第166話:私兵の感情
2組目の面会。次は諸葛誕と文鴦。
約1時間の対談を終えて一刀達は執務室を退出する。みんなが元気なこと。
蜀の内政が順調に回復していっていること。
黄忠殿と厳顔殿が俺に会いたがっていること。
更には刀瑠が少しずつだが一人で歩き出して喋られるようになって来ていると聞かされた。
変わらない蜀の面々を確認出来た上に寄せ書きというプレゼント。それを額に入れて壁に飾ってある。それが終了して別のカップ二人分に今度はキリマンジャロを注ぐ。
正式名称はタンザニアコーヒーで'野性味あふれる'と評されることが多い強い酸味とコクが特長だ。
カップに注いで角砂糖とミルクを用意し終わった直後に二人が来たと言う報告を受け、椅子に座ると入室許可を出した。
衛兵に付き添われて入ってきた黒髪のムーヴィングマッシュという髪型に千里の服装に似た白主体の格好をした青年に、ブラウンのヨーロピアンルーズリーゼントに赤色の甲冑を身につけた青年だ。
二人は入室して直ぐに拱手の礼をしたので、俺もその場で立ち上がって二人に対して答礼をする。
「ライル殿、お初にお眼に掛かります。自分は司馬懿様の下で軍師をしております姓は諸葛、名は誕。字を公休と申します」
「同じく、司馬懿様配下で武将を務める姓は文、名は鴦。字を次騫といいます」
「君達が司馬懿配下の優将か・・・。よく来たな文鴦に諸葛誕。俺が孫呉海兵隊司令官兼第0大隊“群狼隊”大隊長を務めるライル・L・ブレイド中佐だ。まあ、まずは座ってくれ」
そう言われて文鴦と諸葛誕は少しだけ緊張しながら備え付けられた椅子に着席する。その直後に二人は室内を見渡していた。
「やっぱり珍しいか?」
「い・・・いえ⁉これは失礼した⁉」
「失礼しました・・・」
「ふっ・・・気にするな。確かにこの国では珍しい物が多いからな」
2人の緊張を若干だが和らげ、コーヒーを口にする。2人も同じようにコーヒーを口にするが熱い上に飲んだこともないコーヒーの苦味に顔を少しだけ歪ませてしまった。
「はははは、慌てないでゆっくり飲むんだ。甘くしたかったらこれを一つ入れてかき混ぜな」
「「は・・・はい」」
そう言われて二人は角砂糖一つとミルクを少しだけ入れてよくかき混ぜてから口にする。今度は大丈夫そうだ。
「で・・・俺に何か聞きたいことでもあったのではないか?」
「はい・・・・・・ですがその前に・・・」
「?」
「此度の戦の件・・・実に申し訳ありませんでした」
いきなり頭を下げて謝罪をする文鴦に諸葛誕。
「我ら魏に組みしていた一部の者共が報酬に目が眩み、あまつさえ暗殺という手段を用いてあなたや孫策殿を暗殺しようとした・・・これは許される筈がありますまい・・・・・・
」
「いくら不問となったとはいえ、魏はあなたに対して無礼を働いた・・・・・・本当に申し訳ない・・・ライル殿」
「・・・・・・・・・・・・」
俺は2人の申し訳無さに対して何か申し訳無さが残る。しかしこのままでは話が進まないので俺は反対に話しかけることにした。
「・・・過ぎたことだ。気にするな」
「し・・・しかし⁉」
「そんな気に病む必要はない。俺も生きてるし、雪蓮・・・・・・孫策殿だって無事だったんだ。忘れろとは言わないがな・・・」
「「・・・・・・・・・」」
「それよりも今は対談の時間だ。政治や軍事は無しにして腹を割って話さないか?」
「いえ・・・そ・・・・・・その・・・な・何を話したらいいのか・・・」
「よし、じゃあ俺から質問だ・・・諸葛誕」
「はっ・・・はっ‼」
「君はたしか千里の従兄弟だったよな?」
「はい」
「ということは朱里や夏雅里とも?」
「2人をご存知なのですか?」
「まぁな・・・それよりも3人は昔からあんな感じなのか?」
「は・・・はい。あの2人は昔からよく噛む癖がありまして、水鏡私塾でも知らない人間はいなかった程です。千里に関しても・・・」
・・・・・・試しに聞いてみたのだが、何と無く想像がつく。そこに雛里も加わるのだから癒し系の勢揃いで勉強が進まない自身がある。
「ということは君も水鏡私塾出身か?」
「はい。私と千里、それに徐庶も同じ時期に入った同期です」
「成る程な・・・よし、次は文鴦だ」
「はっ・・・はい‼」
甲冑の音を立てながら背筋を伸ばして綺麗な姿勢に直す文鴦。その姿に俺は思わず吹いてしまった。
「ふふ・・・すまないな。だからそう硬くなる必要はない」
「す・・・すみません・・・・・・」
「まぁいいさ。それよりも君は何でも並外れた武勇を秘めていると聞いた。武器は何を使うのかな?」
「は・・・一応は・・・・・・槍です」
「槍か・・・俺も短槍を使うぞ。といってもつい最近からだがな」
「そうなのですか?」
「ああ、是非とも武勇を競いたいな」
そんな話を1時間続け、コーヒーを飲み干した時間には面会時間が終了となった。文鴦と諸葛誕は充てがわれた部屋に戻りながら何かを話していた。
「・・・・・・なぁ・・・俊里」
「・・・何だ隼照」
「あの方・・・どう思った?」
「・・・・・・噂以上の御仁だった。自らの地位や名声に溺れず、誇りや信念を貫き通す」
「あと・・・敵である我等にも垣根無く接し、我等の無礼も簡単に許してくれた。自分があんな酷い目にあったっていうのに・・・」
「知勇だけではなく、五常全てを兼ね備えている・・・・・・まさに“天界の英雄”だ」
「なぁ・・・もし最初に俺たちがあの人に出会っていたら「それは言うな俊里」・・・」
「我等は魏に忠誠を近い、司馬懿様の配下に加わった・・・昔のことなんか思いたくもない」
「・・・諸葛一族の誇りと魏の愛国心って奴か?」
「・・・そうだ」
小声で話しながら二人は客室へと戻っていった。
諸葛誕 公休に文鴦 次騫。後に二人は愛国心を持って行動することとなるが、まだ誰も予測出来なかった・・・・・・・・・。
遂に司馬懿との面会だ。自らの野心の為に動く司馬懿に信念や大事な人の為に戦うライル。
知勇で優れる2人の天才は何を悟るのか・・・・・・。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[司馬懿]
司馬懿が不審な影を残す。