが、そこに非常に稀な赤とオッドアイという組み合わせだ。


「しかし貴殿の評判は本当に素晴らしいものだな。噂は2年前より耳に入っていたぞ」

「虎牢関か?」

「うむ、民の為に戦う天の軍隊。主や国家の為に武を振るう誇り高き海兵隊。特に有能な将兵全てを纏める有能な将軍である貴殿の噂は逸脱している」

「・・・なんとも誇張された評判だな」

「その謙虚さも素晴らしい。本当に私の配下に是非とも加えたいものだ」

「・・・・・・何が言いたい?」

「さぁ・・・意味が分からないな」

「とぼけるな。あんたは先程から俺の反応を見ながら話している。まるで俺の弱点を探すようにな・・・」

「ふふ・・・・・・流石はライル殿だな・・・遠回しの対話は通用しないか・・・・・・。なら貴殿に聞きたいことがある」

「・・・なんだ?」

「貴殿はこの乱世をどう思うか?」


あからさまに俺を試している。だが質問に答えなければ対談の意味が無い。悟られない程度に答えるとしよう。


「・・・・・・分からない」

「分からない?」

「あぁ、分からない。戦局なんて常に変化するんだ。歴史に残りそうな戦術でも戦局が変わらない場合もあるし、一本の弓矢が戦局を激変させることだってある。

局地的な戦闘でそうなのに、乱世の先なんて誰にも分かりはしない」

「ならば貴殿は何の為に戦うのだ?」

「・・・俺が戦う理由は祖国や主、仲間、友人、更には民や大事な物の為に戦う・・・・・・。それだけだ」

「・・・・・・」


戦う理由を口にすると司馬懿は黙り込む。本当は雪蓮の為にも戦うという理由もあるが、これを口にする訳にはいかないだろう。

すると司馬懿はコーヒーを飲み干して、机に両肘を付いて手を重ねながら喋り出した。


「ふむ・・・・・・やはりなかなかの決意を秘めているな・・・」

「・・・なんのつもりだ?」

「ライル殿、この国を真に思うのならば、私の私兵部隊に来ないか?」


・・・やはり勧誘か・・・。司馬懿の私兵部隊はかなりの力を秘めているとの噂もある上に謎も多い。しかし何かしらの真意を掴めるかも知れないから、話を聞いてみることにした。


「この国は今や3つの陣営で別れている。魏、呉、そして蜀。それぞれが己の理想や野心の為に戦っている。しかし指導者も人間だ。指導者が死ねば再び内乱が起き、やがては疲弊していく」

「・・・・・・・・・・・・」

「それを防ぐには我等魏がこの国を統一し、力をもって統治するのがいい。だから貴殿も私の下に来い。相応の地位も用意する」

「・・・・・・・・・断る」

「ほぅ・・・・・・」

「俺は海兵隊だ。忠誠を誓ったからには心身全てを祖国に捧げたから、俺達がこの呉を裏切ることなど毛頭ない」


司馬懿は確かに有能な男だ。高いカリスマ性で惹きつける能力もあるだろう。だが俺は孫呉や雪蓮達の為に戦うと誓った。だから俺が司馬懿に組みするなどありはしない。


「ふむ・・・・・・まあ良い。今回は諦めるとしよう」

「・・・・・・意外に話が解るんだな」

「今回の私はあくまでも使者としてここに来ただけに過ぎん。無理な引き抜きは今の状況で行なえば唯では済まんだろう」


そう言うと司馬懿は立ち上がり、扉にむけて歩き出す。


「すまなかったな、貴重な時間を割いてくれて」

「ああ・・・・・・」


俺が軽く敬礼をすると司馬懿も軽く頭を下げてから退出していった。それを見送ると俺は大きく息を吐きながら椅子にもたれ掛かる。


司馬懿 仲達・・・・・・奴には充分警戒した方がいいだろう・・・俺はそう思いながら少しだけ冷めたコーヒーを口にする・・・・・・。

最後の面会はライバルの牙刀と副官の楽進。互いに武を認め合う武勇を秘めた英雄達が新たな約束を交わす。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[銀狼と龍]

銀狼と龍が再び合わさる。

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