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第162話:弔問の使者

呉との戦いで大敗退を喫した曹操軍。曹操はすぐに呉への使者を派遣する。

呉から退却した我等は占領した寿春にて生き残った友軍を再編成し、揚州から完全撤退をすると本拠許昌へと退却した。


20万もいた我が軍は壊滅的な損害を受ける羽目となり、今や6万足らずの兵力しかいない。加えて兵の士気も地に落ちていた。

孫呉の熾烈な攻撃に加えて噂でしか知らなかったライル殿率いる孫呉海兵隊が用いる天界の兵器。どれだけ有能な将兵が集まろうと未知なるものが自分たちを襲うとなるとそれが恐怖に変わり、やがては散っていく。しかしそれらだけではなかった。


“ライル殿が我が軍の兵士による独断で倒れた”


これが一番の要因だろう。それによる孫呉の怒りは計り知れないものとなり、特に主である孫策殿と副将アレックス殿の曹操殿への憎しみは我等が武をも凌駕するものとなり、特にアレックス殿は夏侯惇殿や夏侯淵殿達が束に掛かっても軽くあしらわれてしまった。

その影響で曹操殿は危うくアレックス殿に討ち取られそうになった。あの時、神楽殿と凜と風が来てくれなければ取り返しのつかないこととなっていただろう。


そして許昌城へと退却を果たし、今は玉座の間へといた。


「……………」

『……………』


玉座内部は沈黙が広がっていた。それは仕方がなかろう。これまで我等は必勝不敗を誇る軍勢だったが、今回の戦で我が軍は大敗退を喫した上に曹操殿の評判は落ちてしまった。


「………曹操殿」

「牙刀…………何かしら?」

「あまり御自分を責められない方が宜しいです」

「………そう……」


そうはいったが相変わらず曹操殿は変わらず落ち込んだ表情をする。


「華琳様!!どうか今一度、呉に攻めるご命令を!!このままでは華琳様のお顔が立ちません!!」

「姉者………頼むから少しは空気を読んでくれ」

「だが秋蘭!!このままでは悔しいではないか!!我等天兵が呉に負けるなどとは……」

「だが実際に我等は敗退したのだ。それに今は兵達も疲れきっている………今の状態で攻め込んだとしても今度こそ奴等は我等を完膚無きまでに殲滅するだろう」

「しかしだな秋蘭!?「春蘭……少し黙りなさい」か……華琳様!?」


なかなか話を聞こうとしない夏侯惇殿に曹操殿がようやく口を開いた。


「桂花……今回の戦で我等はどのくらい被害を出した?」

「はい………報告によりますと出陣した我が将兵の20万の内、生還できたのはたったの6万の兵力のみ………しかも大半の兵の士気が低下しきっております」

「特に前衛はほぼ壊滅状態です。我が隊の兵力も五千弱いましたが、今は百人にも満ちておりません」


桂花の報告に私も補足として被害報告をする。呉との戦いが熾烈になると予測して新兵をあまり連れて来なかったのが唯一の救いだったが、代償として我が隊の古参兵や指揮官がかなりやられてしまっている。それは夏侯惇殿達も同様のことであり、夏侯一族の人間も何人か参加していたがかなり討ち取られてしまっているようだ。


「……司馬懿」

「いかがなされたか?」

「あなたは呉の動きがどう出るかわかるかしら?」

「聞くまででもありますまい………英雄と称されるあの男が曹操様のご意思ではないにしろ、我が軍の新兵により毒を受けたというのは事実……報復として何かしらの攻撃をしてくるのが予測されます」

「桂花達は?」

「私も……不本意ながら司馬懿と同じ考えです」

「呉のお兄さんは人気者らしいですからね~……だからもし風達が何もせずにいたら仕返しに来ちゃいます~」

「それは当然の選択だと思います。いくら確実に勝利を掴み取る為とはいえ、私達は呉に宣戦布告の使者を送っていません」


使者を送らなかったというのは本当である。これは我等が少しでも呉に勝つための布石の一つであったが、今回はそれも仇となっている。


「………春蘭…秋蘭……弔問の使者はどうなっているの?」

「……既に処断した首謀者の首を塩漬けにしています。後は向かう者を決めればいつでも出発できます」

「そう………分かったわ……しかし並の文官や武官が行ったところで打ち首に合うのは必然………慎重に選ぶ必要があるわね……」


これが一番の難題かもしれない。暗殺という卑劣な手段を用いて戦乱を開いてしまい、あまつさえそれを途中で放り出してしまったのだ。勝ち負け以前の問題で武人としてもかなりの無礼である。それ故に弔問の使者というのは身分相応でなければ打ち首も必然………実質上の決死隊でもあるのだ。


「………曹操殿……その弔問の使者の任……私にお任せ頂けませんでしょうか?」

「牙刀?」


志願するという言葉を聴いて全員の視線が私に集中する。


「私は全身全霊を持ってライル殿と刃を交えたかった……しかし横槍が入ったせいでそのライル殿が傷つき、あの男に無礼を働いてしまったことは事実……それに………」

「それに?」

「それに………ライル殿の容態が心配なのです…ですのでどうか……私にその任を命じて頂きたい」


そういうと私は曹操殿に頭を下げて申し出る。曹操殿は暫く考え、やがて決断に至る。


「………徐晃 公明……貴殿に呉への弔問使者の任……一任する」

「ありがたき幸せ……この徐 公明。任を全うさせて頂きます」

「副官として凪……軍師として司馬懿………あなたも行きなさい」

「はい、お任せ下さいませ」

「司馬懿、あなたには文も届けてもらうわ。後で私の部屋にまで取りに来なさい。いいわね?」

「御意」


それだけいうと私と凪、それに司馬懿殿はすぐに準備に掛かる。命じられたその日の翌日に私達使者は少数の部隊を率いて呉へと向かう…………。

魏呉との戦いが終結して2週間後、ライルが負傷したことを聞きつけた一刀達の蜀軍使者と牙刀達の魏軍弔問。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[3英雄の再結集]


建業の玉座にて英傑達が集う。

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