第164話:それぞれの意志
包帯を巻きつつ現れたライル。魏の使者に対する判断が下される。
一刀達蜀の使者と牙刀達魏の使者が玉座で雪蓮と謁見を行なっている。俺は暫く扉の前で様子を伺っていたが、魏に対する風当たりはかなりのもののようだ。
蓮華殿や思春はもちろんだが、つい先ほど普段は感情を見せない冥琳殿の怒声も聞こえた。このままでは話がいつまでも平行線だと判断した俺は衛兵に指示を出して扉を開けさせた。
「蓮華殿、お気持ちは嬉しいのですが、このままではいつまで経っても話が進みません。ですので今は落ち着かれては如何か?」
「むぅ・・・・・・ライルがそういうのなら・・・」
俺が落ち着かせると蓮華殿は渋々だが自分の立ち位置へと戻る。
『ライル(さん、殿)‼⁉⁇』
「久しぶりだな一刀。それに霞に露蘭」
「ちょ⁉ライル‼毒うけたって聞いたんやけど大丈夫なん⁉」
「そうだぜ兄貴‼あまり動くなって⁉」
「大丈夫だ。毒気は殆ど抜けたし、左腕がまだ痺れるが時期に戻る」
そう聞くと一刀達は安心した表情を見せる。そこまで心配してくれていたことだろう。そして次は魏軍に視線を送る。
魏の使者はやはり牙刀に楽進、後の3人は初対面だが一人だけ雰囲気が違う。恐らくこいつが司馬懿だろう。
「・・・・・・ライル殿」
「久しぶりだな・・・牙刀・・・・・・それに楽進」
「は・・・はい‼お久しぶりです‼」
「そっちの3人は・・・・・・」
「そなたとは初対面となるな。私は司馬懿、字を仲達という」
やはりこの男が司馬懿か・・・・・・。確かに曹操殿のようなカリスマ性と野心を感じられる。
「あなたが司馬懿か・・・・・・俺がライル・L・ブレイドだ」
「虎牢関や官渡での活躍は私も見ていた。ライル」
「・・・・・・あの時、現場にいたのか?」
「ふふ・・・・・・貴殿の武勇や部隊の活躍は聞いている。貴殿達のような勇猛果敢な将兵を是非とも我が私兵部隊に加えたいものだ」
俺は司馬懿の言葉に背筋が冷えるのを感じた。この悪寒の正体はこいつから発せられる野心だ。司馬懿は先程からこちらを見通すような視線で何かを企んでいそうな表情で見ている。はっきりいって気味が悪い。
「ライル、どうかした?」
「・・・いや・・・・・・何でもありません」
「そう・・・・・・徐晃よ・・・話を元に戻すが、今回の貴様等がやったことは許されるものではない。それは分かっているな?」
「・・・・・・はい、それは重々に承知致しております」
それだけ口にすると雪蓮は立ち上がり、南海覇王を抜刀すると牙刀の喉元に突き立てた。
「私は魏という国を許せそうにもない。呉の大地に踏み込んだだけではなく、このライルを傷付けた・・・・・・それは何があっても許されるものではない」
「・・・・・・・・・・・・」
「この場で私は貴様等の頸を討ち取ることも出来る・・・・・・だが・・・」
そういうと雪蓮は牙刀に向けていた鋒を下ろす。
「ライルよ・・・」
「はっ」
「この者達の処遇を決めよ・・・」
その言葉に俺は息を飲んだ。
「今回の一番の被害者はあなたよ・・・・・・だからあなたに決める権限があるわ・・・」
「・・・Sir yes sir」
そう命令され、俺はM45を手に取り、初弾を装填すると牙刀に銃口を突き付けた。その光景に全員が息を飲んだ。
「牙刀・・・・・・はっきり言って今回の一件は俺も許せそうにもない・・・」
「・・・・・・・・・」
「お前達は自らの意志では無いにしろ、我が主である雪蓮殿を殺そうとした。それは絶対に許せない。だが・・・・・・」
「だが・・・」
牙刀が尋ね直すと俺はM45を外す。
「今回の一件・・・・・・不問にしたい」
不問という言葉に全員が驚愕した。あれだけの事をされたのに不問なのだ。当然だろう。だが一人だけ違う反応を示したものがいた。雪蓮だ。
(やっぱり・・・・・・私の勘通りの判断ね)
(流石は雪蓮だな・・・俺の考えを読んでいたか・・・)
俺達は互いの考えを読み合い、軽く笑みを浮かべる。それ等を確認した俺は再び牙刀に振り返る。
「ライル殿・・・なぜ我等を不問にされるか?・・・・・・我々は貴公を殺害しようとした・・・・・・それをなぜ見逃すと申すのか・・・理由を尋ねたい・・・・・・」
「・・・・・・簡単だ。・・・・・・雪蓮は生きている・・・彼女を守れるのなら俺はどんな死地にでも飛び込む覚悟があるし、彼女を守るというのは俺の誇りでもある」
「・・・・・・・・・・・・」
「それに・・・・・・」
「それに・・・・・・なにか?」
「あんたの帰りを待っている奴等がいる・・・・・・俺の無事を待ってくれていた人達のようにな・・・・・・」
そう言って俺は後ろを振り向く。そこには俺らしい判断と感じ、軽く笑ってみせるアレックスや冥琳殿。特に雪蓮は守ると言われて本当に嬉しそうだった。その笑みを見るだけで俺も自然と嬉しくなり、軽く笑うとそれに続いて一刀達も笑う。
「ふふ・・・やっぱりライルさんらしいですね」
「ほんまやな♪やけど安心したで・・・・・・」
「そう言うな一刀、霞」
「でもやっぱ兄貴は兄貴だぜ」
「これが・・・・・・一刀君と同じ英雄の器・・・」
変わらない俺に安堵する一刀達。それを見ていた雪蓮も笑いながら牙刀に話しかけてくる。今度は先程までの怒気は感じられない。
「はいはい、じゃあ結論を言うわ。徐晃、今回の件に限りあなた達魏のやったことは不問にするわ」
「姉様、本当にいいのですか?」
「私は構わないわ。それに一番の被害者のライルがそう言うんだもの。それを覆して首を刎ねるだなんて私は人でなしじゃないわよ」
「蓮華様、そこが雪蓮のいいところです」
「・・・確かにそうね」
「ありがと♪冥琳♪蓮華♪じゃあ今日はこれで解散とするわね。使者達にはそれぞれ部屋を用意させるから今晩は泊まって行きなさい」
雪蓮の指示で中にいた衛兵数人はすぐに指示通り動き出す。
そしてその後に一刀達はそれぞれの陣営に用意された客室まで案内され、時間が来たら俺と対談することとなる。
そして、俺は雪蓮と共に自室へと戻った。
「ふふっ♪やっぱりライルは優しいわね♪」
「何がだ?」
今の状態は椅子に座る俺の膝に雪蓮が座っている状態だ。その状態で俺は右腕を彼女に包み込み、彼女もそれを掴む。
「だが、雪蓮も徐晃達を殺す気なんてなかったんだろ?」
「どうして?」
「まぁ、簡単だ。君からは怒気は確かに感じられていたが殺気は全く感じられなかった」
「あら?もしかしてライルの勘違いだったのかもしれないわよ♪それに私がただ隠してただけかもしれないし」
「純粋な君は隠し事はどちらかと言えば下手な方だからな」
「ブーブー⁉どう意味よそれ⁉」
「はははっ♪怒るなって・・・ちょっとからかいたくなっただけさ」
「もぅ・・・・・・ふふっ♪」
「それに・・・・・・君は俺を信じてくれていたからな」
「当たり前よ♪未来の旦那様♪」
「旦那様って・・・・・・気が早いな」
「でも満更じゃないでしょ?」
「ま・・・まあな・・・・・・」
「もぅ♪相変わらず可愛いんだから♪」
そういうと雪蓮は俺に振り向き、俺の顔を豊満な胸に押し付けて来た。
「むぶ・・・・・・し・・・雪蓮?」
「ほれほれ〜♪」
「ぶはっ⁉・・・はぁ・・・・・・今はイチャついてる時間帯じゃないだろ?それにもうすぐしたら一刀達が来るんだ」
「ええ〜⁉もっとライルとイチャイチャしたい〜⁉」
「分かった分かった。だったら今は・・・」
そういうと俺は雪蓮にキスをする。今度は前のフレンチキスではなく唇が重なるだけのものだが、彼女から甘い香りと味が伝わって来る。
そして暫くしてから唇を離した。
「今はこれで我慢してくれないか?」
「ブー・・・・・・まあいいわ♪今はこれで我慢してあげる♪だけど今晩は寝かさないんだから♪」
「・・・・・・お手柔らかにな」
「知らな〜い♪」
そう言いながら雪蓮は手を軽く振りながら部屋を退出していく。まぁ・・・嬉しかったから良しとしよう。すると暫くしてから扉の前にいた衛兵が一刀達が訪ねて来たと報告して来て、入室許可を出すと一刀達が入ってきた・・・・・・・・・・・・。
ライルとの面会。最初は一刀達だ。ライルを兄て慕う一刀と露蘭に戦友の霞。その光景に飴里は懐かしさを感じる。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[蜀との面会]
ライルに新たな義弟が出来る。