コラボ第2段:銀狼と猛狼
コラボ第1段[2匹の狼]に続いて恋姫†無双-外史の傭兵達-とのコラボ第2段をお届け致します。
前回の和樹に続いて今回は・・・・・・。
魏軍の刺客により俺は雪蓮を庇って毒を受けた。彼女を守れたという嬉しさと同時に俺は曹操に対して失望した。
曹操は常に正々堂々と戦いを挑み、自分や他者にも誇りを持たせて勝利を得る。俺の中にそういった彼女への印象があったのに、それが裏切られた。
だが今はそんなのはどうだっていい。早く目覚めて雪蓮に顔を見せて安心させないと・・・・・・。そして眼を開けると何かがおかしかった。気を失う直前の記憶では確かにナイトホークに載せられて建業に搬入された筈だ。
なのに辺りの光景はどう考えても森の中だ。しかも直ぐそばには漢方薬を精製する際に用いられる薬研に小さめのふるい。
「ここは・・・・・・どこだ?」
「おっ、気が付いたか?」
声を掛けられ、振り向くとそこには、M81 BDUに同色の野戦帽、各種ポーチを取り付けたODカラーのピストルベルトに形状から判断してイタリア製9mmマシンピストルのM93R入りのホルスターを身につけて腰に大刀を装着させた黒髪のG.Iカットをした男だ。
因みにどういう訳か背中に薬草と思わしき竹籠を担いでいた。はっきり言って不釣合いすぎる。
「おいおい、助けてくれた恩人にそんな警戒するもんじゃねえぜ」
「・・・・・・助けた?」
「あぁ、薬草を集めてたら茂みで倒れてたお前を見つけてな。全く・・・ちょっとは感謝してくれよな。ほら、水だ」
そう言われて男は竹籠を降ろすとキャンティーンを投げ付け、それを受け取るとキャップを開けて中に入っている水を飲む。
「・・・・・・すまない・・・助かった」
「いいって、まぁ確かに初めは警戒したがな。ライル中佐殿」
「・・・・・・・・・なんで名前と階級を?」
「なんでって・・・迷彩の襟に階級章あるし、ネームワッペンに名前書いてるじゃねえか」
そう言われれば確かにそうだ。今は装具を身につけていないのだから確認は容易だろう。
「それで・・・・・・ここはどこだ?」
「ここは建業郊外にある森の中だぜ」
恐らくだが現代には戻って来てなどいないだろう。もしここが現代なら建業ではなく南京という筈だし、そして何よりも大刀を装備している筈が無い。
「・・・・・・そういえば・・・あんたは?」
「俺か?俺は呂猛 百鬼ってんだ」
「呂蒙?」
「あ〜、一応は言っておくが呂布の呂に獰猛の猛だぜ。てか三国志を分かるのか?」
「まぁな・・・・・・だがもしかしたらお前は日本人か?」
「一応はな」
「ふぅ・・・・・・まるで韓甲 狼牙だな」
思わずかつて出会った狂気の傭兵の名前を口にして、それを聞いた呂猛はいきなり表情が厳しくなって、右手はM93Rへと伸びていた。それを見た俺は痛む身体を動かしてCQCの姿勢を構える。
「・・・・・・お前・・・何者だ?」
「・・・なんの話だ?」
「何でお前が相棒の名前を知ってやがるんだ?」
「相棒?」
「お前はどう考えてもこの時代の人間じゃねえ・・・現代のジャーヘッドだ・・・・・・ブーツの結び方とパンツの状態で判別出来る。なのに相棒の名前を知ってやがる・・・」
・・・・・・あの男・・・絶対に話していないな。
まあいきなり“別世界にいって同じ境遇の奴と戦った”と言っても頭がおかしい奴だと思われてしまう。
更にあの狂気野郎だ。絶対に口にしないだろうし、仮に口にしたとしても“・・・いたか?そんな奴・・・”と言いかねない。
俺はひとまず目の前の危険を回避する為に話すことにした。
「待て・・・ベレッタを抜こうとするな。説明してやる」
「・・・・・・分かった」
それだけいうと呂猛はベレッタから右手を離して少し離れた場所に腰掛ける。そして俺は話した。
俺が長沙に用事を済ませて愛馬にて建業へと戻る際に鉢合わせ。奴がいきなりAK-74+GP-25で仕掛けて来た事。
CQCに発展した事。ジーンと神が現れて奴を連れ帰って行った事を話した。
そして俺達も現代で戦死し、孫策軍に参加して2年くらいしてから雪蓮を庇って曹操の刺客が放った毒矢を受けて気を失い、気が付いたらこちらに来ていたも話す。
全てを話し終わると呂猛はいきなり笑い出した。
「ハハハハハハ‼‼そいつは災難だったな♪」
「笑い事じゃない。こっちはM45しか無かったから危うく死に掛けたんだからな」
「まあまあ♪だったら相棒が悪かったな♪代わりに謝るぜ♪」
「まぁ・・・過ぎた事だしな・・・・・・」
「しっかし・・・・・・俺達と同じ境遇で・・・しかも同じ孫策軍にいて向こうの伯符殿と恋仲になったなんてな・・・」
「ちょっと待て⁉俺は雪蓮と恋仲だなんて一言も・・・・・・・・・ハッ⁉」
・・・しまった・・・・・・墓穴を掘ってしまった・・・。
それを奴は聞き逃す事なく、顔をニヤニヤしながらこちらを見ていた。何というか、こいつからも狂気的な雰囲気を感じるが陽気な印象も感じられる。
例えになるか分からないが“ジキルとハイド”だな。
俺は顔を赤く染めながら視線を逸らす。
「ハハハハハハ‼‼お前は面白い奴じゃねぇか‼和樹にも見習わせてやりたいぜ‼」
「笑わないでくれ・・・告白だってかなり勇気いるんだからな」
「まっ♪そりゃそうだな♪」
こいつは誘導術にでも長けているのか?何だか知らないがこいつと話しているとどうも誘導されている気がして仕方が無い。
「ハハハハハハ・・・いや〜笑った笑った♪怒るなよ。これでも祝ってやってんだぜ♪」
「祝ってくれるのはありがたいが・・・・・・」
「まぁ・・・それは置いといて・・・・・・曹操が英雄ねぇ・・・」
「まぁな・・・・・・俺の中にそんな印象があった。まさかそんな奴が暗殺みたいなことをするとはな・・・・・・」
「ふぅ・・・なぁライル」
「なんだ?」
「寝言は寝てから言いな」
俺はいきなりの言葉に唖然とする。
「戦争なんて所詮は勝てばいいんだよ・・・そこに綺麗も汚いもありゃしねぇ。“ルール無用”、“勝てば官軍、負ければ賊軍”。お前も分かってる筈だ」
「・・・・・・・・・」
「それに・・・・・・英雄なんて要は大量殺戮者で・・・偽善者だ。自分の都合や理屈で従わない奴等を皆殺しにするクソッタレ野郎。だから、曹操の掲げる“聖戦”なんぞ、くっだらねぇったらありゃしねぇ」
「・・・まぁな。だが仲間を守る為には英雄と称される奴も必要だ。どんな時代でもな・・・・・・これだけは譲れない」
「ふん・・・・・・ま、俺には関係ねぇけどな」
「忠告は感謝する・・・・・・少し待ってくれ」
ユーティニティベルトに備え付けてある無線に反応があったので、話を一旦やめて応答する。
「こちらウルヴァリン、感度良好」
<よかった⁉やっと繋がった‼>
「ジーンか?」
<あなたなに呑気な声を出してるの?別世界に行っちゃってるのよ?>
「君こそ落ち着け。こっちは大丈夫だし、毒気もだいぶ無くなった」
<・・・そっちで何があったの?>
「俺を介護してくれた傭兵が解毒剤を調法してくれてな。それでだいぶ楽になった」
<そう・・・それであなたを救ったのってやっぱり韓甲?>
「いや、その副官だ」
<そう・・・それであなたを元の世界に戻すわ。みんな意識が無いから心配してるわよ。特に雪蓮ちゃんが・・・>
「了解した。頼む」
通信を終了させて俺は無線をポーチに戻すと呂猛に振り向く。
「帰るのか?」
「あぁ、俺の担当官が今から俺を元の世界に戻すらしい」
「あいよ♪おっと・・・だったらこれを持ってった方がいいぜ」
そういうと呂猛はカルテを取り出し、それを千切ると俺に手渡した。
書かれている内容はドイツ語だが、俺はドイツ家系の血筋だから何の問題もない。書かれているのは受けた毒気の種類に量、更には治療方法や解毒剤の作り方が記されていた。
「何から何まですまない」
「いいっていいって、気まぐれって思ってくれて大丈夫だからな」
「ふっ・・・・・・そういうことにしておくさ。礼をいうぞ呂猛」
「あいよ、機会があったらまた会おうぜジャーヘッド」
俺達は互いに敬礼をし合うと、俺の体が消えていき、やがては意識も元の世界へと戻っていった。それを見守った呂猛は道具一式を片付け、竹籠を背負いながらタバコを取り出して火を着けた。
「ふぅ・・・・・・面白い奴だった・・・だが相棒には黙っておいた方がいいだろうな・・・」
それだけ小さな声で口にしながら建業へと引き返していった・・・・・・・・・。
次回から本編に復帰致します。
ご覧になられてありがとうございました。
そしてコラボ先の恋姫†無双-外史の傭兵達-作者ブレイズ様にも多大な敬意と感謝を示させて頂きます。
監督・監修:ブレイズ様
製作・企画:ウルヴァリン